HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「これくらいはいいだろう」が原理原則を滅ぼす

満州の暴走」で安冨先生は、満州という欺瞞の構造がいまの日本にも生きていると主張しておられる。そもそも満州国は石原完爾のが総力戦を戦うために「これくらはいいだろう」と起こした軍紀違反の柳条湖事件がきっかけで生まれた。総力戦を戦えない日本への憂国の動機であっても、軍紀違反を犯したあげく、結果オーライで満州全体を日本軍が占領し、傀儡国まで成立させてしまった。この「これくらいはいいだろう」と越えてはいけない一線をどんどん踏み出してしまう日本の体質は、確かに安冨先生のご指摘の通り国の敗戦までつながっていく構造的傾向だ。

石原完爾の「最終戦争論」。そして、石原の思惑通りにならなかった戦前の陸軍。「ポジティブフィードバック」、雪まろげの代表的人物として本書の中で扱われている。二次元から三次元の戦争という航空機優位の予言、最終決戦兵器という核兵器の予言など、これだけ聡明な人物でも自分の考えだけでは意思を達成することはできない。石原完爾についてはずいぶん読んだ。

「満州暴走 隠された構造」読了 - HPO機密日誌

とある方とお話しした。その方は東芝の問題を大変憂えていらした。サラリーマン社会では倫理を踏み越えてでも成績をあげた人間、ライバルを叩きつぶしてでも出世する人間がどうしてもトップリーダーになってしまいがちだと教えて下さった。このメカニズムも、内部構造の変化という安冨先生の「貨幣の複雑性」の問題にもつながるのだが、いまはそれは置く。問題なのは、こうした人物はどこにいっても同じ行動を繰り返すことだ。そして、リーダーが一線を踏み越えても、「これくらいはいいだろう」行動をすると部下達がいっせいにその拡大再生産をしてしまう。まさに、現在の東芝には満州で示された日本の悪しき傾向が生きている。

 日本郵政は豪州の物流会社トール・ホールディングの資産を洗い直し、4003億円の損失(減損処理)を明らかにした。鳴り物入りの「戦略的買収」は、わずか2年で財務を揺るがす「お荷物」と化し、日本郵政の2017年3月期決算は赤字に転落する。

 「疑惑の買収」を主導したのは当時社長だった西室泰三氏。東芝を泥沼に引き込んだ米国の原発メーカー・ウエスティングハウス(WH)の買収を画策した人物だ。

日本郵政4000億損失、元凶はまたも元東芝・西室泰三氏 (ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース

たぶん、「これくらいはいいだろう」とフィージビリティが不足していても、被買収企業の先行きが不安であっても、企業買収をして成功した事例が東芝、郵政の中心的な人物にあったのではないだろうか?石原完爾と同じ構造だ。石原完爾はまだ、他に対して抑制する言動をその後していたが、東芝内部にはそれすらないのだろう。

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日本に原理原則に則った経営、組織運営が根付かないのは「これくらいはいいだろう」、「結果がよければ過程は問わない」といった現世利益優先の姿勢があるからではないだろうか?また、なぜか日本は偉い人達に対して甘い。本来、組織運営を果たすためには偉い人ほど厳しく罰せられるべき。現代の中国が強いのは、偉かろうか、平民だろうが、強くなければ、間違いがあれば、確実に粛正されるから。これもまた別に論じたい。安冨先生が「立場主義」と揶揄されていたが、日本は過去に甘く、偉い人に甘く、他人の立場に甘い。

先の方は、これからの未来の戦略物資であるメモリー技術を海外に売り渡すことは日本の国益の中核に関わること。まして、原子力の技術もこれで終わってしまいかねない。東芝の経営の核心に海外の投資銀行の影が見え隠れしているという噂もある。東芝の危機は国の危機だと捉えて、革新機構などの政府機関の出動を含め機動的に行うべきだ。当然、「戦犯」の懲罰、社風の徹底革新が前提となる。JALの再生が参考になるに違いない。

新生JALとして掲げた企業理念の冒頭に「全社員の物心両面の幸福を追求する」とあります。これは「お客さまに最高のサービスを提供」するのも、「企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献」するのも、全てはJALグループに集う社員一人ひとりの懸命な努力の結集があればこそ実現できることであり、社員が一生懸命努力するためには、心の底から「JALで働いていて良かった」・「JALの一員として頑張ろう」と思うことが大切であるという考えがあるからです。
また、物心両面の幸福とは、経済的な安定や豊かさに加えて、仕事に対する誇り、働きがい、生きがいといった人間の心の豊かさを求めていくことで、素晴らしい人生を送るとともに、心をひとつにして一致団結し、お客さまに最高のサービスを提供できるよう、必死の努力をしていかなければならないという、思いを込めております。

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