私のまわりのあまりの経済的惨状を見るにつけ、なんとか安倍首相をはじめとする政権中枢のみなさま、各都道府県のみなさまには、5月7日以降段階的緩和を実施していただきたいと心から願っている。
先日、地元の商店街を用事で少し歩いた。ついでに、迷惑にならない程度にどの程度「悪い」のかヒアリングしようとした。おどろいたことに、大半の店には「当分の間休業します」等々の張り紙がしてあった。何人の飲食店の店主さんとは話しができたが、「5月も自粛が続けば現金が尽きて店を畳まざるを得ない」と口々に話していた。当然、政府全額保証の借入の情報も入れている。しかし、それ以上に事業者達の絶望が大きいのだと痛感させられた。
この数日はツイッターでおおげさにつぶやいてほんのコンマゼロゼロゼロ・・・何パーセントでも、段階的解除の方向に資することができればと「活動」した。そんな中での私にとって「発見」だったのは、ABO FANさんの「日本のR0は0.8だ」というエントリーだった。
直接のやりとりもさせていただいた。大変、インスピレーションをいただいた。ありがとうございます。ご本人からは「お前の考えは事実に基づかない推測に過ぎない」とご注意をいただいたが、お考えを現在方々で調査結果の発表が相次いでいる感染経験者がこれまでのPCR陽性者の数からは考えられないほど多いという知見と組み合わせられる可能性があると想っている。
抗体検査で1~3%の保有が判明したとの報道がありますが、「元々R<1なので、集団免疫は初めから成立していた」とすれば抗体保有者はもっと多くてもよいはずと思ってしまったのですが、BCG接種の影響ですか?
— Ke° (@palocera) 2020年5月2日
水面下の「氷山」、「無症状感染者/感染経験者」数は推測されているよりずっと多いという仮定は成り立つ。
2019-nCoVウィルスについて(個人的まとめ) - HPO機密日誌
この仮定を進めるに当たって事実として尊重したいのは、
- (何らかの症状があって検査を受けた結果)厚労省が発表しているPCR検査の陽性者数の統計。
- 西浦先生の日本のR0=2.5という仮定。
- 東京、大阪などの主に大都市での(統計的妥当性としてはまだ疑問はあるが)人口の1%から3%程度が感染経験をしている可能性。
- 第一波は武漢、中国から1月から2月にかけて、第二波は2月から3月にかけて主に欧州からウイルスが到達している。かつ、PCR陽性者等のゲノム調査から第一波は終息し、現在の流行は主に欧州株。
その上で、以下のような前提でモデルを作って、実際のデータとフィットさせた。
- 前提
- パラメーター
- 基本再生産数R0 2.5
- 顕在化率 1.50%
- 感染期間 11 日
- 第一次帰国感染者 200 人/日 (x10日)
- 第二次帰国感染者 1000 人/日 (x14日)
- 3月以降減速 10%
- 宣言以降減速率 90%
〇実データ顕在PCR陽性者数、モデル顕在者数、実データRt(概算)、モデルRt
〇日毎新規実データ、モデル潜在感染者、モデル顕在感染者
〇「自粛」がなかった場合の感染拡大
3月の感染している帰国者の数が多すぎるようにも感じるが、統計を見るとかなりの数の訪日外国人、帰国日本人がいる。
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/200415_monthly.pdf
以下、このモデルへの考察。
- 「自粛」による効果、R0 x (1- e)のeの値を3月、4月と線形に増加させなければならないが、簡便なモデルであるためそこまでの調整は行わなかった。3月10%、緊急事態宣言以降90%と一気に「自粛」したモデルになっている。この数字は、はあまり根拠のある数字ではないが、グラフ上ではこれでフィットはしてる。
- そもそも、潜在的な感染者、感染経験者がどれくらいいるのかという問題がある。これまでの統計目的の抗体検査等の調査からは対象者の1%から3%程度が感染者、感染経験者ではないかと推測されている。地方では更に低いだろう。仮に日本の人口1億26百万人の1%が感染経験者とすれば、126万人となる。このモデルでは、5月3日現在で潜在感染者は、100万人となっている。
- モデルの「潜在感染者」は当然無症状なので感染力のあるなしが問われる。無症状なのに、西浦先生のモデルのR0=2.5で良いのかという議論になる。屁理屈にしかならないが、まず無症状状態での感染が相当な割合との指摘がある。されに、3月の帰国者の持ち込んだ欧州株は、(多分特にナイトクラスターで)一次感染、二次感染でどっと広がり、その結果がいま表面化しているのではないだろうか?
- つまりは、西村先生の「42万人死」は、R0=2.5からの予測としては正しかった。ただ、クラスター対策班の方々の予測の範囲外であったのは、米国、欧州と比べて日本人における発症の率が非常に低かったということではないだろうか?
様々仮説はあるが、いまの現状は本当に天のお恵みとしか言えない。さらに、一時私も自粛効果は薄かったのではないかと考えたが、実際には潜在的な感染者の増加を大幅に減らす効果があったのではないかとは考えている。
私のここでのシミュレーションをみて百万人もの感染経験者がいるからオーバーシュートじゃないかと受け止められるのは意図の範囲外。そもそも、無症状であり、これから気温が上がり飛沫等が乾燥しやすくなるし、感染力を急速に失っていく可能性がある。この辺はクラスター対策班の方々が正確なデータをお持ちだと推測する。繰り返すが、無症状の感染者、感染経験者が多数見つかったとしても、これ以上の発症者の拡大につながる層はないだろう。発症ベースと確定ベースで統計の遅れがあるため、まだ当分は重篤者、死亡者は続くだろうが、全体としては3月末に感染拡大のピークを迎え減少に向かっているのは間違いない。
更には言えば、このモデルに現実との整合性があるのであれば、多くの方が指摘しているようにCovid19の致死率が一桁、二桁下がることになる。全体から見ればインフルエンザよりも致死率の低い「エンデミック(通常の感染症)」になる可能性を示唆している。前提が変わればゲームが変わるとは先日書いたのでこれ以上は書かない。
ここから先は命と命のがちんこ勝負だとは想っている。あとで、またエントリーを起こしたいが、コロナによる死は自然の死と動態的にはあまり有意な差がないのではと考えている。冒頭に戻るが、これから先は若い人の経済による死がコロナによる死を大幅に上回るだろう。
*1:コロナによる死亡の統計については別途エントリーを起こした新型コロナウィルス関連死の年代別特性(個人的メモ) - HPO機密日誌