HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

CFRはIFRに近づくのか?(個人的メモ)

教えていただいたメタアナリシス論文によると、ずいぶん前からInfected Fatal Rate 、感染者致命率は0.7%程度なのだそうだ。新型コロナウイルス関係でよく出てくるのはCFR。CFRは、PCR検査等で確定した検査陽性者数が分母で、そのうちから亡くなった方を分子とする。このCFRは全体の平均で5%程度、高齢者だと10%を越えるということで、新型コロナウイルスが恐れられてきた。6月半ばまではPCRが感染者に「追いついて」いなかったのでCFRが5%程度だったのが、IFRに近い1%以下の数字になってきているのではないだろうか?

CFRの減少化を説明するのにはいくつかの前提が必要。まず、報告日ベースの年代別の感染者数に年代別死亡率(CFR)を二週間「ずらして」掛けて実データと合わせてグラフにしたのがこちら。予測死亡数と実死亡数がフィットしているのがよく分かる。

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相関係数

累計相関係数 0.9981
新規相関係数 0.7073

スプレッドシートはこちら。

docs.google.com

池田先生にものすごい指摘を受けた。

ので、作ってみたのがこちら、「移動(平均)致死率」。青棒が亡くなられた方の数で左縦軸。折れ線が当日までの一ヶ月間の死亡者数を分子として、二週間ずらした同じく一ヶ月間の新規感染者数合計を分母とした数値で右縦軸。

多分、これが4月から6月にかけて医療従事者の方々が現場で実感していた実感致死率ではないだろうか?過去一ヶ月に担ぎ込まれた患者が十人に一人、五人に一人と亡くなっていたことになる。もちろん、本来はCFRは累計のPCR等陽性者と死亡数で考えるべきなのでこのグラフの数値は採用すべきではない。それでも、数字で「感じる」しかない私のような者にとっては大変危機感が伝わる。

池田先生のご指摘のように、右に近づくに従って「移動(平均)致死率」が下がってきているのがわかる。話しを戻して、先の年代別致死率による死亡予測だと7月は100人前後が亡くなるはずであった。下の図は大変見にくいと思うが、スプレッドシートの一番左のタブ、「年代別感染者推移20200724」を開いて、右にずっといくと出てくる。7月1日付けの予測で932人、実データで954人。これに対して7月末の予測で1046名。その差は、114名と92名となる。

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実際は、7月28日の発表で998名、今日の統計で1000名目の死亡者が出た。今月は、約46名の方が亡くなられたことになる。ここ数日が重要だが予測の半分程度となるのではないだろうか?本当に被害を受けられた方のご冥福を祈りたい。ちなみに、6月は81名の方が亡くなられている。感染者は、7月の10分の1程度かなと。つまりは、致死率が以前よりも下がっている傾向にあるらしい。これがIFRとCFRの関係と、日本のPCR検査が行き届きつつある現状によるものかはまだ不明。この予測では8月前半で150名前後の死亡となる。これは今後よくよく数字を見ていきたい。

さらに言えば、かなり広く「第二波」が来ても以前よりは致死率は下がっている。例えば、イスラエル。すでに累積の致死率0.7%。まさにIFRの数と一致している。

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https://www.worldometers.info/coronavirus/country/israel/

米国ですら、3.3%。

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https://www.worldometers.info/coronavirus/country/us/

マスコミはこうした傾向を伝えてもいいのではないだろうか?「正しく怖がる」ことは「正しい現状を数値で把握する」ことから始まるのでは?

更にもとにもどって論文へのリンク。

t.co

論文中いくつか気になった部分。

けんもう先生いただいたご注意。

CFRがIFCに近づいている背景にPCRの鋭敏化があると考えるのは的外れなのか。これも、今後ご専門の方のご意見を待ちたい。

いずれせによ、これまで人類は風邪、コロナウイルスの開発は成功してこなかった。同様に特効薬も。ウィズコロナで現状の致死率や、リスクを理解して正しく怖がることが大切。更に強調されるべきなのは、経済がどうにもひどいことになっていること。バランスを取りながら、今後生活するしかないだろう。医療すらも経済活動の一環なので、経済全体がこければ医療もおかしくなり、最終的には命は救えない。民間、経済クラスターとしてはウィズコロナ時代の商売を考えるしかない。更に言えば、今回の新型コロナウイルスで少し感染症対策が国中で高まれば、来たるべき新型インフルエンザのパンデミックの時に対策となると私は信じている。


■追記 2020/08/02

予測を出したからには、答え合わせをしておかなければならない。

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https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12776.html

7月1日の累計死亡者が972人だったので、37名の方が7月中*1に亡くなられたことになる。単純に二週間の間隔で年代別の発症者数に年代別致死率を掛けるという予測で、本文中にあるように「114名と92名」となった。その3割から4割の数の死亡者で済んだことは大変ありがたいと思う。7月の最終日に5名の方が亡くなられている。8月は更に増える可能性がある。ちなみに、同様の手法で予測すると8月前半で130名となった。全国の感染者数は千人を超えて増えているので、更に8月後半は増える可能性がある。よくよく数値をアップデートしていきたい。*2

素人が非常に不謹慎なことをしていることは謝罪しておきます。

*1:正確には8月1日分を含む32日分。安全サイド側に書いておく。

*2:当初、自分の手元のオープンデータと厚労省の速報データを比べたが、ずれがあるとのご指摘をいただいて修正した。8月1日分5人を加えているので文中は37人とした。ありがとうございます。