ファクトベースで言えば現状を再認識しよう。ようやく緊急事態宣言が解除される先行きが示された。東京などいくつかの都市圏があと半月あまり継続されるという。PCR陽性が本当に「ファクト」か疑念がる。世界的には死亡者数が国別の被害状況の指標となっている。厚労省のサイトから引用すれば日本のコロナ死亡者数は643名となる。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11268.html
欧州などと比べれば本当に「軽微」としか言い様がない状況である。Rt、実行再生産数(その時点で感染者一人が何人に感染させるか?)は、実質日本全国感染終息を占める1.0を下回っている。東京はなんと0.27!
https://rt-live-japan.com/
悲惨としか形容のしようのない欧州でさえ、ロックダウンは解除されつつある。
Covid-19関連超過死の統計、欧米の予測 - HPO機密日誌
14歳以下では超過死がほとんど発生していないのは明白。次に、15-64歳で1万人程度。65-74歳で1万3千人、75-84歳で2万4千人超え、85歳以上でなんと4万人となっている。人口比までは出せないが、高齢者になるに従って恐ろしい数字となっている。無論、Covid-19だけでなく、医療崩壊、介護崩壊で手を尽くせなかったことが原因であろう。更に付け加えて言えば、この数字は週単位。描くグラフの一番右が2020年の第17週目。確定ベースで言えば4月前半がこの統計上でピーク。他の統計では4月後半もまだ欧州の感染は収まっていない。恐ろしい、正直、恐ろしい。
しかし、すでに日本の経済の「死亡フラグ」が立っていると指摘があるように今後の経済展開は絶望的だ。
日本終了→新型コロナ諮問委に新たに経済専門家4人 #日テレNEWS24 #日テレ #ntv https://t.co/gyI0YeTAQv
— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) 2020年5月12日
本当にここから先は、経済死がありふれた状況になるのではないだろうか?不景気、倒産、資産価値の下落、信用収縮、経済事件、自殺、社会保障の増大まで頭の中をマイナスのスパイラルのどこかで見た景色が駆け巡る。まさに「キミのお金はどこに消えるのか?」と疑問に思い、エントリーを書いた。
このエントリーの最後で触れた「経済政策で人は死ぬか?」を読了した。
- 作者:デヴィッド・スタックラー,サンジェイ・バス
- 発売日: 2020/04/20
- メディア: Kindle版
正直、先日のエントリーを書いた時点では本書の10%も読んでいなかった。そこまででも、十分にインパクトがあったのだが、最後まで読んで国の経済、国民の厚生とはなにか考え込まざるを得なかった。本書の著者らはお医者さんなので、どうしても命の側に価値観がおかれている。いっそ国民の命、生活保護、支払い能力を持たない層にかかる医療費などを厚生の基準として経済的な価値で示していただいたほうが良かったとも思える。しかし、完全には経済的分析ではないという側面を引いても本書は一読の価値がある。今回財務省が「当初は予算を組んでも、しっかり税金で取り返す」という方針で取り組めば、日本経済は本当に「死亡フラグ」がたつ、いや、「死亡」する。
さて、本書の内容について。不況対策ではないが、自由主義経済が必ずしも人の命を救い、国の経済体を完全なものにするわけではないという議論がある。いくつかの国の事例が取り上げられているが、典型的なのがロシアとベラルーシの死亡率の違いだろう。
ロシアが経済体制の民営化を十分な社会的保障がないままスタートさせ、男子の平均年齢を短くしたのは有名。対して、同様の民族であるかにも関わらずベラルーシはずっと漸進的な自由化、民営化策を採ったと。結果がこのグラフに示された差として表現されている。最大で年間10万人当たり800名ほどの死亡数が違う結果だったと。これは死亡率で約0.8%の差であり、ロシアは最大2,100名、2.1%ベラルーシよりも死亡傾向が高い。
多くの国で最低限の社会保障がないために、健康状態が悪くなり結局、生活保護や、治安悪化に伴う損失、果ては感染症の流行により公共の支出が増えてしまうのだという。100兆円以上をコロナの対策費に支出する日本の財政もひとごとではない。訳者あとがきで日本の失業率、倒産と自殺の数の比較のグラフを掲載している。
企業倒産、失業率と自殺は強く結びついている。これは東西を問わない。
更には、不況対策の失敗、セーフティネットの不備はさらなる感染症の流行を生む。ギリシャの政府の「破綻」は国内におけるマラリヤ、ウェストナイル感染症を引き起こした。さらには、HIVの拡大も不況対策と深く関わっている。
日本においても、なにせ世界のトヨタで営業利益八割減と発表されている状況だ。これから先は相当に厳しいだろう。
会見した豊田章男社長は「リーマン時と比べて販売台数の減少は激しいが、企業体質を強化したことで黒字を確保できる」と語った。リーマン危機の09年3月期は販売台数が12%減り、4610億円の営業赤字だった。今期の営業利益5000億円は東日本大震災後の12年3月期(3556億円)を上回る。
https://hpo.hatenablog.com/entry/2020/05/08/173351
今後どれだけの倒産が発生し、どれだけ経済による死が発生するか分からない。少なくとも、現在確定してしまっている世界恐慌状態の入り口で予想しても、日本においてこれまでのコロナ死を超えるのは確実だろう。
「地域別では日本が78%減と最も大きく、欧州(71%)、米国(36%)と続いた。」
— ひでき (@hidekih) 2020年5月6日
リーマンの時といいなんで日本元発でなく、最悪の状況と言うわけでもないのに、いつもひどい目に合うんでしょう?
まあ、本書における日本の扱いは好意的なのだが・・・。ここに住んでいるととてもそう思えない。
弱者にできることは、自分のプライバシーを売り渡し、感染対策に協力することで政府の庇護を求めることだけになりかねない。
ちょっと唐突だが、個人と国家とのバランスについてはローマ帝国の末期と重ね合わせて考えなければならない。「パンとサーカス」仮説だ。
現代版、「パンとサーカス」、ベーシックインカムを導入して、全ての行政サービスに値段をつけ単純化する方が実は下手な公共サービス、社会保障よりもシンプルでコストが安く済むのかも知れない。もちろん、日本の医療皆保険のようにいくつかの部門では価格の制限は必要となるだろう。
もうすこしよく考える。
この本読んでるとベーシックインカム導入、すべての行政サービス有料化が一番みんなを幸せにするようには思えてくる。小さな政府を目指しても、国民の健康維持、生活保護、住宅プログラムなどのトータルコストで考えないとだめ。 pic.twitter.com/PyipyjnxDY
— ひでき (@hidekih) 2020年5月12日
いやいや、財務官僚を選挙で変えられないから悩ましい。民主党が財務省から総スカンで何もできなかったの覚えてないのでしょうか? / “引き続き、批判しましょうみたいなノリの人いるけど。何も変わらないって。キチンと選挙行かなきゃ。 ネットでいくら騒いだって、投票し…” https://t.co/XhwEmRpF59
— ひでき (@hidekih) 2020年5月12日