HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

格差と総需要と税社会保険負担(という消費)

昨日、所得格差が総需要の不足を生むというツイットにコメントさせていただいたら逆コメントをいただいていた。

一応、元の画像を張っておく。式があまりに単純なのでスプレッドシートまで公開する必要はないだろう。また、グラフ、表も説明を要しないほどシンプルだ。

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たぶん、元ツイットの方の議論はこの論文あたりの議論につなっているのだろう。

d.hatena.ne.jp

コメント欄にあるように、ちょっと議論が乱暴だし、税、社会保険を通じての「消費」を考慮していない。国の税制度、社会保険制度の設計によって所得の再分配の形は大きく異なるので、格差が総需要の減少につながるとは言い切れないだろう。そもそも、原著ですら短期間の格差は影響が薄く、未来永劫続く格差で初めて数%の総需要減少につながりうるとある。

実感値はこの方のご発言に近いと思う。

根拠は示しかねるが、この方のおっしゃる通り、年収800万円を過ぎたら、次は4000万円くらいまでは幸福度はもちろん、使えるお金も比例しない。日本の再分配制度はかなり徹底している。なおかつ、相続税による世代を超えた再分配も徹底している。もちろん、税務署当局も年収300万円の人に対するのと3000万、3億の人に対するのとで徴税の徹底の度合いがまったく違う。個人的には、もうすこし年収4000万円クラスの普通の人が日本において増えていかないと、国全体の消費の喚起はもちろん、経済成長も伸びていかないと考える。

愛の本質は子をなすこと

タレブの影響で饗宴を読んでいる。愛の本質とはなにかを求めるソクラテスとお仲間の姿に魅了され続けている。

hpo.hatenablog.com

まだ、途中だがソクラテスがディオティマから愛の本質の教えを受けるところまで来た。パイドロス、パウサニアス、エリュクシマコス、アリストパネス、アガトンが愛、エロスの神の賛美を熱を込めて話す。愛とは、神に切り取られた自分の半身を求める行為であり、自分よりも美しいもの、強いもの、よいものを求める行為だと語られる。現代の遺伝学的な見地からも2500年も前のギリシア人の真実の見極め方に驚愕するばかり。そして、ソクラテスが語り始める。愛の神とは、常に自分自身ではない、自分にが欠けているよいもの、美しいもの、強いものを求める「神」なのだと明らかにする。

『エロスは、よいものを永遠に自分のものにすることを求めているのだと』

そして、エロスの働きとはどのようなものかディオティマから語らせる。

『ならば、わたしがおまえに教えてやろう』と彼女は言った。『その働きとは美しいものの中で、子をなすことなのだ。これは、体の場合であっても、心の場合であっても、同様にいえることだ。

愛によって子をなす。これは、ネットワークの働きに魅了されていたころにたどり着いた本質の考察と全く同じだ。生きているネットワークがなぜべき分布を示すのか?それは、「子をなす」行為と、死滅していく動的な状態だからだと私は考えた。ネットワークが生きているのは、エロスの神の働きなのだといまさらながら理解した。

hpo.hatenablog.com

もっと切実に、人間として「子をなす」ことが本質であるというこれまでの人生で何度か実感している。

そして、人は「子」をなす。

生物的な子でなくとも、社会というネットワークの再生産にかかわる仕事をする。それが、自己実現なのだ。自己実現とは、どこかで見つけるものではなく、子をなすように自分で創り上げるものなのだ。

マズローの欲求五段階説をネットワークから考える - HPO機密日誌

ブログ上で確認できる一番古い直感のタイミングはここ。

攻殻機動隊」と「負け犬の遠吠え」を書いてはじめてなぜ自分が子をなすことに深い意味を感じていたかを初めて理解した。「十月十日」も「迷い」という種をかかえつづけたわではないが、これもひとつの出産だったのかもしれない。

ぼくたちは本当に負け犬なのか?: HPO:個人的な意見 ココログ版

おっと、これもまたブログを書き続けているメリットだが、まったく同じところを以前このブログで書いていることを発見した。

まことに、その(愛と呼ばれるうる)行為とは、美しいものにおいて−−−精神の面でも肉体の面でも−−−美しいものにおいて、子を産むことです。

6つの愛と呼ばれうる行為 - HPO機密日誌

高校の英語の先生、「辞書を引いたら必ず印を残しなさい。何回引いたかわかるようにしなさい。同じ単語を何度も引いていることに気づくだろう。自分がどれだけ忘れか知ることが学び続けることにつながる」と。ああ、いかに自分が進歩していないかを実感する。「ブログ」という形態が私にとって自分がどれだけ忘れやすいかを明示する「辞書の印」なのだな。

中野信子「不倫」読了

ものすごく面白かった。人間の生物としての生殖活動とはこういうものなのかと思い知らされた。また、生物学、遺伝子から見た日本人の「生殖」の評価にも大変共感した。

不倫 (文春新書)

不倫 (文春新書)

現代の日本が取り入れるのは、やはりフランスの大人の恋愛、生殖感。

婚外子を認めて人口増に成功したフランス


少子化対策という点からしても、恋愛や結婚に頼らずに生殖を増やす方法を国家レベル で考えていく方が効率的です。
たとえばフランスは、婚外子への差別をなくすことによって出生率を高め、非常に成功していることでも知られています。すでにフランスでは新生児の5割以上が婚外子です。 法的に婚外子を認めただけではありません。3歳になるとみな保育学校に入学できる(フランスでは3歳以降は日本で言う「待機児童問題」が存在しない)、拒んだ雇い主には罰金が科せられる産休を男女ともに法制化、妊婦は基本的に医療費ゼロ負担・・・・・・、といった施策を組み合わせて、産みやすく、育てやすい社会づくりを進めてきたからです。
その結果、1994年に1.66にまで下がった出生率が、2010年には200ま で回復しました。
婚外子の割合はフランス以外の西欧諸国でも増えており、イギリスでも5割に近づいています。規律に厳しいイメージのあるドイツでさえ、すでに婚外子は3割を突破しました。 ノルウェースウェーデンなど北欧諸国も婚外子が5割を超えています。
(中略)
単なる理屈ではなく、実態としても「生殖と結婚は一体のものではない」のです。不倫は、セックスと恋愛を享受するためのものですが、日本では、そこから生殖への道にはつながりません。これは人々の価値観だけが変わってもどうにもなりません。たとえ不倫相手の子どもであっても産んでいい、育てていいという社会をつくるのは、政治の役割です。社会と政治が協働して、恋愛、結婚、生殖のバランスを変えていくことは、不可能ではありません。

無理に「生殖」して子孫を残せと主張するつもりもないが、現代日本人の恋愛至上主義による「自滅」はあまりにひどい。もう少しいろいろな恋愛の在り方、結婚の在り方、子供のもうけ方を容認すべきであると私は思う。

まあ、人口減少もようやく負の側面ばかりではなく、「楽しむ」方向にも評価されだしているようだ。都心の高くて狭いけど便利な住居と、否かの安くて広くて子育てできる住居の「デュアル」ライフを楽しむ方々が出てきたと。一人あたりの住居面積がなんらかの方法で倍増することが景気対策、空き家対策にもなり、今後の日本のライフスタイルを豊かにすると私は思う。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181217/k10011750081000.htmlwww3.nhk.or.jp*1

まあ、住まいの問題を含めて男と女は悲喜こもごもが面白いのかもしれない。

*1:絶賛魚拓募集中。 b.hatena.ne.jp
NHKの報道の元ネタは多分リクルートsuumo.jp

努力にアップサイドあり、懈怠にダウンサイドあり

はてぶで幻冬舎代の見城徹社長の「圧倒的努力」という言葉へのバッシングコメントが続いている。

b.hatena.ne.jp

私も見城社長と同じく「努力は報われる」派だ。仕事においても、ゴルフにおいても、努力した分はかならず報われると信じている。また、何度も絶望しながらも、生き残ってきて、努力が報われるのを見ることができた。努力には臨界量のようなものが存在し、生き残り、なおかつ成功するには「圧倒的努力」が必要となる。そこで努力をやめてしまえば、それまでだが生き残っていければ、生存者利益が存在し、名声、信頼が生まれれば、大きなアップサイドがある。企業、商品開発、画期的な発見、発明などすべて「圧倒的努力」のアップサイドの証左だ。

出版社社長「圧倒的努力は必ず報われます」に対しブラック企業対策プロジェクト代表「たいていはうつ病になる」 - Togetter

遺伝的にどんな環境においても精神疾患等にならないタイプが一定数存在することが検証されている。努力はすべき。逃げるときは逃げるべきだけど、それは努力のあと。

2018/12/14 06:28
b.hatena.ne.jp

私はこの言葉が正しいと信じている。

勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし

松浦静山の言葉「勝ちに不思議の勝ちあり…」 : ライフ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

これは勝ちにつながる努力にはアップサイドがあり、努力を怠った懈怠にはダウンサイドがあるという意味だと私は理解している。そう、たぶん努力を怠った場合のダウンサイドの方が、実は必要十分条件と言えるほどダウンサイドの確実性が高い。これは誰もが理解できる人生の常識だ。ただ、ダウンサイドを受けた時の矢印の方向を誤ると精神疾患や、健康への影響があったりする。人は順調に努力の成果を受けている時は、努力を続けられる精神的、肉体的健全さを維持できるものだ。

とにもかくにも努力はすべきなのだ。限界をもうけない努力をしなければなにも始まらない。

外国人労働者の方々は日本が好きだから来ている

国会では、入管法改正法案が通ったと。

www.fnn.jp

平成30年12月8日,第197回国会(臨時会)において「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し,同月14日に公布されました(平成30年法律第102号)。

この改正法は,在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設,出入国在留管理庁の設置等を内容とするものです。

入管法及び法務省設置法改正について | 入国管理局

この法案は、これまでの実習生制度に加える形で可決されたと理解している。技能実習生が脚光を浴び、一般化したのはごく最近だが実は技能実習生制度の歴史は古い。

1960年代後半に、海外進出した日本企業が現地法人から現地社員を招聘し、技術や知識を習得した現地社員が、帰国後、その技術を母国(開発途上国)で発揮させたことから、国際貢献と国際協力の一環として1981年(昭和56年)に在留資格が創設された。

外国人研修制度の推進団体である財団法人国際研修協力機構(JITCO)は、研修生・技能実習生の受入れを行おうとする、あるいは行っている民間団体・企業等や諸外国の送出し機関・派遣企業に対し、総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行っている[4]。また、研修生・技能実習生に対し、その悩みや相談に応えるとともに入管法令・労働法令等の法的権利を保障し、研修・技能実習の成果向上、研修生・技能実習生の受入れ機関と送出し機関等を支援している。

1993年(平成5年)には、「学ぶ活動」である研修に加えて、「労働者として」実践的な技能・技術を修得するための技能実習制度が導入された。2010年(平成22年)7月1日に出入国管理及び難民認定法が改正され、生産活動などの実務が伴う技能習得活動は技能実習制度に一本化された。ただし、在留資格としての「研修」は廃止されず、座学など実務が伴わない形での技能習得のみが認められる資格として存続する。

技能実習制度 - Wikipedia

もうそろそろ、「実習」という枠組みから踏み出してもよい時期は来ているだろう。実際高度人材ポイント制の名前で、日本における外国人材の活用は進んでいる。

1 制度の概要・目的
高度外国人材の受入れを促進するため,高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度を平成24年5月7日より導入しています。

高度外国人材の活動内容を,「高度学術研究活動」,「高度専門・技術活動」,「高度経営・管理活動」の3つに分類し,それぞれの特性に応じて,「学歴」,「職歴」,「年収」などの項目ごとにポイントを設け,ポイントの合計が一定点数(70点)に達した場合に,出入国管理上の優遇措置を与えることにより,高度外国人材の我が国への受入れ促進を図ることを目的としています。

高度人材ポイント制とは? | 高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度

そもそも、中国だの、ドイツだのが入り混じって東南アジアの真面目で勤勉な労働者をリクルートしている現在では落ち目国家、日本に勝ち目はない。処遇、出世、取得できる技能の競争力ではなかなか対抗するのが難しいのではないだろうか?そして、情報が行き届く現代においてはASEAN、中国、韓国、台湾の各国の方々も日本の現状をよく理解していらっしゃる。私の実体験で言えば、その意味で現在来てくださっているいわゆる「外国人労働者」の方々は日本が好きだから来てくれているという側面が大なり、小なりあると断言したい。

実習生、高度人材など、出身国、ビザの種類は様々でも、何人かの方々と近くで接する機会がある。なぜ日本へ?と聞いてみると、多くの方々は「日本の好きだから」と応えてくる。もっとつっこんでなぜ日本が好きなのかを聞くと、「日本の歴史が好き」とか、「日本人の礼儀正しさに感動した」と最初は真面目な答えが返ってくる。更に突っ込むとなんと「小さい頃からドラえもんを見ていたから」とか、「日本のドラゴンボールだ好きだから」と。少子高齢化が進み、生産労働人口も減り続け、経済規模では中国に追い越されてしまった日本だが、「ドラえもん」のおかげでいまもこうして外国から人材が来てくれている。こころから、「ありがとう!ドラえもん」と感謝したい気持ちになった。

hpo.hatenablog.com

今更ながらはてなブログをhttps化する

アナウンスをされていたのはなんとはなしに覚えていたのだが、すっかり忘れていた。最近、Chromeでの自ブログの表示に赤字で「セキュリティが万全でない」旨表示されていたうっとおしいと思い、調べ直してようやく気づいた。

help.hatenablog.com

自分の所属する組織のウェブページははるか昔にアクセス向上のためにhttps化していたのに、紺屋の白袴状態であった。本来このブログも、組織ではできないこと、言えないことをやるために存在しているはずなのだが、逆になってきているかもしれない。

どちらにせよ恥ずかしいほど少ないアクセスしか無いのだが、いまのところ特に向上は見られない。まあ、文字通り「今更」なのだろう。

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力の続く限りはブログを書き続けたいとは思っている。

進撃の巨人 26巻、27巻 ネタバレあり

コンビニで27巻を買った。読んではみたものの、ストーリーが全く理解できなくなっていた。

「えっ?(表紙の通り)なんでエレンがいきなり牢屋の中にいるんだっけ?この子どもたちがなんでここにいる?うん?」、と「?」ばっかりになった。自分の記憶の中では、26巻の内容も理解が難しかった。で、読み直した。

進撃の巨人(26) (講談社コミックス)

進撃の巨人(26) (講談社コミックス)

27巻を読んでから26巻を読んで、なにが起こったかようやく理解できた。作中で日本を思わせる国、人々が出てくる。これはエレン達の国が「現代日本のメタファーではない」という作者の主張ではないだろうか。ちゃんと1巻からその「仕込み」がしてあるというのが、またすごい。

今後強大な力をもつエレン達の国が世界を相手に戦う展開になるのだろう。閉塞感、絶望感しかなかった初期(とは当時とても思えなかったが)の展開がまるで嘘のよう。

hpo.hatenablog.com

この作者の頭の中は一体どうなっているのだろう。複雑なプロットをここまで回収しながら、新しい展開を産める才能がすばらしすぎる。