HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

帰国・入国者検疫スルーは勘定に入れません(個人的メモ)

この数日、緊急事態宣言の一都三県継続をなんとか民意で止めさせられないかと必死の思いで政治家の方々を中心に「医療経済学分析」のエントリーをレス付けまくった。だれも反応してくれなかった。まだ何日も何日も私の属する地域経済クラスターの方々が苦しむ姿を見なければならないのだとがっかりしていた。もちろん自分自身も苦しいことは苦しい。そんな折りに、岩田先生のツイットが目に飛び込んできてレスをつけさせていただいた。想ったより反応がはるかに大きくてびっくりした。それでも、緊急事態宣言の延長は正式決定してしまったが。

www.nikkei.com

更には岩田先生ご自身からお返事までいただき本当に恐縮でしている。

医療クラスターのみなさまから「西浦先生を攻めるな、悪いのは政治家だ」とご注意をいただいた。改めて医療クラスターの方々の結束の強さを実感した。また、お医者様は、現場指揮でも、政策決定でも、医師の資格くらいはとっている「戦友仲間」でないと役には立たないのだという確信をお持ちなのだと感じさせていただいた。私も純粋に医師、研究者としての立場を貫いていらっしゃる西浦先生を5月以降活かせていない政治家の理解力、判断力の欠如には失望している。西浦博先生、すみませんでした!*1

さて、西浦先生の「42万人死亡説」の予想は、SIRモデルがあったのだと私は理解している。

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https://medium.com/@mmcat/seiqr-model-evaluate-the-effectiveness-of-contact-tracing-fa58c80f4e5f

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https://medium.com/@mmcat/seiqr-model-evaluate-the-effectiveness-of-contact-tracing-fa58c80f4e5f

SEIQR model Evaluate the effectiveness of contact tracing

このモデルだと基本的な感染拡大のサイクルは以下のようになると考える。感染者が未感染者等に次々と感染させていく。この時の感染から次の感染の期間の平均値を「感染世代」というらしい。仮に一週間が感染世代の期間だとすると図の右手の注釈に書いたようなサイクルを繰り返すことになる。Rtはこの世代を繰り替えす度に次の感染世代の感染者が1人に対して何人であったかの推測となる。感染する速度だと言っていい。

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かなり粗い計算を以下させていただく。仮にDay1で10人の感染が国内で発生し、翌週に25人の発症者が新規に発生すればRt=2.5となる。SIRモデルはこの繰り返しになるので、週毎に2.5倍になるので、4週間後には、2.5^4=40倍となる*2

しかし、大量の帰国者、入国者が検疫で発見されないまま、スルーして国内で発症、もしくは無症状のまま感染を広げていた場合はどうなるだろうか?極端なことを言えば、国内の感染者10人に対して検疫スルーしてしまった感染者15人が無症状のまま夜街クラスターなどで二次感染を国内で起こし、経路不明の感染者15人を次の感染世代に加えてしまった場合はどうなるか?当然、Rtの推測は2.5となる。しかし、国内10人の感染者、スルー15人合計25人から次の25人の感染者が生じているので実際はRt=1であるべきだと。一般の方は、そんな訳はないだろうと考えるかも知れない。しかし、私は個人的に3月の検疫がどれくらい酷かったか知っている。自衛隊が出動するまではひどい状態だった。

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西浦先生のお弟子さんとおぼしき方が貴重なエントリーをあげていらっしゃる。その方の示されたGithubの国内感染(domestic)、帰国者等(imported)の原データをスプレッドシートに落とした。感染日と診断日の両方が揃っていないデータでRtを推測するというのは神業、プロの仕事だ。しかし、それだけに信頼性区間は大きくなる。

statmodeling.hatenablog.com

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この素晴らしい仕事の元データを、発症日がわかるデータと、診断日がわかるデータに分けて参考のためにグラフ化した。正直、経済クラスターな私としてはこんなにNA、Not Avilableばかりのデータで週に数兆円、数十兆円の経済価値を失う自粛の継続が決められたのかと想うと残念でならない。

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https://docs.google.com/spreadsheets/d/11XVNQC3XfD_px00ru3tDWhnOAhERXk1_G3hn42bpXZI/edit?usp=sharing

2月の時点ですら、1週間に1人、2人の帰国・入国者から10人も、20人もの感染者が発生しているように見える。まして、3月のどこかの時点で武漢からの新型コロナウィルスはほぼ終息し、欧州・米国からのウイルス株に入れ替わっている*3。専門家会議に入られたただ一人の経済学の専門家、大阪大学大竹文雄先生の資料でも明確にこの区別をされている。

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https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/sidai_r020514.pdf

※スライド中の赤線は本ブログ。

ちなみに、このグラフの形から判断するに大竹先生が使われているのは報告日ベースのデータであるようだ。従って、スライド中の「3月25日以前の総感染者1292人」とは、3月前半までの感染者総数となる。ちなみに、3月25日の後、3月28日には検疫に自衛隊が出動した*4。前述のデータでは3月一ヶ月の発症日ベースの帰国・入国者は267人となる。この人数で4月以降の感染者が殆ど欧州、米国株ウイルスによるものとすると、4月半ば発症で1万人、大竹先生がオフセットされた武漢ウイルスの感染者を除いても9000人もの感染者になったとなる。もし、そうなら200人余りで3週間程度で9000人以上の欧州ウイルス感染者を出したのだとすると、Rtが3を超えることになる*5。これは、発症ベースで4月以降にRtが0.8であったと推測されていることと矛盾する。

この矛盾を解決していただくことは、次の武漢、欧州に続く第三波は海外からもたらさせる可能性が高いことを考えれば、今後の水際対策立案に重要となる。更には、NHKスペシャルで山中先生がおっしゃっていた「ファクターX」が存在するのか、しないのかの研究にも必ず役に立つだろう。いまの時代、長引く自粛等で不満が渦巻いていて、マグマのように貯まっているので、時々過激な攻撃が生まれるかもしれないが、初めての事態なので仮に見解が修正されることがあっても厚労省関係の以前の訴訟のようなことにはなりえない*6。ぜひ冷静な議論を期待したい。

もうひとつの可能性についても言及しておかなければフェアではない。無症状のまま発見されていない不顕性の感染者、感染経験者の可能性だ。先のお弟子さんブログの記述から、西浦先生自身が無症状の多数の感染者が日本にいる可能性について言及されているようだ。

西浦先生が説明されていましたが、無症状者の割合を時刻によらず一定と仮定すれば、無症状者まで含めた感染者数に対して、上記の再生産のモデル式がそのまま成り立ちます。よって、推定した実効再生産数をもとにした議論はそのまま適用可能です。

西浦先生らによる実効再生産数の統計モデルを解説&拡張する試み - StatModeling Memorandum

冒頭に図を引用させていたいだいたMangoose catさんのSIRでない、SEIQRモデルを引用したのは、こちらのモデルがUnreported cases(報告されない感染者)を扱っているからだ。西浦先生のR0=2.5はこのUnreportedを勘案すれば正しかったかもしれない*7。この場合、予測よりも遥かに重篤化率、致死率が低かっただけという可能性もある。この前提で、いくつかの抗体検査等の結果をもとにかなり間違いはあるだろうが実際のデータにフィットさせたモデルも作った。

hpo.hatenablog.com
*8

以上のような前提で西浦先生には15日に質問のレスをつけた。素人が先生のお邪魔をしたことを心からお詫びしたい。しかし、自分と自分の仲間、地域経済の明日がかかっているので質問せずにはいられなかった。冒頭の岩田先生へのレスのはるか前のこと。回答はいただいていない。当然、ご回答いただけるとは質問した時から想っていなかったし。

本当は大竹文雄先生のK値は単利計算を錯覚してしまうのではないかというエントリーを書こうとして本稿を書き始めた。別の地点についてしまった。また改めて、よくよく勉強してから考えたい。


■追記 2020/5/31

このあと、ABO FANさんがすぐれたエントリーを起こして、取り逃がした(!)海外流入感染者数の推定まで行われた。

agora-web.jp

私とABO FANさんのやりとり。

「外交」誌が記事全文公開されている中、押谷先生のインタビューが最初に掲載されていた。その中で、私やABO FANさんの指摘を肯定したと思われるご発言があった!

第二波は、欧州、米国、東南アジア、あるいはエジプトなど非常に広範な国々からの入国者を起点とした流行です。これらの国からの入国者からは三00人程度の感染者を認しているので、入国した業者の実数は一000~11000人くらいと推定されます。日本での成業は1月初旬に始まり、三月下旬に政府が段階的に入国制限を行うまで、感染者がほぼ自由に国内を移動できたので、大規模な流行になりました。この間の対応の遅れは悔やまれます。

http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2020/05/04_Vol.61_P6-11_Infectiousdiseasemeasures.pdf

*1:いうまでもなく西浦博先生は統計屋などではなく本来お医者様。researchmap.jp

*2:本来のモデル計算ではこうならない。簡易計算するにしても指数関数よりまだフィボナッチ数の方が正しいと想いモデルで計算していた。素人芸なので信頼性区間が入っていないとか、他にも間違いがある可能性は高い。hpo.hatenablog.com

*3:国立感染研究所の研究に詳しい。hpo.hatenablog.com

*4:ご指摘いただいた。記憶では書いてはいけなかった。 

*5:power(9000/260,1/3)=3.25

*6:個人的には政治的な決断によって失われた経済価値等について政府、都道府県は訴訟の対象となり得ると考える。

*7:西浦先生のR0設定にはかなり政治的な要素が高かったようにご発言から推測している。文春の記事中で「R0は2.5でも、1.7でも良かった」旨の発言をされている。なおかつ「政府と仲良し」という示唆も。

*8:リンク等はまた探すが、日本総研野村證券などのコロナショックについてのレポートでも無症状不顕性の大量の感染者、感染経験者の可能性が示唆されていた。

「素晴らしい新世界」

今頃読んだ。アフターコロナを考え、「ハーモニー」を見、「レダ」を思い出しながら読んだ。大変興味深かった。

正直、SFファンを自認しながら50代にして初めて本書を読むとはなんとも恥ずかしいことだと。なんとはなしに「1984年」のいたたまれなさ、生きる辛さと同様の物語だと思いこんでいた。更に言えば「レダ」は全く本書の換骨奪胎なのだとも気付かされた。

レダ 1 (ハヤカワ文庫JA)

レダ 1 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

レダ 2 (ハヤカワ文庫JA)

レダ 2 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

レダ 3 (ハヤカワ文庫JA)

レダ 3 (ハヤカワ文庫JA)

 

 どうしても完璧な管理社会SFは暗く、不幸感に包まれるイメージがあるが、本書は大森望氏の軽快な翻訳のおかげもあり、明るい「新作のSF」として読めてしまう。「野人」ジョンの視点と「新世界」の3人との対比により、人間の自由とは、幸福とは何かが問われている。

野人ジョンの語るシェークスピアは20世紀の知識人であるハクスレーの白眉なのだと思う。見事な引用だ。機会があればぜひ原文を読みたい。「オージーポージー」は、「ジョージーポージーだろうとか言葉遊びもかなり入ってそう。

菅直人氏は本書に強い影響を受けているという。

私はみんなが幸せになる、だからまさにユートピアでありますけれども、しかし人工的に人為的に政治権力でもって、みんなが幸せな社会を、もしそれがこのすばらしい新世界だとすれば、これほど非人間的な社会はない、そのことをその小説から学びました。私はそういう意味で、政治の権力というものを何のために使うのか、もちろん一般的には幸福をみんなに実現するためなんですけれども。そういった意味で言えば、強制的な幸福というのはやはりありえない。

菅直人候補 代表選投票前の政見表明演説 2006年4月7日

条件づけの問題は「ハーモニー」に受け継がれている。その結末を含めて私が触れた中では一番の直系の後継作品なのかもしれない。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 

いずれにせよ2020年という非常に象徴的な年代にコロナショックがあり、アフターコロナでは政府の存在がずっと重くなるだろうと考えている。今の自粛はまだ入り口でこれから、人は健康であることが「義務化」されかねない。そんな時代の世界のあり方、自由と幸福が再びハックスレーから百年経って問われ直されるのだろう。

それにしても、大森訳の「むちむち」の元英単語がなにか最初から最後まで気になって仕方なかった。

命の値段、医療経済学からパンデミックを見る

パンデミック・シミュレーション」という本を拝読した。国立感染症研究所の研究者の方が書かれたと認識している。当初、数理シミュレーションを期待して読み始めたが、医療経済学に関する見解が興味深く、今回なぜ議論されないのか不思議に感じた。

著者のお二人。前書きによるとお二人は09年の新型インフルエンザの時は最前線で「戦って」いらしたと。今回の新型コロナウィルスで国立感染症研究所の名前が出てこないのはなぜなのだろうと想っている。ゲノム情報を持っていると考えられている国立感染症研究所が感染状況の把握、推測をした方がはるかに正確な将来像が描けると思うのだが不思議でならない。*1

nrid.nii.ac.jp

nrid.nii.ac.jp

新型インフルエンザの日本上陸前までの知見、準備がまとめられている。今回の新型コロナウィルスの流行ですっかり名前が知れたR0、Rt、そして感染の拡大、集団的免疫などは基本的にSIRモデルに基づく。本書ではSIRモデルと並んで、Individual Based Mode(ibm)と呼ばれるシミュレーションに焦点が当てられている。具体的には鉄道関係からのデータの提供を受けたシミュレーションが紹介されていた。別論文だが同著者における論文があった。

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http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1551-03.pdf

SIRにせよ、ibmにせよ、R0等がわかれば感染のリアルタイムシミュレーションができる、そのための準備はすっかり整っているのだと書かれている。いくら中国とWHOが意図的にパンデミックの宣言を遅らせたかために感染症法、特措法のトリガーを引き損なったとはいえ、今回の新型コロナウィルス流行を見るととてもそうは思えない。念のため、2009年、10年前の出版である。*2

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そして、対策についても記述されている。自粛、先日インタビューを紹介したインペリアルのファーガソン教授提唱の感染者の出た組織等に大量に薬剤を投入するTAP、ワクチンなどの対策の罹患率のシミュレーションを行っている。改めて、09年時点ですでにここまで準備ができていたのだと。

その上で、それぞれの対策の費用対効果の分析がされている。特に注目すべきは「質調整生存年」、QALYの概念。医療に関する薬価、新技術に関する費用効果分析に使われる概念だと。

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重要なので文字起こしした。

生命の価値の金銭的評価は1QALY当たりで計算されます。QALYとはQuality Adjusted Life Yearsの略で、日本語では「質調整生存年」と訳されています。これは、ある瞬間瞬間の生命の質(Quality of Life :QOL)を時間に関して合計したもので、その人の生涯、あるいは余命における生命の質です。QOLは0(考え得る最悪の健康状態)から1(完全な健康状態)までの数値で表現されるので、完全な健康状態で余命30年間を生きたであろう人が突然亡くなると、QALYは30の損失になります。このQALYを1単位獲得する、つまり完全な健康状態で寿命を1年延期できる治療剤や薬剤に対して社会的に支払うことが許容される医療費、あるいは負担の上限が各国でもうけられています。

この概念に基づき、本書では新型インフルエンザの損害、対策の費用対効果を分析している。スプレッドシートに展開した。敢えて、今回は編集可能な形で共有している。ちなみに、日本の1QALYの費用は600万円だと記載されている。人ひとりの完全に健康な1年が取り戻せる薬、技術、医療費の投入限度が600万円ということなのだろう。人ひとりの命の値段自体であるわけではない。この計算はあくまで医療経済学の範囲内なのだと留保をつけておきたい。

docs.google.com

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若干、人口が1.2億人になっていたりした部分は訂正したが、本書にある計算をそのままスプレッドシート化した。画像読みづらいので、縮約表にした。

1.新型インフルエンザ流行の費用対効果
(1)対策なし
新型インフル健康被害 4.41 兆円
QALYによる死亡被害 対策なし 226.8 兆円
合計 231.21 兆円
(2)自粛効果の検討(40%)
自粛40%時のコスト 14.4 兆円
自粛40% 健康被害低減効果  3.53 兆円
QALYによる死亡被害 自粛40% 136.08 兆円
新型インフルエンザ被害推計 139.61 兆円
対策なしと自粛の差 91.6 兆円

このスプレッドシートに今回の新型コロナウィルスのこれまでの知見を入力してみた。致死率については「自粛」がなかった場合を10%ととし、4割低減されたのでこれまでの6%になるようにしている。同様に罹患率も4割削減できたとしている。ここまでの計算で、誰もが感じているように自粛は全くの経済損失。健康被害も1.6万人あまりの方で症状があった比率は低いが一律受けたとして計算している。同様に、今回感染された今回亡くなれた方々は圧倒的に高齢者が多く、救われたQLAYを30年とする妥当性の検討が必要。当該のページの欄外にDCF法が書いてある。本来現在価値に引き戻す作業も本来必要。

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同様に縮約表。計算根拠はスプレッドシートを当たって欲しい。

1.新型コロナウィルス流行の費用対効果
(1)対策なし
新型コロナウイルス健康被害 0 兆円 (37億円)
QALYによる死亡被害 対策なし 0.48 兆円
合計 0.48 兆円
(2)自粛効果の検討(60%)
自粛60%時のコスト 10.8 兆円
自粛40% 健康被害低減効果  0 兆円 (11億円)
QALYによる死亡被害 自粛40% 0.29 兆円
合計 11.09 兆円
対策なしと自粛の差 -10.61 兆円

ここには飲食店の倒産による社会的な価値、資本の喪失は含まれてない。同様に、自粛が長引き本来守るべき高齢者の健康状態、QOLが損なわれていること、親のコロナ恐怖で新生児の必須のワクチン接種率が下がっていることなども含まれない。高齢者も、高齢者も守れない対策に意味があるのだろうか?

news.livedoor.com


現在の状況では、緊急事態宣言があったから新型インフルエンザのようなシナリオを回避できたと主張される方がたくさんいらっしゃるのだとうとは想うが、少なくともいまの状態で継続、あるいは延長するのはまったくの失策。まだ3月の時点では多くの医学的知見、統計学的傾向が不明であったので緊急事態宣言は受け入れられるべきであった。しかし、現在は十分な知見が溜まっていると考える*3。多くの国民が経済的な被害を受けている中、政府、野党、各都道府県首長は経済的費用対効果の分析を明らかにすべきだと私は主張したい。


■追記

3月の書評発見!ここに書かれているとおり、子供の休校は対策効果が薄い。更に、子供はほとんど重篤化しない、感染拡大させていないことが分かっているので、早く子供の教育を受ける権利を回復させてあげて欲しい。こころから想う。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200320-00010004-php_s-bus_allheadlines.yahoo.co.jp


■追記 その2

QALYとQOLについての研究のスライドを発見。

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https://www.niph.go.jp/entrance/sympo2016_2-1.pdf

*1:別エントリーを起こす予定だが、西浦先生がRt等の推測をしたという元データはあまりに不備。武漢ウイルスと欧米ウイルスの区別がつきようがない。発症日と報告日の両方が揃っているデータがなく、N/Aばかり。厚労省からまともな実情が伝わっていないのではないだろうか?statmodeling.hatenablog.comこのサイトからデータの部分をスプレッドシートに引き出した。docs.google.com

*2:タレブの言葉を探している。人知れず、準備を積み重ねてきた方々をもっと讃えなければならないと。

*3:強いて言えば、国会の議論を見ていても、3月の感染者急増が検疫スルーで入国、帰国した感染者だったことの総括が全く行われていないことに驚きを覚える。ゲノムの分析から十分に分離可能な統計のはず。ここを除けば、「鎖国」が続く限り武漢ウイルス、欧州ウイルスに続く第三波は相当環境が変化しない限り起こりづらいことが理解されるはず。 hpo.hatenablog.com

日本のPCR陽性者は0.6%存在するのか?(個人的なメモ)

昨日、用事で外出している間に様々な情報が入ってきて、理解するのに時間がかかった。とりとめないが、自分のためにメモとしてまとめておきたい。まず、東大児玉先生Zoomの記者会見を永江さんに教えていただいた、繰り返すが外出先で。

昨日の晩から、三回以上見直してようやくポイントが理解できてきた。

  • 精密な測定でも東京都の0.6%、顕在感染者の16倍の抗体陽性者、感染経験者がいる。
  • 東アジア沿岸にIgMの上昇、サイトカインストームを抑制する因子、免疫を持つ人が多い可能性がある。

まずは、厚労省の0.6%の抗体陽性、感染経験者の存在を裏付ける調査であることは児玉先生ご自身が明言されている。

私にはうまく説明できそうにないのだが、この抗体検査の機械はかなりの精密なものだと。長年の研究の成果でJSR社の「ビーズ」を使っているためかなり正確性が高く、他のPCR等の検査と結果をあわせてもほとんどぶれがない、他のコロナウイルスとの交差も少ないと。

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https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/content/000012047.pdf

とすると、まず数の上で言えば、昨日のエントリーはそんなに間違っていなかった可能性があると認識した。

hpo.hatenablog.com

さらに、児玉先生がたぶん「Yasui, Kohara et al.」の3月6日発表らしい論文を引用して*1東アジア沿岸部にはサイトカインストームを抑制する因子を持っている人がたくさんいる可能性に言及されている。つまりは、日本においては感染は広がっても重篤化しない人が多いと。

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そうだとすると、私の昨日の推定では水際対策が徹底した上で、自粛効果である程度は押さえられておいても、全国で既に75万人がSARS-COV-2の感染を経験しているのにもかかわらず、4月終わりからかなり症状があるなどしてPCR陽性者の発見が少なくなっている事象が説明できる。年代別の感染力についても、若い人は免疫力が高く、高齢者は低いという事実から説明できる。たしか50代以降は10代の半分くらいしか免疫力がないとものの本に書いてあったかと。私は医療には全く詳しくないので、日本人においてIgM、IgGから重篤化しない傾向と感染が広がるのか、広がらないのかの判断は保留したい。

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https://hpo.hatenablog.com/entry/2020/05/16/123044

同じ意見を宮坂先生も指摘しているということを永江さんに教えてもらった。永江さんに依存しすぎ!

一部の人たちは自然免疫と獲得免疫の両方を使って不顕性感染の形でウイルスを撃退したのかもしれませんが、かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性があるのかもしれないということです。

ちなみに、NY州の統計では家庭が一番の感染の場所であったと。中国の親切な専門家の方が2月のうちだったかが、「陽性者を家庭内に置いてははだめだ、ホテルでも、体育館でも隔離しろ」とアドバイスされていたのを思い出す。*2

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外出制限後もNYで多くの感染者が出続けるのはなぜ? 最新調査データと意外な結果【新型コロナ】(安部かすみ) - 個人 - Yahoo!ニュース

もちろん、家庭に持ち込む「やばい」傾向、が米国においてはあったのだと。日本において感染が広がらなかった背景には社会的な習慣の差も大きかったとは考えられる。

一定年代よる若い世代、あるいは高齢者においても欧米と比べれば新型コロナウィルスが感染しにくい、重篤化しない、致死率は日本においては一桁少ないといったことが分かったのだがら、やはり対策はゲームチェンジしないとならないだろう。

hpo.hatenablog.com

*1:スライドの番号の論文はSARS-COV-2のRNA解析の中国の論文だった。スライドの図は当該論文に掲載されていた。"Yasui, Kohara et al"は引き続き探索中。www.biorxiv.org

*2:あとで、どのような「アドバイス」であったか探す予定。

「自粛効果」は全くなかったのか?(個人的メモ)

私の立ち位置は基本経済クラスター。人として無論「コロナ死+経済死」の最小化が一番望ましいと考えている。ただ、経済クラスター的にはどちらかというと自粛が効果がないと主張することがポジション的にはかなっている。

経済的な対策については若干まとめてはみたが、緊急事態宣言が部分的にとは言え解除されつつあるいま多くの人々の間でくすぶっているのは、みんながこんなにつらい想いをして、いくつもの企業倒産を生むほどの経済的損失を生みながら行った自粛が果たして効果があったのか、なかったのかという問題だ。効果がないという主張もたくさんある。ここを検証しないと先へ進めない。次の感染の波が起こった時に防ぎきれない。

www.newsweekjapan.jp
*1


まず、「コロナ死」については超過死亡数の検証をさせていただいた。さらには最近の報道で日本では超過死はほとんどないという考察が多い。亡くなられた方には大変恐縮だが、月間に通常十数万人が死んでしまう日本では千人以下の死亡者数は紛れてしまうのだろう。むしろインフルエンザ死は減っている可能性があると聞く。

hpo.hatenablog.com

www.bloomberg.co.jp

その上で、感染の広がりを表す実行再生産数、Rtが1月の「上陸」以来0.8程度で変わっていないという指摘がある。

3月のRtの上昇は入国者、帰国者が持ち帰った感染だと推測するのが筋かなと。

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一方、新しい調査結果として欧米とははるかに低いものの0.3から0.6%程度の潜在的な無症状の感染者、献饌経験者が存在すると。これが正しい数だとすると、無症状のままの感染者、感染経験者がたくさんいることになる。日本人口1.26億に抗体検査結果の0.6%を掛けると75万人あまりが調査時点で感染していることになる。他の報道などから推測するこの抗体検査の調査時点は4月終わりから5月。厚労省の発表ベースで1.6万人程度のPCR陽性者数となるので、1.6万人割る75万人で2%あまりしか把握できていない可能性がある。

headlines.yahoo.co.jp

更に先ほどの西浦先生のグラフで赤で囲った海外からの帰国、入国者で感染が認められた方々について。3月の帰国者等の速報が4月に発表されていた。約49万人が3月に日本に入国している。厚労省のデータから海外からの流入は合計で460人あまりとされている。これだと0.09%。あまりに低い。検査をしないと入国させてしまった人数が相当にいるということを承知している。実際は日本国内の抗体検査の0.6%以上、ざっと厚労省の「海外流入数」の10倍程度は無症状の感染者が紛れ込んでしまったと仮定するのは保守的ではないだろうか?*2

www.e-stat.go.jp
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*3

これらの前提において以前行った潜在的な感染者が多数いると仮定した場合のシミュレーションをやりなおした。

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https://docs.google.com/spreadsheets/d/11XVNQC3XfD_px00ru3tDWhnOAhERXk1_G3hn42bpXZI/edit?usp=sharing

フィッティングさせているので当然だが、かなり実際のデータと潜在者→顕在者モデルの数値を一致させることができた。前回のシミュレーションだと相当多めに海外からの帰国、入国者の数を見込み3月のRtの上昇を説明できたのだが1日数百人単位だとシミュレーションモデルではあまりRtが上昇しなかった。

この前提における新規感染者のグラフも作ってみた。どうしても3月末に新規感染者のピークがこない。そもそもこのモデルだと「自然」に感染者が減っていくことが説明できない。当然、人口の0.6%では集団免疫など生じない。あくまで仮説なのだが、日本人の間で感染しても発症しない因子がかなり多く存在するのではないだろうか。逆に言えば、発症する因子を持っている方々には感染しつくしているか、高齢者で隔離されているか。この仮説だと、院内感染が連続していくことも説明ができる。この因子がBCGなのか、HLA抗体なのか、私には分からない。

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R0=2.5という前提はいろいろな統計を見ても、欧州の超過死統計を見ても、当てはまるように考えられる。新型コロナウィルスの感染力はそこそこあるのだ。ただ、日本人、アジア諸国の人々は発症、重篤化しづらい因子があるのではないだろうか?

hpo.hatenablog.com

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https://ig.ft.com/coronavirus-chart/?areas=usa&areas=jpn&areasRegional=usny&areasRegional=usnj&cumulative=1&logScale=1&perMillion=0&values=cases

最後に肝心の自粛の効果。このモデルにおいて、4月7日以降の「自粛」を外した場合のシミュレーションを行った。現在の感染者累計が2.5倍程度になったのではないだろうか?死亡者も同様に増えていたはずなので、千人を超えていたのではないか。

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現在、実際にPCR陽性者の数も、PCR検査の陽性率も下がっていることので、この事実にはかなわないが、自粛によって顕在化している感染者数も、死亡者数も増えていたのが妥当な推測ではないだろうか?ただし、前述の日本人、あるいはアジア人の特殊な因子により有症者、重篤者が減っていると。結論から言えば、実際に自粛が開けて、接触密度が上がった時にどうなるかを試してみるしかない。これまでのところで言えば、かなり顕在感染を抑えられるであろうとは推測される。

*1:ただし、原著への言及を見ると、ロックダウンしなかった場合の死亡者等の予測に感染モデルではなく正規分布を当てはめているので減少しているようにみえるだけだという指摘がある。調査結果をまとめたグラフを見ると各国でロックダウン前後で死亡者数等が変化がないようには見える。

*2:ただし、この程度の数だと「紛れて」しまうレベルで武漢ウイルスから欧州株に3月で入れ替わったことが説明できない。はるかに多い無症状(不顕性)の感染者が入国したか、2月の時点で日本に入ってきたかと考えざるを得ない。しかし、エビデンスが見つからない。hpo.hatenablog.com

*3:「港」とあるが「空港」も含む。

ウィズコロナと「経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策」

ファクトベースで言えば現状を再認識しよう。ようやく緊急事態宣言が解除される先行きが示された。東京などいくつかの都市圏があと半月あまり継続されるという。PCR陽性が本当に「ファクト」か疑念がる。世界的には死亡者数が国別の被害状況の指標となっている。厚労省のサイトから引用すれば日本のコロナ死亡者数は643名となる。

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https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11268.html

欧州などと比べれば本当に「軽微」としか言い様がない状況である。Rt、実行再生産数(その時点で感染者一人が何人に感染させるか?)は、実質日本全国感染終息を占める1.0を下回っている。東京はなんと0.27!

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https://rt-live-japan.com/

悲惨としか形容のしようのない欧州でさえ、ロックダウンは解除されつつある。

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14歳以下では超過死がほとんど発生していないのは明白。次に、15-64歳で1万人程度。65-74歳で1万3千人、75-84歳で2万4千人超え、85歳以上でなんと4万人となっている。人口比までは出せないが、高齢者になるに従って恐ろしい数字となっている。無論、Covid-19だけでなく、医療崩壊、介護崩壊で手を尽くせなかったことが原因であろう。更に付け加えて言えば、この数字は週単位。描くグラフの一番右が2020年の第17週目。確定ベースで言えば4月前半がこの統計上でピーク。他の統計では4月後半もまだ欧州の感染は収まっていない。恐ろしい、正直、恐ろしい。

Covid-19関連超過死の統計、欧米の予測 - HPO機密日誌

しかし、すでに日本の経済の「死亡フラグ」が立っていると指摘があるように今後の経済展開は絶望的だ。

www.zakzak.co.jp

本当にここから先は、経済死がありふれた状況になるのではないだろうか?不景気、倒産、資産価値の下落、信用収縮、経済事件、自殺、社会保障の増大まで頭の中をマイナスのスパイラルのどこかで見た景色が駆け巡る。まさに「キミのお金はどこに消えるのか?」と疑問に思い、エントリーを書いた。

hpo.hatenablog.com

このエントリーの最後で触れた「経済政策で人は死ぬか?」を読了した。

正直、先日のエントリーを書いた時点では本書の10%も読んでいなかった。そこまででも、十分にインパクトがあったのだが、最後まで読んで国の経済、国民の厚生とはなにか考え込まざるを得なかった。本書の著者らはお医者さんなので、どうしても命の側に価値観がおかれている。いっそ国民の命、生活保護、支払い能力を持たない層にかかる医療費などを厚生の基準として経済的な価値で示していただいたほうが良かったとも思える。しかし、完全には経済的分析ではないという側面を引いても本書は一読の価値がある。今回財務省が「当初は予算を組んでも、しっかり税金で取り返す」という方針で取り組めば、日本経済は本当に「死亡フラグ」がたつ、いや、「死亡」する。

さて、本書の内容について。不況対策ではないが、自由主義経済が必ずしも人の命を救い、国の経済体を完全なものにするわけではないという議論がある。いくつかの国の事例が取り上げられているが、典型的なのがロシアとベラルーシの死亡率の違いだろう。

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ロシアが経済体制の民営化を十分な社会的保障がないままスタートさせ、男子の平均年齢を短くしたのは有名。対して、同様の民族であるかにも関わらずベラルーシはずっと漸進的な自由化、民営化策を採ったと。結果がこのグラフに示された差として表現されている。最大で年間10万人当たり800名ほどの死亡数が違う結果だったと。これは死亡率で約0.8%の差であり、ロシアは最大2,100名、2.1%ベラルーシよりも死亡傾向が高い。

多くの国で最低限の社会保障がないために、健康状態が悪くなり結局、生活保護や、治安悪化に伴う損失、果ては感染症の流行により公共の支出が増えてしまうのだという。100兆円以上をコロナの対策費に支出する日本の財政もひとごとではない。訳者あとがきで日本の失業率、倒産と自殺の数の比較のグラフを掲載している。

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企業倒産、失業率と自殺は強く結びついている。これは東西を問わない。

更には、不況対策の失敗、セーフティネットの不備はさらなる感染症の流行を生む。ギリシャの政府の「破綻」は国内におけるマラリヤ、ウェストナイル感染症を引き起こした。さらには、HIVの拡大も不況対策と深く関わっている。

日本においても、なにせ世界のトヨタで営業利益八割減と発表されている状況だ。これから先は相当に厳しいだろう。

会見した豊田章男社長は「リーマン時と比べて販売台数の減少は激しいが、企業体質を強化したことで黒字を確保できる」と語った。リーマン危機の09年3月期は販売台数が12%減り、4610億円の営業赤字だった。今期の営業利益5000億円は東日本大震災後の12年3月期(3556億円)を上回る。

https://hpo.hatenablog.com/entry/2020/05/08/173351

今後どれだけの倒産が発生し、どれだけ経済による死が発生するか分からない。少なくとも、現在確定してしまっている世界恐慌状態の入り口で予想しても、日本においてこれまでのコロナ死を超えるのは確実だろう。

まあ、本書における日本の扱いは好意的なのだが・・・。ここに住んでいるととてもそう思えない。

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弱者にできることは、自分のプライバシーを売り渡し、感染対策に協力することで政府の庇護を求めることだけになりかねない。

jp.wsj.com

ちょっと唐突だが、個人と国家とのバランスについてはローマ帝国の末期と重ね合わせて考えなければならない。「パンとサーカス」仮説だ。

hpo.hatenablog.com

現代版、「パンとサーカス」、ベーシックインカムを導入して、全ての行政サービスに値段をつけ単純化する方が実は下手な公共サービス、社会保障よりもシンプルでコストが安く済むのかも知れない。もちろん、日本の医療皆保険のようにいくつかの部門では価格の制限は必要となるだろう。

もうすこしよく考える。

Covid-19関連超過死の統計、欧米の予測

まずは、EUROMOMOから。重要なサイトを教えていただいた。

欧州の(多分)民間NPOらしい。

EuroMOMO is a European mortality monitoring activity, aiming to detect and measure excess deaths related to seasonal influenza, pandemics and other public health threats.

Official national mortality statistics are provided weekly from the 24 European countries in the EuroMOMO collaborative network, supported by the European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC) and the World Health Organization (WHO).

機械翻訳
EuroMOMOは、季節性インフルエンザ、パンデミック、その他の公衆衛生上の脅威に関連する過剰死亡を検出して測定することを目的とした、ヨーロッパの死亡率監視活動です。

欧州疾病予防管理センター(ECDC)と世界保健機関(WHO)の支援を受けて、EuroMOMO協力ネットワークでヨーロッパの24か国から公式の全国死亡率統計が毎週提供されます。

https://www.euromomo.eu/

以下、概観していく。ことわらない限り、同サイトからのスクリーンショット。まずは、対象国の今年の第18週目の超過死の状況。灰色以上が対象国。依然英国が心配。

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https://www.euromomo.eu/graphs-and-maps/

以前、簡単な日本の年代別死亡率の比較を試みた。このサイトでは欧州の超過死亡者数をかなり機動的に比較できる。

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https://www.euromomo.eu/graphs-and-maps/

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https://www.euromomo.eu/graphs-and-maps/

なんだ、15-64歳と、それ以上で差がないではないかと言うなかれ。縦軸はそれぞれで最大値が変化している。以下、ピークで人数を数える。14歳以下では超過死がほとんど発生していないのは明白。次に、15-64歳で1万人程度。65-74歳で1万3千人、75-84歳で2万4千人超え、85歳以上でなんと4万人となっている。人口比までは出せないが、高齢者になるに従って恐ろしい数字となっている。無論、Covid-19だけでなく、医療崩壊、介護崩壊で手を尽くせなかったことが原因であろう。更に付け加えて言えば、この数字は週単位。描くグラフの一番右が2020年の第17週目。確定ベースで言えば4月前半がこの統計上でピーク。他の統計では4月後半もまだ欧州の感染は収まっていない。恐ろしい、正直、恐ろしい。日本の高齢者ははるかに恵まれているのだと断言しておきたい。高齢者の死亡数、もしかすると死亡率が二桁違うように見える。

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https://docs.google.com/spreadsheets/d/1b1hB-Qs5_jTJ-1BUAtmSBJ5eIAUIFEmm2cRHD1_VY7I/edit?usp=sharing

他にも標準化したZ-socreでも見れるので必要があればご覧を。

関連して、Worldmeterの「予測」としてリンクされているIHMEを少し。標準化されたデータのやりとりで大変洗練された予測を出していらっしゃる。

救いは、かなりの数の国の「予測」を見たが8月までには一定の終息を迎える予想であること。スウェーデンの疫学の権威が「燃やし尽くしつつある」という趣旨の大変指摘的な発言をされたいた。大変な犠牲を払った上での「終息」であることはいくら強調しても強調したりない。

hpo.hatenablog.com

一方で不可逆な経済的な「死」は始まっている。本当に今度は経済の「ハンマー&ダンス」を必要としている。暴言を最後に吐いておけば、世界的に見ても日本の高齢者は十分に保護されている。これ以上子供達の学習の機会を奪うこと、野心的な若者を倒産に追い込むことは、あってはならない。

hpo.hatenablog.com