HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「脱税の世界史」

なんともインパクトのあるタイトルだなと。本屋で見つけて読んだ。聖書にも出てくる古代の徴税人の話しから始まり、最新最大の脱税、パナマ文書まで一気に読ませる内容だった。決して脱税指南の本ではない。

むしろ、オビにあるように「国会の崩壊は金持ちの税逃れと庶民への大増税が引き金だった」というテーマで首尾一貫している。エジプト、ローマの昔から帝国が安定すると必ず貴族などの特権階級が税金を払わなくなる。そして、貧富の差が激しくなり、どこかで革命、国家の崩壊へとつながる。ギリシャ、エジプト、ローマ、秦などの古代帝国、近世以降のイスラム帝国モンゴル帝国、ヨーロッパ国王などなど、みな同じパターンを辿っていると。近代ではビートルズが税金対策でアップル社を作り、結局倒産し、内紛、解散に至ったという話しは興味深かった。

圧巻はパナマ文書からプーチン大統領の「脱税」。そして現代中国の発展は「中国版タックスヘイブン」が根底にあったとの分析は驚き以外の何者でもない。筆者は国税の調査官だったのだそうだが、その本領発揮というべきか。プーチンでも、習近平でも、果てはGAFAの「脱税」まで容赦なく「マルサ」している。

いまの日本は本当に格差社会への入り口に立っている。ここで賃金がきちんと庶民に周り、高齢問題をなんとか(どうやって?)克服すれば、世界でもまれに見る安定社会が築けると思うのだが・・・。

ちなみに本文をChatGPTに意見を求めたら根拠が明確に書いていないとお叱りを受けた。本書には参考文献がリストアップされているのでそちらを見て欲しい。