HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

SARS-CoV-2ウイルスは中国、武漢発祥:厚労省はちゃんと仕事して!(個人的メモ)

確かに、ちゃんと本文までみれば誤報とは言えないが、ひっくり返った。

そもそももとの国立感染症研究所のグラフ自体が誤解を招く形になっている。「国内のコロナ、武漢ではなく欧州から伝播?」というタイトルはあまりにひどい。

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https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/467-genome/9586-genome-2020-1.html

ウイルスの系統樹をみれば明らかに中国の武漢発症で、そこから各地に「伝播」したことがよくわかる。

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https://www.gisaid.org/epiflu-applications/next-hcov-19-app/

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「中国:100%信頼性」と書いてある。「信頼性」とは統計的確率で100%と言えるということだ。

このサイトはかなり丁寧に各国語で系統樹の見方も解説してくれている。

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https://nextstrain.org/narratives/trees-background/ja/?n=8

確かに「欧州から?」と言いたくなるほど、3月の検疫の対応はひどかった。

西浦先生が「焼夷弾」と表現するほど。

それは1月から2月上旬に中国および中国帰りの渡航者を端緒として始まった流行の比ではありません。非常識を承知で分かりやすいようにミサイルで例えると、1月から2月上旬は短距離ミサイルが5~10発命中した程度ですが、この3月のパンデミックの状況というのは空から次々と焼夷弾が降ってきているような状態です。そこで「火事を一つ一つ止めないといけない」というようなのが今の状態です。

[>西浦・北大教授「助けてほしい」解禁ムードを危惧(m3.com) - Yahoo!ニュース]

人に命令を下すというのがいかに難しいか。組織が大きくなればなるほど「言ってることとやっていることが違う」となってしまう。いかに優秀な中央の官僚の方々が完璧なガイドラインを作っても、現場の人間が「そんなことできるわけないだろう」と想ってしまえばやらない。更には、予算措置が今回の新型コロナウィルス対応では決定的に遅れた。1月後半、せめて2月半ばにいまの100兆円とか言われる予算の10分の1でもつけていれば、日本は今頃台湾なみの感染状況になっていただろうと私は想う。

「前から言ってる病」にはなりたくはないが、本当に長期政権の「緩み」がここまで感染を広げてしまったと言って過言ではないだろう。かといって、安倍政権以上に新型コロナウィルス対応ができた政治家が日本にいるとも想えない。これはこれで悲しいが。

考えてみれば、このゲノム調査が示しているのは、厚労省の職務怠慢ということではないか?

いまの一般的な理解は、2月から3月にかけて第一波、武漢からの直接伝播した新型コロナウィルスが大きな感染にならずに済んでいたが、3月後半でみんなの気の緩みから感染が大きく広がってしまった、従って行動変容と接触の自粛が必須であると。つまりは、国民の多くは自分達が原因で起こしてしまったと、特にナイトビジネスからの「経路不明」、伝染経路が言えない感染の広がりであったと。

国立感染症研究所のゲノム分析とGISAIDの系統樹を見れば、明らかに現在日本で猛威を広がっているのは、欧州、米国を経由したウイルス株だ。分析から、三月半ばまでに第一波は抑制できていたことは明か。政府も検疫の強化策を打ち出してはいた。しかし、3月の検疫はまったくザルだった。ソースは明かせないが、ザルだった。目の前にいる帰国者からの圧力にまけて新型コロナウィルスに感染している可能性が大であることを知っていながら、全国に帰宅させてしまったのだ。厚労省で、「海外からの流入」欄があるのは、あくまで一次感染だけだ。

もう一度、国立感染症研究所のゲノムマップを見て欲しい。

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いうまでもなく、ゲノムの変異の大きさ、数は時間と感染件数と線形以上の関係で正比例する。第一波である武漢直接のウイルス群の面積と数が小さく、圧倒的に欧州、米国からの変異株が多いことがわかる。そもそも、国立感染症研究所のこのレポートに明確に書いてある。

中国発の第1波においては地域固有の感染クラスターが乱立して発生し、“中国、湖北省武漢” をキーワードに蓋然性の高い感染者を特定し、濃厚接触者をいち早く探知して抑え込むことができたと推測される。しかしながら、緻密な疫学調査により収束へと導くことができていた矢先、3月中旬から全国各地で “感染リンク不明” の孤発例が同時多発で検出されはじめた。このSARS-CoV-2 ハプロタイプ・ネットワーク図が示すように、渡航自粛が始まる3月中旬までに海外からの帰国者経由(海外旅行者、海外在留邦人)で “第2波” の流入を許し、数週間のうちに全国各地へ伝播して “渡航歴なし・リンク不明” の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測される。この海外旅行者を契機とした同時多発と3月中旬以降の行動制限への理解が不十分だったことを鑑みても、由来元が不明な新型コロナウイルスが密かに国内を侵食し、現在の感染拡大へ繋がったと考えられる。

言うまでもなく各地の検疫所も厚労省管轄。誰がどう考えても、ありとあらゆる国に感染が広がることは明々白々だったのだから、予算と人を事前に検疫所につけるのが官僚の官僚たる任務ではなかろうか?WHOのテドロス氏のパンデミック宣言が遅れたことは事前のガイドラインの「引き金」を引き損ねる理由であったのは同情に値する。

日本政府の対応が悪いと主張する方々がいらっしゃるが、「水際対策ガイドライン」の想定スケジュールから言ってそんなに対応が遅いわけではない。

「猛威をふるう『ウィルス・感染症』にどう立ち向かうのか」(個人的メモ) - HPO機密日誌

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https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-02.pdf

しつこいようだが、本来厚労省の水際対策は検疫所に集約されている。このガイドラインのタイムテーブルから厚労省の役割部分だけぬきだした。これは新型コロナウイルスではなく、新型インフルエンザの時に作られたもので、もう10年近い歴史があるはず。検疫所のどの職員、水際対策に関わる厚労省の官僚みんなが熟知しているガイドラインのはず。なぜこの通りに準備しなかったのか、実行しなかったのか?X国、Y国、以下それに続くとちゃんと書いてある。宿泊施設の利用についても書いてある。なぜ?

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誰もが完全はない。だからこそ、民主主義国家においては国民側が統治側、政府の意思決定の根拠となる情報の開示と、国民側の理解が必須となる。この時に情報をゆがめることはあってはならない。どちらにせよ、いまの事態では厚労省を頼りにするしかないので、責める気にはなれないが、ガイドライン、報道をゆがめることはあってはならない。ましては、現在起こっているような様々な事情で外出をする方々、あるいは5月の自粛が続いたら倒産してしまう方々は怒って良いと想う。頭をさげてもらう10万円などとは言わず、実害を受けている方々はガイドライン通りにことをすすめなかった厚労省を訴えてもいいのではないだろうか?

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はなしは少し寄り道するが、西浦先生達のクラスター対策班は、この国立感染症研究所のようなゲノム解析のデータも入手されているのだろうから、誰から誰に感染したかも把握されているのだろうと。つまり、保健所レイヤーで感染源が特定できなくとも、ゲノムを追っていけば、「東京ナイト・クラスター」とか、「〇店クラスター」が本当に生じているのかどうかまでわかっていらっしゃるのではないだろうか?

権力は権力、規制する力は力。新型コロナウィルスに関するインフォデミックスの過激化などにより、政治家、官僚が対応で権力強化を続ければ、ウイルスのゲノムはおろか、個々人の行動情報のみながらゲノム情報まで政府に把握されてしまう未来が来は恐ろしい。自分自身のプライバシーを守ることにあまり興味はないが、ガイドライン、報道をゆがめる省庁に管理される社会になりすぎる未来はいやだ。

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