HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

愛の本質は子をなすこと

タレブの影響で饗宴を読んでいる。愛の本質とはなにかを求めるソクラテスとお仲間の姿に魅了され続けている。

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まだ、途中だがソクラテスがディオティマから愛の本質の教えを受けるところまで来た。パイドロス、パウサニアス、エリュクシマコス、アリストパネス、アガトンが愛、エロスの神の賛美を熱を込めて話す。愛とは、神に切り取られた自分の半身を求める行為であり、自分よりも美しいもの、強いもの、よいものを求める行為だと語られる。現代の遺伝学的な見地からも2500年も前のギリシア人の真実の見極め方に驚愕するばかり。そして、ソクラテスが語り始める。愛の神とは、常に自分自身ではない、自分にが欠けているよいもの、美しいもの、強いものを求める「神」なのだと明らかにする。

『エロスは、よいものを永遠に自分のものにすることを求めているのだと』

そして、エロスの働きとはどのようなものかディオティマから語らせる。

『ならば、わたしがおまえに教えてやろう』と彼女は言った。『その働きとは美しいものの中で、子をなすことなのだ。これは、体の場合であっても、心の場合であっても、同様にいえることだ。

愛によって子をなす。これは、ネットワークの働きに魅了されていたころにたどり着いた本質の考察と全く同じだ。生きているネットワークがなぜべき分布を示すのか?それは、「子をなす」行為と、死滅していく動的な状態だからだと私は考えた。ネットワークが生きているのは、エロスの神の働きなのだといまさらながら理解した。

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もっと切実に、人間として「子をなす」ことが本質であるというこれまでの人生で何度か実感している。

そして、人は「子」をなす。

生物的な子でなくとも、社会というネットワークの再生産にかかわる仕事をする。それが、自己実現なのだ。自己実現とは、どこかで見つけるものではなく、子をなすように自分で創り上げるものなのだ。

マズローの欲求五段階説をネットワークから考える - HPO機密日誌

ブログ上で確認できる一番古い直感のタイミングはここ。

攻殻機動隊」と「負け犬の遠吠え」を書いてはじめてなぜ自分が子をなすことに深い意味を感じていたかを初めて理解した。「十月十日」も「迷い」という種をかかえつづけたわではないが、これもひとつの出産だったのかもしれない。

ぼくたちは本当に負け犬なのか?: HPO:個人的な意見 ココログ版

おっと、これもまたブログを書き続けているメリットだが、まったく同じところを以前このブログで書いていることを発見した。

まことに、その(愛と呼ばれるうる)行為とは、美しいものにおいて−−−精神の面でも肉体の面でも−−−美しいものにおいて、子を産むことです。

6つの愛と呼ばれうる行為 - HPO機密日誌

高校の英語の先生、「辞書を引いたら必ず印を残しなさい。何回引いたかわかるようにしなさい。同じ単語を何度も引いていることに気づくだろう。自分がどれだけ忘れか知ることが学び続けることにつながる」と。ああ、いかに自分が進歩していないかを実感する。「ブログ」という形態が私にとって自分がどれだけ忘れやすいかを明示する「辞書の印」なのだな。