HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

蟹は脱皮する

「蟹は脱皮する」、こんな単純なことがわかっていなかった。ある方に言っていただき自分の決定的な課題に気づいた。

以前、こう書いた。

組織の創業者は、自分が働き安いように組織をデザインする。「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」とはよくいったものだ。分相応という意味なのだろうが、創業者は基本わがままだ。 創業者の後継者は自分の「甲羅」と、組織の形という「穴」との形の差に悩む。結局、自分で穴は掘り直すしかない。あとは、堀直すだけの力量を持っているか、それだけの時間的な余裕があるかどうかだ。

蟹は甲羅に似せて穴を掘る - HPO機密日誌

このエントリーを書いた時は、組織のリーダーの後継がいかに難しいかという問題意識で書いた。「組織をデザインする」と書いたが、実勢は初代は自由に「組織をデザインできる」のだ。自分が作るまで組織などなかったのだから。生き延びることさえできれば、初代の正統性は強力であり、誰もが納得する。しかし、その後輩リーダー、後継リーダーはそうはいかない。先輩「蟹」、先代「蟹」が掘った巣穴は、自分に合うわけがない。だから、巣穴は自分で掘り返すしかない。組織も同じで人財獲得、研修、考え方の共有、日常の親交を含め、自分で組織を作り直さないと正統性は得られない。

気づくと思ったよりも長く、自分の「巣穴」に棲んでいる自分「蟹」に気づく。自分蟹は自分で脱皮して、また巣穴を掘り直さないといけないのだと、初めて気づいた。

マネーショート 世紀の空売り THE BIG SHORT Inside the Doomesday Machine

たまたま人から進められて映画「マネーショート(現代 The Big Short)」を見た。背景がわからないまま見ると、これは単に金融関係者が怒鳴り合っているだけのドラマに見えたのではないだろうか?映画の中で一番鍵となるCDSCDO等の説明もほとんどなかった。ので、原作を読んだ。

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マネーショート
https://www.netflix.com/watch/80075560?

ここのところ、読んでいる本をツイッターで固定表示にしておいて自分で途中途中でメモ代わりについっとして読み進むことを習慣としている。多くの本は、ブログ何本か分の分量のメモとなる。しかし、本書はあまりに面白くて4月9日に読み始めて昨日までなんのメモツイットもせずに読了してしまった。

2007年から2008年に至るいわゆるリーマン・ショックは私にとってリアルタイムの体験でもあり、曲がりなりにも米国でMBAファイナンスメジャーで取得した私にとって本書は興味を持たざるを得ないテーマだった。93年から94年にかけてのコア・カリキュラムのファイナンス、経済学の授業で「派生商品」について教えてもらった。

金融派生商品のほとんどは基本的には住宅モーゲージだ。モーゲージ販売業者は消費者にモーゲージを売る(貸し付ける)とそれをウォール街(の投資銀行等)に販売してしまう。ウォール街ではそれを元本、金利(エクイティ、メザニン)等に切り分けて金融業者等に販売する。チキン一羽そのものを売るより、部位別に分けて売るほうが利益が高いことと同じだ」

授業で習うまで金融派生商品とは、株式や国債をベースに開発されいるのだと信じ込んでいた。以前にも、本書の反対側に負けに負けまくった人々を描いた「ザ・クオンツ」は読んだ。この時に疑問に思ったことがあった。

07年夏以降のヘッジファンドの混乱は不可解な部分がある。いくらレバレッジをかけていたとはいえ、存在したことのあるお金の投資であれば手じまいをして、あらたなファンドの組成などにより再出発する方法はあったのではないかと思える。

「コール!」 - HPO機密日誌

「存在したことのあるお金の投資」ではなかったことが本書を読んでよくわかった。投資銀行などでも以前花形であった株式等から、債券から派生した取引に私が米国にいた90年代から2000年代前半までで完全にシフトしてしまっていたのだと。サブプライムローンの審査の甘さ、目先で儲かればよしとするモラルハザードによって過大な与信、派生商品が生まれていたのだと理解した。そこにはひとかけらの「存在したことのあるお金」もなかったのだと。

本書の大きな主張はそうしたモラルハザード、日常性バイアスによって大儲けさいた金融関係者が罰せられることもなく、収入だけは得た上で天文学的な政府からの支援(といことは納税者のポケットから)によって金融構造が生き延びたのだと。

まあ、私は昔もいまも無知でナイーブなのだと改めて思う。

hpo.hatenablog.com

ちなみに、高橋洋一さんが映画の解説で「金融において無知は罪」と明確におっしゃっている。とほほ。

www.youtube.com

ちなみに、ここで高橋さんがおっしゃっている「下がると100%帰ってくる保険」が本書の主題のCDS、Credit Default Swapであり、「安い保険料で引き受けた」がのAIGなどであったと明かされている。

「日本人のための第一次世界大戦」 その1

書店で見つけて読み始めた。今回のウクライナへのロシア侵攻と重ね合わせて考えると、大変示唆することが大きい。

例えば、プーチン大統領が3月8日にわざわざなんで国際婦人デーに出席したのかなと思ったら2月革命の発端が国際婦人デーだったと。

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国際婦人デー

国際女性デーにちなむ最大の事件は、第一次世界大戦中の1917年にロシア帝国で起こった二月革命であろう。国際女性デー(当時ロシアで使われていたユリウス暦では2月23日にあたる)に首都ペトログラードで行われた女性労働者を中心としたデモは、男性労働者、更には兵士を巻き込んだ大規模な蜂起となり、最終的には帝政を崩壊に追い込んだ。

国際女性デー - Wikipedia

本書の基本認識は「100年前のツキディデスの罠」かなと。つまり、

「台頭する国家は自国の権利を強く意識し、より大きな影響力(利益)と敬意 (名誉)を求めるようになる。チャレンジャーに直面した既存の大国は状況を恐れ、不安になり、守りを固める」

まさに、今のプーチン大統領かなと。2014年のクリミア併合から衰えるばかりの自国の国力、テクノロジーに直面し、西欧民主主義勢力は東へ東へと勢力を拡大するように見えるのだと。第一次世界大戦という100年前の歴史に学ぶことは大事だが更にギリシア・ローマの古典の時代から。地政学的な「動学」というのは変わらないものなのだと。

本書、第4章では「世界から見た日露戦争」について論じている。今回のウクライナ侵攻においても日本が憲法9条改憲できていたら違った展開があったのではと思考実験するいいヒントになる。日露戦争が始まるころ、マッキンダー地政学を提唱したと。移動テクノロジーの進歩、蒸気機関、鉄道などによる世界の変化に伴い世界覇権がいかに英国のような海洋国家、シーパワーから、ロシア・ドイツのようなランドパワー、大陸勢力に移るかを論じたと。

ハルフォード・マッキンダー卿は、ハートランド論を唱え、ユーラシアを基点とした国際関係の力学を地理的に分析した。なお、マッキンダーは自身の理論を一度も地政学と称したことはないが、今日における地政学という体系はほぼマッキンダーの理論をその祖と仰いでいるといっていい。マッキンダーの主張は以下の通り。

  • 世界は閉鎖された空間となった。
  • 人類の歴史はランドパワーとシーパワーの闘争の歴史である。
  • これからはランドパワーの時代である。
  • 東欧を制するものは世界を制する。

海洋国家イギリスに生まれ育ちながらマッキンダーランドパワー論者となったのは、大陸国家の勢力拡大への脅威から海洋国家イギリスを如何に守るかという戦略のあり方について研究の重きを置いたことによる。

ハルフォード・マッキンダー - Wikipedia

1904年、マッキンダーは「歴史の地理学的展開」(地政学)講演でシーパワー(海洋国家)をランドパワー(ユーラシア)が凌駕すると講演したと本書で記述されている。そのきっかけが日露戦争となるだろうと。故に日露戦争第0次世界大戦であった位置づけられると。とすれば、地政学はその成立の時点で日本がロシアに勝利したことで反証があったことになる。

テクノロジーによる世界が繋がりいわば地球儀のように同盟関係等によりお互いに挟撃される可能性のある世界に国会が存在することが立体的に認識された。そして、地政学的な分析で「東欧を制するものは世界を制する」と予言され、第一次世界大戦におけるサラエボ(当時オーストリア、現ボスニア・ヘルツェゴビナ)における勃発、第二次世界大戦におけるドイツのポーランド侵攻を思えば極めて先見性のあるテーゼ。さらに、今回ロシアがウクライナに侵攻したことがきっかけで第三次世界大戦が起こりかねない状態になっていることを思えば恐怖しかない。

この前提において欧州各国の第一次世界大戦の動きを見ると日露戦争、日本の存在感がそれなりにある。例えば、第一次世界大戦におけるドイツのフランスに対する戦略、シェリーフェンプランがある。地政学的にフランスとロシアの2つの大国に挟まれ両面作戦を余儀なくされる。これは19世紀から現代に至るまでドイツの変わらない立ち位置だと言える。ウクライナ侵攻においてロシアに強い攻勢にでれない現代ドイツもこの延長線上にあると言える。しかし、日露戦争により国力を削がれたロシアがあり、フランスに対して優位な軍事力をもつに至ったドイツは、参謀、シェリーフェンが託された国力を最大限フランスに対して発揮するために前線を撃破しベルギー経由でフランス主力の後ろに回り込む戦略である。この意味で、英国、フランス、ドイツ、ロシアは常にお互いに挟撃関係になりうるため地政学的緊張感を持っていたのだと言える。そして、第一次世界大戦前夜において、その緊張のバランスを崩したのは日本だと。ロシアの更に東からロシアを挟撃できる力を日本は持っていたので。ゆえに、ロシアは日本国憲法九条がなければウクライナ侵攻していなかったかもと妄想したくなる。

まだまだ戦争経済、国家総力戦、戦時下における経済・金融など本書について語らなければならないことが山積み。どこかでまた改めて語りたい。

読み、書き、課題遂行能力

自分にとってのビッグイベントが先日終わった。今回、多くの会社をまたいだ組織横断で実施されるイベントだった。組織文化も違えば、働く場所もまちまちな方々の密な協力が必要であった。準備期間中は、コロナ禍でなかなか顔をあわせての打ち合わせすら厳しかった。となれば、もうドキュメント等で精度の高い計画をし、想いを伝え、リアルタイムのチャットのやりとりで情報共有するしかなかった。共通の基盤クラウドとして、Google Workspaceを標準として、文章を書きまくり、共有しまくった。結果的に、メディア等でも評価されるイベントができた。成功裏と胸を張れる根っこには、今回のメンバーのみなさんの読み書き能力が高い方々が集まっていたから課題遂行能力も高かったのだと思い至った。正直、イベントのチームではなく、私のホームベースの仕事環境では言葉によるコミュニケーションよりも、面と向かった対話、電話での会話がメインだ。そこには誤解も多く、感情的なやりとりが時々生じてしまう。なにが違うのか?

思い出したのは、"Lead the Field"だ。IT、クラウドによる業務改革に燃えていた頃に進められたCDで聞いた。語彙力がいかに大切かを力説している下りがあった。当時、以下にような感想を持った。

よくウェブでも話題になるが、「議論はダメだ、会って腹を割って話をしなければダメだ」という主張をする方々を見ていて、国語力が足りないだけではないかと最近感じる事態があった。お前のようにわけのわからないブログを書き続けけているやつに言われたくないと言われそうだが、ウェブ時代だからこそ、国語力が大事だと強く主張しておきたい。私の周りでは、国語力の大切さに力点を置いて社内コミュニケーション、関係者とのコミュニケーションを再構築している。

国語力と情弱層 - HPO機密日誌

「国語力の大切さに力点を置いたコミュニケーション」とは、クラウドベースですべてを共有する仕事の仕方を企図していたい。ここから3年経って、クラウドの技術も、自分なりのコミュニケーション、リーダーシップ/フォロワーシップを確立しつつあるように感じる一方、自分の職場を変えることは全然成功していないのだと思い知らされた。よくよく精進したい。また、コミュニケーションを相手に合わせて取っていかなければならない。

ちなみに、私の中ではこのイベントは1年前に亡くなった子供への手向け、供養だった。子を失った悲しみを、多くの方々のためになる喜びに変えるプロセスであった。

一切衆生悉有仏性:「道元正法眼蔵 100分de名著」

凡で鈍で怠惰な私には、いつまでたっても悟りは来そうもない。それでも、仏教の学び、特に正法眼蔵にはいくつになってもトライし続けるだろう。今回も何回目かのその時節。

今回は第三章、「全宇宙が仏性である」から。著者のひろさちやさんは、「一切衆生有仏性」を「一切は衆生なり・悉有が仏性なり」と読むと道元が主張したと書いていらっしゃる。この言葉に白隠禅師の禅画を思い出した。

「見上げてみれば鷲頭山、みおろせばしげ鹿浜のつり舟」 - HPO機密日誌

私は迷いも不十分、修業も不十分、さらにいえばどこか頑ななところがいまだに変わらない。凡夫としても酷い男だ。それでも、私はこの絵の中に自分の居場所があるように想える。まさに「全宇宙が仏性」なのだと。お客様の「場所」に関わる自分の仕事とは、実は自分の居場所、ふるさとを作ることなのだと今更ながら気づいた。全ては仏性なのだからと。

この章のおわりに著者は、「而今の山水は、古仏の道現成なり」ではじまる山水経を紹介している。この山水経の言葉の田里亦無先生の書を以前拝見した記憶がある。

「道」とは「言う」あるいは「道理を言う」という意味の動詞です。したがって、「而今の山水」、すなわちいまわれわれの目の前にある山水は、「古仏の道現成なり」、これまでこの世に出現された諸仏の説法に他ならないーーーと道元は言っているのです。諸仏は、われわれの目の前に山水とった形態をとって出現され、そして我々に説法しておられる。ということです。

田里先生の書に少しだけ近づけたことをとても嬉しく思う。

「コロナ後のエアライン」

なんとはなしに新型コロナウイルス感染症蔓延下における航空業界について理解しているつもりであった。しかし、本書を読んで改めてその危機的な状況を思い知らされた。

本書に描かれる状況は2021年3月までの状況。国際線が九割減、国内線が六割から七割に回復、貨物は通年と比べても二割、三割ましといった状況は、今もさほど変わらない。たとえば、今日時点のJAL損益計算書の状況。

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JAL @ nikkei
【日本航空】[9201]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版

コメントに「国内線回復で22年1~3月期に資金流入に転じる見通し」とある。つづいて、同様にANA

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ANA
【ANAホールディングス】[9202]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版

空港の惨状についても記述されていた。地方空港がやはり厳しいと。あと、インバウンド需用によって支えられていた成田国際空港那覇空港の状況もかんばしくないと。

ちょっと、余談だが成田国際空港は、国際空港評議会の"Airport Health Accreditation"プログラムの認証を日本で初めて取得したそうだ。感染対策、非接触チェックインなど、地味に改善されているらしい。そういえば、先日行ったときに顔認証による非接触型チェックイン機や、セルフ荷物預入機などが導入されていた。

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顔認証チェックイン

アフターコロナの航空業界について、オビでは大きく「もう元には戻らない」とメロドラマのようなキャッチが書かれているが、本書の立場は感染症が抑制されれば観光需要は戻るという主張であった。それは、私が二年近く前に考えた姿と似ている。

もっと恐ろしいのは航空需要だろう。グローバル化が進み、世界的な観光が進んだ世界が、少なくとも短期的にはアフターコロナでは極端に猜疑心が先行し、国際的な商談、会議を含め、需用が激減しかねないのではないだろうか?仮にコロナウィルスへの特効薬が開発され世界に広く配布される体制ができても、中国の観光客、移民などから世界にウィルスが広がった記憶は忘れられない。

アフターコロナ - HPO機密日誌

資源の供給は人類が生きている限り止まらない。止まったら死ぬ。現在は需用減が予想され石油などの資源は下落しているが、今後世界的な輸送網が感染症の恐怖で停滞することを考えると、輸送費が増加するかもしれない。船舶における感染症の恐怖の記憶から船員の給与、事業に対する保険料等は相当程度高騰するだろう。先ほどは、航空需要の激減を予想したが、もしかすると船舶によるコンテナ輸送が航空輸送にある程度とって変わられるかもしれない。

アフターコロナ - HPO機密日誌

まあ、そんなには間違っていなかった。ただ、小ずるいことに2年前の私はいつアフターコロナの世界が到来するのかはかかなかった。当時読んだ、マッキンゼーのレポートだと航空需要が反発するのは2024年までかかると書いてあった。その時は、まさかそんなに長引くはずがないと想っていたが、それが現実化しつつある現在が恐ろしい。

「臆病者のための株入門」

前回、「投資」について安易に書きすぎたと反省。正直、「臆病者」の私は単体・現物の株は最小限として海外株式市場のインデックスへの「積み立て」型の投資を考えている。

hpo.hatenablog.com

散々、「ブラックスワン」だの、確率分布について書いてきたのに、安易なエントリーであったと。

hpo.hatenablog.com

単体の株のボラティリティを考えれば、インデックス投資が最も「まし」な株式投資になる。更に、一定額を決めて毎月買い続ければ、高い月には少ない単位数、安い月には多い単位数の購入となるので、なにも考えずに取得簿価を下げることができる。問題は窓口をどこにするか。いくつかの株式取引サイトでは可能なニューヨーク証券取引所の指数が買えたり、買えなかったりする。手数料も大きく違う。この辺は実践しながらの勉強かなと。

すでに確定拠出年金はやっているので、NISAによる投資を考えている。だいぶ使い勝手はよくなったように見える。

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NISA
NISAとは? : 金融庁

ちなみに、私はこれからインフレ傾向がしばらく日本で、日本円ベースで続くと予想している。よって、現金でもつより株式などに投資することが有利だと判断している。更に言えば、私の本来のスペシャリテは不動産投資なのでこちらも継続したい。自己資金に借入を堂々とプラスしてレバレッジを効かせたら現物中の現物である不動産、賃貸マンションへの投資はインフレへのヘッジになると信じている。

hpo.hatenablog.com

この記事を書こうと想っている間にトンガにおける火山の噴火。誠に未来というのはわからない。こもまた大きなブラックスワンに発展する可能性がある。市場がこれでどう動くのかよくよく考えないと。