大変、興味深い論文を教えていただいて読んだ。
R. Chaudhry et al., A country level analysis measuring the impact of government actions, country preparedness and socioeconomic factors on COVID-19 mortality and related health outcomes, EClinicalMedicine (2020), https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2020.100464
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(20)30208-X/fulltext?s=09
国境封鎖、フルロックダウン、大規模検査、いずれもCOVID-19死亡率と関係なしという解析結果。NZは唯一それでまだ防いでいる国に見えるが。https://t.co/ZJE3XtDhNs
— J Sato (@j_sato) 2020年7月22日
そして喫煙者がかかりにくいというのが統計的事実となったw タールが新コロウィルスの付着をブロック
機械翻訳に頼りながら、ポイントをいくつか抜き出しておきたい。今後の多くの国のCovid-19対策に関わるのではないだろうか?
この研究は、症例数の上位50位の国から収集された政府の行動、国家対策のレベル、社会経済的要因を分析している。各独立変数(因子)と感染者数、回復者(退院者)数、重篤症例数、死亡者数の4つとの関係性を、多変数の負の二項分布を用いて分析しているという。私の拙い理解では重回帰分析ではないと読めた。各変数が感染者数などの変数と1対1で分析しているのか、重回帰のように複数の因子の重み付けを相対的に分析しているのか、私の拙い理解力では読み取れなかった。Covid19に関するデータは5月1日現在、人口、社会経済的データは概ね4月1日現在だと。
アブストラクトを翻訳する。平文で書かれたものをわかりやすい(私には思える)形に変形している。
COVID-19の症例数の増加は、
・肥満度(調整率比率[RR] = 1.06; 95%CI:1.01 1.11)、
・人口年齢の中央値(RR = 1.10; 95%CI:1.05 1.15)
・最初に報告された症例発症から国境閉鎖までの期間(RR = 1.04; 95%CI:1.01 1.08)
の高さ(長さ)と関係していた。100万人あたりの死亡率の増加は、
・より高い肥満有病率(RR = 1.12; 95%CI:1.06 1.19)
・一人当たりのGDP(RR = 1.03; 95%CI:1.00 1.06)
と有意に関連していた。より小さい所得分散は、
・死亡率(RR = 0.88; 95%CI:0.83 0.93)
・重篤症例の数(RR = 0.92; 95%CI:0.87 0.97)
をより小さくしている。100万人あたりのCOVID-19死亡率と、国境の急速な閉鎖、完全な封鎖、および広範囲にわたる検査は、関連していませんでした。
しかし、
・完全なロックダウン(RR = 2.47:95%CI:1.08 5.64)
・生物に対する国の脆弱性と脅威の減少(すなわち、リスク環境のグローバルヘルスセキュリティスケール*1の高いスコア)(RR = 1.55; 95%CI:1.13 2.12)
は、患者の回復率の増加と有意に関連している。
「広範囲に渡る検査」が人口当たり死亡者数とは関連していないというのは驚きであった。
統計手法として使われている「負の二項回帰」の説明。ちょいと難しい。「負の二項分布は、λ がガンマ分布に従うようなポアソン分布だと思えばだいたい OK」と書いてあったので、相関ではなくガンマ分布を使って分析していると把握しておきたい。
この結果この2つの表に端的に表されている。百万人当の感染者数、回復者(recovered、退院)数、重篤者数、死亡者数と各国のパラメーターとの「負の二項回帰」がまとめられている。各段階でほぼ挙げられているのが肥満。これは反省するところが大。いわゆる感染拡大、陽性者数との関連で言えば政策的な変数、ロックダウンまでの日数、国境封鎖までの日数、検査数、年齢中央値等が高い関係性(rate ratio)を示している。先の段階に行くに従ってその国のもとからの素地、経済的な要素が増えてくるように見える。致死率に関して言えば、肥満、喫煙、看護師数、所得の分散(差)の小ささ、一人当たりGDPとなっている。
@J_Satoさんご要望の「セクシーな解説」を目指せば、「Covid-19の感染防止は政策的な対策が重要。重篤化、死亡を防ぐには医療リソースの確保から経済的な側面まで総合的な国力が必要」であると。これ以上は私の手にあまるようだ。
*1:多分、このスケールかと。www.ghsindex.org