HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「満州暴走 隠された構造」読了

大変、共感を持ちながら本書を読んだ。安冨先生とは年が確か1つしか違わないので、興味の対象も似てくるらしい。

本書は、深尾葉子氏との共著、「『満洲』の成立 -森林の消尽と近代空間の形成-」に基づいている。タイトルの通り、大森林であった「満州」がいかに「近代化」され、荒野となっていたったかの歴史が背景として語れる。ここには、もちろん日本の関与が大きい。

「満洲」の成立 -森林の消尽と近代空間の形成-

このメカニズム、「隠された構造」を説明するために、「縁起」という考え方が用いられている。本書の随所に線形、非線形の現象の問題、そして、縁起の問題が出てくる。これは、因果の間に縁があるという発想だと信じる。いうまでもなく、私は仏教にも、非線形科学にも大変興味を持っている。

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「森林の消尽」のメカニズムを説明するために、安冨先生は満州華北の市場ネットワーク分析もされている。満州は、清の支配者、満州族の故地であるため入植などを禁じられていた。そこが清の崩壊と、満鉄のネットワーク化、そして、森林の後に作られた大豆が国際商品化したことにより、一気に満州商流の「ネットワーク化」が進んだために、ハブが明確で単純な構造となった。ところが、満州に隣接する華北にはそれならりの迫害の歴史があるため、インターネットがそうであるように、部分的に閉鎖されたり、滅ぼされたりしても、稼働するようになっている。この違いが、満州国設立を容易にし、逆に華北以下の日中戦争が泥沼化したのだと。まさに社会的ネットワーク分析だ。

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そして、満州の歴史と戦争の話しは切っても切れない。本書は、安冨先生と戦争論と言ってもいいほど、戦争の形態、太平洋戦争の因果について論じられている。まずは、総力戦。なんといっても私の愛読書「未完のファシズム」。この本は、「満州暴走」の参考文献にも上げられている。

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それから、石原完爾の「最終戦争論」。そして、石原の思惑通りにならなかった戦前の陸軍。「ポジティブフィードバック」、雪まろげの代表的人物として本書の中で扱われている。二次元から三次元の戦争という航空機優位の予言、最終決戦兵器という核兵器の予言など、これだけ聡明な人物でも自分の考えだけでは意思を達成することはできない。石原完爾についてはずいぶん読んだ。

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留用、戦後の中国の有様については語る言葉もないほどの悲惨さであったと。

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戦後の米国による日本の支配は、痛いほど感じている。

img_0 http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/kiti/kuiki/kuiki.htm
羽田空港、というか東京自体が西側を横田空域、つまりは首都圏を航空管制を米軍に握られてたまま戦後は推移している。以下に述べるように、徐々に返還はすすんでいるもののいまのところ完全返還は戦後何年たっても難しい。

成田空港と同い年の私にもうひとこと言わせてくれ - HPO機密日誌


ここまで興味の範囲が一致しているのに、最後の結論は正反対。私は、ここまでの歴史と社会構造の変遷を学んだ上で、日本がいまだに米国の支配下にあるからこそ安倍首相を応援したいと想っている。逆に安冨先生は、だからこそ、安倍首相倒すべきだと。

*1:H29/4/26現在、ネットワーク図へのリンクが切れている。近々張り直す予定。多分・・・。