公私ともにCovid19、SARS-CoV-2の影響を受けているので、ほぼ常にツイッターで情報を追うことがこの二ヶ月あまり日常になっている。いくつも学ばせていただいている。しかし、今日はかなりのインパクトを感じた。
生存者のSARS-CoV-2排泄期間の中央値20日 (IQR 17·0–24·0) 。最長37日間。
— Fumie Sakamoto,MPH,CIC 坂本史衣 (@SakamotoFumie) 2020年3月13日
症状改善後の2回陽性確認まで急性期病院に隔離する現医療体制は早く見直したほうが良い。https://t.co/UYzZGYZLYe
これまでの報道等では、潜伏期間の中央値が10日程度で、症状が全快し、PCR検査等で陰性になればそれ以上は感染は拡大しないと一般には言われていた。当然、診察、入院しないで無症状で全快する方も、それ以上は感染を広げないだろうというのが前提だった。
最新論文から明らかになってきた新型コロナウイルス感染症の特徴(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース
ただし、無症状での感染拡大や、検査で陰性であっても感染が認められたかもしれないとは言われていた。それが、Lancet掲載の論文で中央値20日、最大37日間感染力が続くというのは大きな感染予測の変更を余儀なくされるのではないだろうか?
Median duration of viral shedding was 20·0 days (IQR 17·0–24·0) in survivors, but SARS-CoV-2 was detectable until death in non-survivors. The longest observed duration of viral shedding in survivors was 37 days.
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30566-3/fulltext
以前、SEIRモデルのエントリーを拝見し、スプレッドシートでざっと作ってみた。モデルというのはやった人はわかるがパラメーターの与え方でどうとでも結果は導ける。それでも、感染可能な期間の長短により感染者数が大きく変わるのは明らか。要は隔離しかないという話しになる。
感染モデル :基本再生産数 - HPO機密日誌
このモデルを少し改良し、感染者数の減少がいかに起こるかをいくつかスタディーした。その上で、安倍首相の学校休校、自粛要請は大きな決断であり、潜伏期間、感染可能な期間が10日程度であれば20日程度で感染者数の増加は収まるのではないかと考えていた。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1dUBiZ9hes9XODbrED8Z46idc_Q8u89G6M3TVNd1qCXA/edit?usp=sharing
しかし、感染可能期間が症状が収まったり、退院した後も続くのだとすると収束しない計算になる。若干パラメーターをいじってあるが、感染可能日数が10日ではなく20日にすると、2月8日に16人であった感染者が3月13日辺りに500人を越すというカーブになった。統計的な検証はしていないが、ほぼ同じカーブが描けている
*2つのグラフの横軸の一番右側で33日目、3月13日想定。
私は検査を限定的にすべきだという論者だったが、感染可能な期間が長くなるのだとすると場合によっては検査のやり方等を検討すべきだはないかという考えに傾く。驚くことに韓国はかなりの犠牲を払いながら、終息に向かっているように見える。
https://www.worldometers.info/coronavirus/country/south-korea/
私の素人考えの多くは間違っているのはよく理解しているが、本当に「未知」であるがために世界が恐れおののいているので、covid19ウィルスがどのような性質を持ち、どのように感染していくのか、感染力はどのような条件で維持されるのか、早く明確になってほしい。
■追記
坂本先生から私の素人質問にお答えをいただいた。本当に感謝申し上げたい。
想定より長いということはなく、どちらかというと想定されていたことの裏付けだと思いますよ。
— Fumie Sakamoto,MPH,CIC 坂本史衣 (@SakamotoFumie) 2020年3月14日
全ての人が長期排泄するわけではないし、症状がない人が症状のある人と同等の感染力があるというわけでもないです。
結論から言えば想定の範囲内だと。
はてなを見ていたら、ピークカット戦略についての批判的なエントリーが上がっていた。最大の死亡者は88.2万人だとある。
冷静に考えてみれば、厚労省の有識者会議が想定している死亡者ははるかに多い。
「猛威をふるう『ウィルス・感染症』にどう立ち向かうのか」(個人的メモ) - HPO機密日誌一昨年の出版。最新の事例が書かれている。そして、現下の事態が最悪のケースに繋がりかねないと言う恐ろしさも。これは本当に最悪のケースとして書かれていることは忘れてはならない。 pic.twitter.com/YC1KRyJRCT
— ひでき (@hidekih) 2020年2月17日
夕方の安倍首相の発表で検査の能力も大幅に高めていくとおっしゃっていた。ここから先は国民のかなりの数が感染するまでこの戦いは続くのだろう。イギリスと日本が先のエントリーの言葉で言えば「集団免疫」戦略を選択しているのは、両方とも島国であることが大きい。大陸、半島では同じ戦略は取れないからこそ一度に大きな犠牲者を出してでも封じ込めをするのだと。この戦いは長く続く。ひとつも嬉しくない。