HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

アフターコロナ

不謹慎の極みといわれるだろうが、今回の新型コロナウイルスに関わる世界的な危機が去ったあとを想像することはとても大事なことであると考える。クルーグマン教授は既に経済政策について明言している。政府が継続的な公共投資を、人々を安心させるためだけのためでも行うべきだと。

以下、あくまで私個人の思いつきレベルなのでいろいろなバイアスが入っていること、ごく狭いスコープであることは予め断っておく。コロナショックとでも言うべき事態がどれくらいの期間続くか皆目わからないが、終息してからの10年程度、技術レベルは現在とあまり変わらないという前提で考える。

短期的にはナウシカの清浄な地を求めて大海嘯そのものよりも多くの人が争って死んだという予言が実現しかねない。それでも、様々な方のCovid19に対する対応を拝見して人間の理性を心から信頼したいと改めて想った。コロナウィルスそのものでは人類は死滅しない。しかし、医療リソースから食料までパニックが起これば人類の絶滅のリスクは高まる。「復活の日」で「世界は二度滅亡する」のは小松左京が人間の狂気の面を描きたかった、描かざるを得なかったのだ。

なにはともあれ、人類が生き残れば世界人口の分布はかなり変わった形となると誰でも考える。いうまでもなく人口論における大きな問題は高齢者の問題だ。これまで日本における「高齢者」の重さをシュミレーションしてきた。

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日本において数万人以上の高齢者がなくなったとする。便宜的に七十代以上の何パーセントかだ。高齢者問題に詳しい人に聞いたら「焼け石に水」なのだと。数千万人の高齢者の前では上記のような「捕食者」としての高齢者の地位は変わらない。従って、老人問題はアフターコロナでも解消されない。ということは、感染症の恐怖は引き続き存続しても、社会的な構造はあまり変わらない。

とはいえ、高齢者対応を含めて感染症予防に関して建築の在り方も大きく変わる。単純に考えれば、住宅、集合住宅において、室内を陽圧にする技術、HEPAフィルターなど、感染症予防の設備が一般になる。日本においても、たぶん多くの世界においても大家族から核家族、更に個別の住まいへとのトレンドがあるが、更に加速される。

さらに、住宅と関連して、リモートワーク、リモートラーニングは進まざるを得ない。私の職場ですらリモートワークをどう実現するかが真剣に検討され、実施されつつある。住宅の個室化、執務環境の整備と並んで、通勤、通学の形態も変わる。交通機関そのものがいままでとは違う需用に悩まされるのではないか?

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日本においても電車、バスの需用が減り、自動車の通勤の割合が増えるかも知れない。ただし、リモートワークで何割も通勤、通学が減った上での「割合」に過ぎない。もっと恐ろしいのは航空需要だろう。グローバル化が進み、世界的な観光が進んだ世界が、少なくとも短期的にはアフターコロナでは極端に猜疑心が先行し、国際的な商談、会議を含め、需用が激減しかねないのではないだろうか?仮にコロナウィルスへの特効薬が開発され世界に広く配布される体制ができても、中国の観光客、移民などから世界にウィルスが広がった記憶は忘れられない。

ということは、今後工業においては輸出入よりも国内生産の割合が増えるのではないだろうか?今回の騒動を経ても、国際的な製造の協調関係が維持されれば世界のグローバル化は大したものだと讃えるに値する。もしかすると後述する輸出入コストの増大により町工場が復活するかもしれない。農業もより自立的なものにならざるを得ないのは予想をまたない。日本人の主食は肉、小麦原料のものから、魚、米に再度回帰せざるを得ないのかもしれない。米を備蓄しておいて本当によかった。

資源の供給は人類が生きている限り止まらない。止まったら死ぬ。現在は需用減が予想され石油などの資源は下落しているが、今後世界的な輸送網が感染症の恐怖で停滞することを考えると、輸送費が増加するかもしれない。船舶における感染症の恐怖の記憶から船員の給与、事業に対する保険料等は相当程度高騰するだろう。先ほどは、航空需要の激減を予想したが、もしかすると船舶によるコンテナ輸送が航空輸送にある程度とって変わられるかもしれない。

無視できないのが娯楽のあり方だ。スポーツはかなり厳しくなるだろうが、来年にオリンピックがもし開催できたら喉元すぎればでまた徐々に需要は戻るのかもしれない。その他の娯楽もますますユーチューバー化や、投げ銭システムなどに代わっていくのだろう。この意味で、eスポーツには注目している。更に飲食業の形も変わらざるを得ないだろう。記述の通り、感染症に配慮した店舗が選択される。性的な要素を含むサービスはかなり壊滅的になるのではないだろうか?それとも、サービス提供者側も提供される側も全員がコロナフリーの証明書が必携になるのだろうか?

これらを考えると、結果として不動産価格が大きく変わるだろう。これまで大都市に地価の最高値が集中していた。

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この傾向は大きくは変わらないまでも、大都市に向けての地価カーブはぐっとゆるやかに変わる。都市生活がいかに感染症に脆弱であるかがあまりに明確になった。前述の通りリモートワーク化の影響は大きい。更に輸出入拠点が変化することが考えられるが、実際には船、航空機しか日本には輸出入の手段がないの総需要があまり変わらないのなら、結果的には需要構造、地価も変わらないかもしれない。クルーグマン教授は農業生産と居住の利便性から地価のカーブが予想できると「自己組織化の経済学」で描いていらした。まさにこのパラメーターが変わるのだろう。

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正直、書き始めた時はかなり大きなインパクととなるだろうという結論で書き始めたのだが、一通り思考実験してみると人類の数も、日本国民の数もそうそう変わるわけではないので、少なくとも日本はあまり変わらないかもしれないと思えてきた。ナウシカの描く暴力の問題とプライバシーの問題はエントリーを改めて考えたい。

courrier.jp


■追記

アフターコロナは住宅の形も変わるのだろうと。



■追記 その2 2020/5/27

アフターコロナ成立の条件を改めて考えた。


■追記 換気回数

Twitterで流れてきた。納得性は高い。

<改訂5/31>
1時間当たりの換気回数。

飛行機:20~
焼肉店:16.5 (焼肉ライク22.5)
丸亀製麵:12
手術室・陰圧室:10~
新幹線:7.5~10
パチンコ店:7.5
国会:7
一般病棟:~6 (某病院2)
事務所:~6
居間:~3
一般飲食店:2.5
クルーズ船:~0.3~

https://twitter.com/AirborneKanki/status/1266887737895825409