教えていただいたメタアナリシス論文によると、ずいぶん前からInfected Fatal Rate 、感染者致命率は0.7%程度なのだそうだ。新型コロナウイルス関係でよく出てくるのはCFR。CFRは、PCR検査等で確定した検査陽性者数が分母で、そのうちから亡くなった方を分子とする。このCFRは全体の平均で5%程度、高齢者だと10%を越えるということで、新型コロナウイルスが恐れられてきた。6月半ばまではPCRが感染者に「追いついて」いなかったのでCFRが5%程度だったのが、IFRに近い1%以下の数字になってきているのではないだろうか?
A systematic review and meta-analysis of published research data on COVID-19 infection-fatality rates
— けんもう新型コロナ対策本部 (@kenmomd) 2020年7月26日
Meyerowitz-Katz et al.https://t.co/xYbq0LF4SV
新型コロナの感染時致死率IFRについてのメタアナリシス
全体で0.68%(95%CI 0.53-0.82)
CFRとIFRの違いについてhttps://t.co/bJxIgXCK9y pic.twitter.com/kkKbp4i2pU
CFRの減少化を説明するのにはいくつかの前提が必要。まず、報告日ベースの年代別の感染者数に年代別死亡率(CFR)を二週間「ずらして」掛けて実データと合わせてグラフにしたのがこちら。予測死亡数と実死亡数がフィットしているのがよく分かる。
相関係数。
累計相関係数 | 0.9981 |
新規相関係数 | 0.7073 |
元スプレッドシートはこちら。
池田先生にものすごい指摘を受けた。
7月の検査陽性者数は約1万人だから、致死率は0.2%。インフルの2倍程度。「ただの風邪」ではないが、指定感染症に指定するような特別の病気ではない。 https://t.co/XIvMSjtpxL
— 池田信夫 (@ikedanob) 2020年7月25日
ので、作ってみたのがこちら、「移動(平均)致死率」。青棒が亡くなられた方の数で左縦軸。折れ線が当日までの一ヶ月間の死亡者数を分子として、二週間ずらした同じく一ヶ月間の新規感染者数合計を分母とした数値で右縦軸。
「ぼくのかんがえた」の類なのでアップするのをためらいましたが、仮定として過去30日間の陽性者と14日ずらした同じく30日間の死亡者の数の比を移動致死率としてグラフを作りました。これが医療従事者の方々が見ている現実なのだと背筋が寒くなりました。https://t.co/D92M5SkIOV pic.twitter.com/69UJndYhNj
— ひでき (@hidekih) 2020年7月26日
多分、これが4月から6月にかけて医療従事者の方々が現場で実感していた実感致死率ではないだろうか?過去一ヶ月に担ぎ込まれた患者が十人に一人、五人に一人と亡くなっていたことになる。もちろん、本来はCFRは累計のPCR等陽性者と死亡数で考えるべきなのでこのグラフの数値は採用すべきではない。それでも、数字で「感じる」しかない私のような者にとっては大変危機感が伝わる。
池田先生のご指摘のように、右に近づくに従って「移動(平均)致死率」が下がってきているのがわかる。話しを戻して、先の年代別致死率による死亡予測だと7月は100人前後が亡くなるはずであった。下の図は大変見にくいと思うが、スプレッドシートの一番左のタブ、「年代別感染者推移20200724」を開いて、右にずっといくと出てくる。7月1日付けの予測で932人、実データで954人。これに対して7月末の予測で1046名。その差は、114名と92名となる。
実際は、7月28日の発表で998名、今日の統計で1000名目の死亡者が出た。今月は、約46名の方が亡くなられたことになる。ここ数日が重要だが予測の半分程度となるのではないだろうか?本当に被害を受けられた方のご冥福を祈りたい。ちなみに、6月は81名の方が亡くなられている。感染者は、7月の10分の1程度かなと。つまりは、致死率が以前よりも下がっている傾向にあるらしい。これがIFRとCFRの関係と、日本のPCR検査が行き届きつつある現状によるものかはまだ不明。この予測では8月前半で150名前後の死亡となる。これは今後よくよく数字を見ていきたい。
さらに言えば、かなり広く「第二波」が来ても以前よりは致死率は下がっている。例えば、イスラエル。すでに累積の致死率0.7%。まさにIFRの数と一致している。
https://www.worldometers.info/coronavirus/country/israel/
米国ですら、3.3%。
https://www.worldometers.info/coronavirus/country/us/
マスコミはこうした傾向を伝えてもいいのではないだろうか?「正しく怖がる」ことは「正しい現状を数値で把握する」ことから始まるのでは?
更にもとにもどって論文へのリンク。
論文中いくつか気になった部分。
"Analysing by region of origin did not appear to have a substantial effect on the findings, although there was a slightly lower estimate seen in Asia. "
— ひでき (@hidekih) 2020年7月26日
「分析対象地域により、調査結果に大きな影響を与えるようには見えなかったが、アジアでは若干低い見積もりが見られました」
"One factor that may impact this is government
— ひでき (@hidekih) 2020年7月26日
response, with more prepared countries suffering lower death rates than those that have sufficient resources to combat a large outbreak"
「致死率に影響を与えるであろう要因の一つは政府対応です。準備がより整っている国の死亡率は低い」
".Another recently published estimate stratified infection-fatality by age and found a very low risk for under 50s that increased exponentially with age from 0.0016% <50 years to 0.14% for 50-64 year olds and up to 5.6% for those 65 years and older (60). "
— ひでき (@hidekih) 2020年7月26日
「別の最近発表された推定では、年齢別のIFRが層別化され、50歳未満のリスクが非常に低く、50歳未満の0.0016%、50歳から64歳の場合は0.14%、65歳以上の場合は最大5.6%と指数関数的に増加した。」
— ひでき (@hidekih) 2020年7月26日
けんもう先生いただいたご注意。
10倍いるかというのは基本的には抗体保有率と確定診断で考えればいいんですが、無作為抽出ではないとか抗体検査キットの性能がピンキリで不確実性の大きい部分です。
— けんもう新型コロナ対策本部 (@kenmomd) 2020年7月26日
ちなみに”西浦モデル”では、推定されたIFR0.3%-0.6%に年代の異質性を考慮したものが使われているというのは指摘しておきます。
検査対象の変化があるので、時間が経っても年代別CFRは下がると思います。しかし、主要都市はどうやら無症状の割合がそんなに大きくなさそうなので、タイムラグで一時的には低下してもIFRにまでは収束しないでしょう。
— けんもう新型コロナ対策本部 (@kenmomd) 2020年7月26日
CFRがIFCに近づいている背景にPCRの鋭敏化があると考えるのは的外れなのか。これも、今後ご専門の方のご意見を待ちたい。
@ABOFAN さんGJ!https://t.co/jsgQlcLQnc
— threepinner (@threepinner1) 2020年7月23日
"ウイルスが5個なら、旧機種では「陰性」と判定されます。一方、最新機種を使えば「陽性」になるのです"
測定器が改良されたので「感染者」が増えた、それもこれまで陰性とされた若年者が増えた。ウイルスの変異で拡大しやすくなった、より合理的な説明だ。
PCR陽性であっても、Ct値34というわずかなウイルス量の場合、ウイルス培養に成功していない。このウイルス量だと、おそらく感染可能ではないと思われるhttps://t.co/0itxh7sMDR
— カラ丸 (@karamaru_td) 2020年7月26日
いずれせによ、これまで人類は風邪、コロナウイルスの開発は成功してこなかった。同様に特効薬も。ウィズコロナで現状の致死率や、リスクを理解して正しく怖がることが大切。更に強調されるべきなのは、経済がどうにもひどいことになっていること。バランスを取りながら、今後生活するしかないだろう。医療すらも経済活動の一環なので、経済全体がこければ医療もおかしくなり、最終的には命は救えない。民間、経済クラスターとしてはウィズコロナ時代の商売を考えるしかない。更に言えば、今回の新型コロナウイルスで少し感染症対策が国中で高まれば、来たるべき新型インフルエンザのパンデミックの時に対策となると私は信じている。
■追記 2020/08/02
予測を出したからには、答え合わせをしておかなければならない。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12776.html
7月1日の累計死亡者が972人だったので、37名の方が7月中*1に亡くなられたことになる。単純に二週間の間隔で年代別の発症者数に年代別致死率を掛けるという予測で、本文中にあるように「114名と92名」となった。その3割から4割の数の死亡者で済んだことは大変ありがたいと思う。7月の最終日に5名の方が亡くなられている。8月は更に増える可能性がある。ちなみに、同様の手法で予測すると8月前半で130名となった。全国の感染者数は千人を超えて増えているので、更に8月後半は増える可能性がある。よくよく数値をアップデートしていきたい。*2
素人が非常に不謹慎なことをしていることは謝罪しておきます。