HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

映画版「前田建設ファンタジー営業部」

大変おもしろかった。ここのところ、新型肺炎、コロナウィルスの話しばかりでめげていたので、映画を見に行った。いわずとしれた00年代の建設業不況の頃、アニメの「ファンタジー」な構造物を次から次へと現代の技術で具現化するにはどうしたらよいかを解決してウェブで展開した前田建設さんのお話。

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いや、ま、そもそもちゃんと現在もファンタジー営業部が生きていたのがすごい。ネタバレはさけるが、実にいきいきと「ファンタジー営業部」、こと前田建設広報部の方々が描かれていた。

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いくつかの場面で思わず上映中に笑ってしまった。公開からだいぶ経っていたし、ウィルス騒ぎの最中なのでほとんと観客がいなかったのが幸い。建設現場ばりばりの映画にも関わらず「まんぷく」でタカちゃんを演じた岸田ゆきちゃんが不思議な魅力を発散していた。すごい!

劇中で「ニューフロンティア」、「ブルーオーシャン」と連呼していたが、本当に00年代は建設業の危機だった。あんまりつらい話しばかりだったので、こういう企画がとても新鮮に読めた。建設関係者には、コロナウィル氏対策をしてぜひ見てほしい一本!

攻殻機動隊スタンドアローンコンプレックス シーズン1 (ネタバレあり)

例によってNetflixで見た。「笑い男」編。つまりは、厚労省スキャンダルによる与党幹事長更迭の話し。現下のコロナウィルスに関する厚労省問題が表面化した今、にわかにリアリティを感じる。

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村井ワクチンをめぐる陰謀
笑い男の狙いが厚生労働省の何らかの情報にあると睨む公安9課であったが捜査は行き詰まっていた。トグサは笑い男の狙いは紙媒体情報ではないかと疑い、膨大な紙資料の中から「村井ワクチン接種者リスト」が無くなっていることを突き止める。村井ワクチンは不治の病である電脳硬化症の特効薬で、薬効は認められるも、様々な利権が絡み、当時の審議会によって不認可となった代物であった。
(中略)
マトリ*1にひまわりの会の殲滅を命じた厚生労働省医薬局長の新見は、旧知の今来栖の裏切りに業を煮やし、マトリに彼の行方を追わせる。実は今来栖は笑い男の脅迫を受けており、彼の目的は、かつての瀬良野氏誘拐も含め村井ワクチンが不当に不認可にされた真相を世間に暴露させることであった。
(中略)
新見は配下の実働部隊に公安9課の排除を命じ抵抗を試みるが、今来栖殺害の一件などで荒巻は速やかに新見の逮捕権を取り、身柄を拘束する(ただし、その後、新見は電脳自殺を図り証人資格を喪失する)。その帰路、元首相の神崎が偶然を装って現れ、借りを返す(第19話「偽装網に抱かれて」にて荒巻の進言によって娘を助けられる)として新見の背後には与党幹事長の薬島がいること、彼は海上自衛軍に人脈を持ち、危険であることを密かに伝える。
(中略)
海上幕僚長で、政界に転出後は厚生労働省族議員として力を握った薬島*2が、すべての黒幕と睨む9課であったが、彼を追い込める材料が無かった。
(中略)
公安9課解体
薬島を追い詰める証拠を集めた9課であったが、薬島が先手を打ち、公安9課の存在を世間に明らかにした上に、笑い男事件の犯人だと濡れ衣を着せる。
(中略)
薬島は捜査の手が及ぶも、それはマスメディアと検察の功績になっていた。逮捕されても薬島は逃げ切るかもしれないと考え、ついにトグサは笑い男模倣犯として自ら薬島を襲撃しようとする。と、そこにバトーが現れ、トグサを止める。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX - Wikipedia

架空の物語なので現在の日本ではこんな荒っぽい現場はありえない。しかし、平和を作り出せるのは戦争などの大きな危機を体験した人材だけだというメッセージを読み取ってしまうのは私だけだろうか?攻殻機動隊の世界において銃後にいた厚労省、与党幹事長たちが自分たちの利権のために不正を働いている間、「少佐」や、バトーなどは第三次世界大戦を戦っていたという設定になっている。

物語の中では自衛隊自衛軍厚労省が「薬島」を通じて結託しているが、今回の新型肺炎騒動において主導権をにぎるべきだったのは非常時の戦力であったのではないかと。WHOが非常時宣言を出していない以上、感染症法も、水際対策ガイドラインも、日本の平和時の体制においては起動しえないのだろう。首相の決断、国会の承認がなければ、超法規的措置はとれない。さくらさくらと酔っ払っている野党の前に非常に困難な政治的決断だと私ですら考える。

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水際対策ガイドライン

「猛威をふるう『ウィルス・感染症』にどう立ち向かうのか」(個人的メモ) - HPO機密日誌

*1:本ブログ注 マトリ=麻薬取締担当官

*2:本ブログ注 薬島=与党幹事長

「猛威をふるう『ウィルス・感染症』にどう立ち向かうのか」(個人的メモ)

まさにいまにふさわしい書籍だと言える。

厚労省がそこまで最悪の事態を予測していたことすら、私には衝撃的。

新型ウィルスのHだのNだのの意味もわかった。HA、ヘマルグチニンは、細胞にウィルスが取り付くために作用し、NA、ノイラミニダーゼは、宿主細胞内で増殖したウィルスが自らを細胞から切りはすために使われるのだと。男女のセックスを「赤の女王」として最近との競争において変異を発生されると書いたが、インフルエンザA型の変異のスピードははるかに早いようだ。

hpo.hatenablog.com

さらに通常のワクチンではなく、パンデミックが起こった場合の対応には時間がかかると。全然うれしくない。

日本政府の対応が悪いと主張する方々がいらっしゃるが、「水際対策ガイドライン」の想定スケジュールから言ってそんなに対応が遅いわけではない。

というか、WHOはフェーズ4宣言をしていないと私は認識してる。ツイットしたように、私が情弱なだけ?WHOはやはりちょっと中国に「忖度」しすぎだろうと。そもそも、野党が「さくら、さくら」ばかり問題にして国会を停滞させているのも中国への「忖度」でないかと疑いたくなるがそれはまた別の話し。

もしかすると救いになるのは、最近の日本の高温化。少なくともインフルエンザウィルスは高温多湿に弱いと。コロナウィルスが分離されているなら、その感染力が体外で何日くらい生存できるのか、ぜひ検証した論文が待たれる。

いや、ま、違うか。にしても、ウェブで断片的な知識を漁るより本一冊を読む法がはるかに勉強になった。

Netfixのパンデミック

素晴らしいタイミングで、Netflixパンデミックに関するドキュメンタリーを公開してくれている。

togetter.com

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概要をざっとまとめた。

・ニューヨーク : 公衆衛生のプロのイスラム教の女性が都心部での伝染病と戦うかが描かれる。

・セイラム : ワクチンを恐れ、科学的な事実をわいきょくする米国人と看護師出身の議員との対立。

オクラホマ : ジェファーソン郡、地方での病院に勤務する女性医師とインフルエンザとの戦い。72時間シフトでの勤務というのが信じられない。

・アフリカ : エボラ出血熱と戦うWHOの職員の戦い。エボラ出血熱を恐れる現地の人々は感染者を家につれて帰ったり、テロの対象としてWHOの職員を狙う。

・インド : 貧困地区において十分な検査すら受けられない人々と医師のやりとり。

・メキシコ国境 : 不法移民におけるインフルエンザの流行を食い止めるボランティア、NPP。法的な外の存在には公的な支援はない。

・サンフランシスコ : インフルエンザですら数種類のウィルスにそれぞれ対応するワクチンしかない。豚を使って、1度の注射で対応できる万能ワクチンの研究をするヴェンチャー企業の努力。

これ以外にも、米国国内で鳥インフルエンザを防ぐために野生の鳥の検査をするグループなど、パンデミック、世界的な伝染病の流行、を防ぐために地道な努力を続けている姿などが描かれている。

日本は、SARSの時に伝染病に関する法的な措置を改善すべきだった。いまとなっては手遅れだが。

hpo.hatenablog.com

日本がたまたま検査が早期に進んでいて感染者の数が多いようだが、広がった感染者の数で言えば全世界で今後非常に大きな数の感染者が見つかるのだろう。

hpo.hatenablog.com

医療崩壊しないためになにをするのかと、経済的なインパクトにいかに対応するかが今度の焦点となるだろう。伝染病と国防、政治がカオスを起こせば、昔々の映画、「復活の日」のような世界的な事態が起こりかねない。

新型ウィルスから男女のセックスに逃げ込もう

男女という有性生殖が進化によって獲得されたのは、主に感染症対策であったという話し。底本はマット・リドレーの「赤の女王」。

更に、病原菌との「軍拡競争」は免疫システムのように寄生側と宿主側の分子生物学レベルの「鍵と錠前」の攻撃と防御となる。これは、鍵と錠前の数の問題となる。このために、本来数を増すだけながら有利であるはずの無性生殖ではなく、多様な鍵と錠前を生み出す有性生殖が「赤の女王」の軍拡競争には必要なのだという議論となっていく。

取り違えた赤の女王 - HPO機密日誌

今回のコロナウイルスが何らかの形で変異して大流行してしまったように、ウイルス側は常に変化を続けることで「利己的遺伝子」そのものとして存続してきた。進化のスピードの目安である世代交代の数は動物の比ではない。なにせ人間は次の世代を産むのに18年あまりかかるのに、最近は1年で3万世代余り、18年で50万世代移り変わってしまうのだ。この進化、変異のスピードに多少なりとも追いつくには、細菌の類の単性生殖に対して有性生殖という次の種に移り変わる時に、数限りないバリエーションを産むことを動物側は選択したと。人間の47本の染色体が父と母から2分の1の確率で選ばれるので、2^47、1.4x10^14のバリエーションが生まれる。

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1億年

一億年のはかり方 - HPO機密日誌

私には医学も生物学の知識もないので、実際には人間の染色体のうちの何本に抗体に関する遺伝情報が入っているのかは知らない。それでも、複数の染色体に複数の抗体情報がはいっていて、その組み合わせでかなりの数の対抗力が生まれるのだと信じる。

つまりは、有性生殖とは細菌に対する情報交換なのだ。そう考えると、キスをしたり、セックスしたりして粘膜をこすり合わせること自体が体内の細菌の交換に見えてくる。男女が性的な魅力を感じる対象に常に「旬」が求められるのも、性愛と細菌関連情報が関連しているのだと思えば、納得できる。

前から不思議でならないのが、これまでの人類の歴史とともに性的なソースは積み上げられてきたはずなのに、現在の成人誌はあくまで現在進行形のコンテンツを扱っていること。

交配可能性と異性の好もしさ - HPO機密日誌

古くはデカメロンも、伝染病の時は無理にあらがうのではなく、隔離された状況で男女の性愛を堪能しながらやりすごすしかない、次代のための情報交換に励むしかないという物語と読める。

デカメロン

デカメロン

まあ、できることはやってあとは様子を見るしかないと。

Covid-19、中国致死率の不思議

以前からなぜ中国と他の国とで致死率があまりに違うのか不思議に思っていた。13日現在で中国の感染者59,493人に対して死者数が1,367人、致死率2.3%。中国以外で、感染者564人に対して死者数2人、0.4%。*1

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20200213 コロナ感染

コロナウイルス感染マップ:日本経済新聞

新型コロナウイルスによる肺炎の感染が最も深刻な武漢市がある湖北省で、12日、新たに242人の死亡が確認され、中国本土の死者の数は1358人となりました。また、感染確認された人は中国本土で6万人に迫っています。

新型コロナウイルス、中国本土の死者1358人に TBS NEWS

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コロナ患者数、死者数 20200213

新型コロナウイルス、感染者が確認された国と地域(13日19時20分現在) 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

以前のインフルエンザでの致死率が出てこないが、中国の致死率は高めであったことは類推をまたない。

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インフルエンザ 致死率

「国内感染は始まっている。死亡者の最小化を最大の目標に」~新型ウイルス対策で元WHO幹部が提言(江川紹子) - 個人 - Yahoo!ニュース

中国で医療崩壊が起こったのではないかと考えている。本来、日本レベルの医療体制であれば2%を超える致死率にはならなかったのではないだろうか?

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この医師の悲痛な声はいまも私の耳に響き続けている。

日本で皆保険があることで、医療体制がそれなりに整い、アクセス可能であることが低い致死率を作っていると思う。日本での本格的な感染の顕在化が始まったが、医療崩壊などにつながらないことを祈りたい気持ちだ。

*1:数字が時点の問題か若干違っているが中国の感染者数以外はAFP電を採用。中国の感染者は日本経済新聞のものを採用。

女はいつでも特別な存在でいたい

ひろゆき氏の発言が話題になっていると言うので、今更ながら読んだ。この辺が問題になっているのだろうか?

フェミニズムって言葉を使う人のなかに、「男女平等がいいよね、同じようにしたいよね」という人と、「女性の権利を増やしたい、そのために男性の権利を制限したとしてもいい」という人が両方いることが問題だなと。

もし男女を入れ替えて後者と同じ考えの男性がいたら、それは女性を差別してる、ただの差別主義者ですよね。

ひろゆきさん、どうして「今の日本では“フェミニズム”って言葉を使わないほうがいい」のですか? | ハフポスト

そもそもの認識として長い間、女性は「選ばれる性」として存在してきた。だから、女性側は「力」以外の観点から特別な存在になることが生まれたときから期待されてきた。以下、「選ばれる側」としての性を女と書くが、弱男性という存在もあるので男でも他の性を選択した人と読み替えても構わないように書く。

一夫多妻の動物では、条件にめぐまれた母親はオスを 多く産むのに対して、恵まれない母親はメスを多く傾向がある、という現象があるのではないかという仮説である。 トリヴァース=ウィラード仮説

トリヴァース=ウィラード仮説と男尊女卑の起源 - HPO機密日誌

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シンデレラの物語が典型的であるように能力に恵まれなくとも、美貌や、やさしさにより「王子様」に選ばれるという検証されつつある仮説だ。トリヴァース=ウィラード仮設がすごいのは、シンデレラストーリーは人間特有でないということを証明しているところだ。

女が知的能力や、他を威圧する身体能力に恵まれていなくとも、「選ばれる」ためには特別な存在あるというオーラを身にまとうことだ。「女は謎」であることが最も自身を魅力的に見せる。明確な力は説明可能であり、数値的な比較になってしまう。しかし、「謎」は謎であるがゆえに数値化、比較できない。比較できない力こそが最強なのだ。シンデレラの王子様はシンデレラの何を知っていただろうか?父を失った?姉たちからいじめられた?働きもの?やさしい?舞踏会で踊っただけではなにも伝わらない。靴の片方という謎だけを残して消えていったのだから。

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よって、女は自分の魅力の源泉である「謎」の力の限界を試そうとする。自分の男に対してどこまでもわがままになっていく。怒る理由がなくとも、自分の存在をアピールするがために相手を叱る、相手を否定してみるというモンスターに成長していく。結婚していた20年間このことは十分に味わった。

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歴史的に見れば保守を自称する私から見ても女性の選挙権・参政権活動としてのフェミニズムは意義が十分にあった。性的な嗜好を認めさせる運動までも私は同意する立場だ。しかし、リソースに恵まれた現代におけるフェミニズムひろゆき氏が指摘するように自分が特別な存在でありたいという女性の「謎」面がどうしても出てきてしまう。法的な平等は、法の精神から行って特別な存在を認めない。すべての男女、あるいはその他の性的な嗜好者においても平等でなければならない。したがって、フェミニズムは法的な運動にとどまらず、自己を説明することができない「謎」の運動へとモンスター化していく。冷徹な論理と自己の厚生がなにであるか理解されているリベラルフェミニストとはこの意味で対極の存在となる。

男女間の平均的な違いを強調するよりはむしろ男女間の類似性を強調し、パーソナリティーや性格における性差の大部分は、社会のジェンダー構築に起因すると位置づけている。また、男女双方に向けて、両性具有的な単一の美徳群を奨励する傾向がある。リベラルフェミニストは、〔男女にたいする〕階級的な社会的役割と権利を裏付けしかねないような、性差についての強い主張を拒絶する。しかし一方でリベラルフェミニストは、その他の点では、男女それぞれに良き生(good life)について特定の考え方を奨励することを避け、かわりに、個々人が最も適した生き方を追求するための、より広範な中立性とプライバシーの領域があることを擁護しようとする。

フリーセックスから #MeToo が生まれたのか? - HPO機密日誌

しかるに、最近のウェブ上のフェミニズムと称される運動は靴がどうとか、身体の強調がどうとか、現実の言動からかけ離れている気がしてならない。私は人事関係の仕事を長くしてきた。しかし、かかとのあがった靴を履いてきたかどうかで人を評価したことはない。女子が女子の服装や態度についてうんぬんする相談はいくらでも受けてきた。男子側から女子の服装うんぬんという相談は寡聞にして知らない。本性から「特別な存在」であることをを求めざるを得ない女の性(さが)はフェミニズムを過激化させ、自らの謎という見えない敵に挑んでいるようにしか私には見えない。