id:fromdusktildawnさん100%非公認だが、勝手連でふろむだ本理解の参考となりそうな本の紹介をしたい。ふろむだ本を当然読了している方向け。いや、こんなマイナーブログは読む人いないので自分のためか・・・。ふろむだ本には、すでに社会心理学系、行動経済学系統の本は十分に参考図書として挙げられている。しかし、なぜ「錯覚資産」が人類にとって必然なのかはあまり語られていないように思う。ここでは、もうちょっと「錯覚資産」に至る歴史的背景に関する本を紹介したい。発端は、このツイットに書いた気づき。
マット・リドレー、リヴァル・ノア、ふろむださんなど、同時多発的に人類とは分裂勘違いでできてることを立証する人物が現れている。 https://t.co/GEHyQUPB7u / “『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で…” https://t.co/tq7Gk1URJE
— ひでき (@hidekih) 2018年8月9日
- 作者: ふろむだ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/08/09
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最近話題になったところでは、ハラリの「サピエンス全史」が人類の文化そのものが「妄想」であることを明らかにした。しかも、べき乗則的偶然性に支配された「妄想の歴史」であると。そもそも、宗教そのものも巨大な「錯覚資産」にほかならない。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/16
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もう少し古典的なところで、かつ日本人にとって親しいのは吉本隆明の「共同幻想」。「遠野物語」などを使い、具体的に個人的な「錯覚資産」が国家という巨大な「幻想」に至る過程を語っている。昔の日本の語り口なので現代の我々から見ればシステマティックとは言えないが、実に「錯覚資産」の成り立ちの本質を明確にしている。
禁制論
共同幻想論 - Wikipedia
個人がいだいている「禁制(タブー)」の起源は、じぶん自身にたいして明瞭になっていない意識からやってくる。〈黙契〉では、人は共同体の中で怖れや崇拝を対象にした時に、その人の意識が共同体から赦(ゆる)されてなれ合っている。それに対して〈禁制〉では、人はどんなに共同体の内部にあるようにみえても、神聖を強要され、その人は共同性から全く赦(ゆる)されていない。吉本はわたしたちの思想の土壌では、〈黙契〉と〈禁制〉とはほとんど区別できていないとし、『遠野物語』の「山人譚」はこの2つが混融された資料であると述べている。そこに描かれた山人にたいする村落共同体の〈恐怖の共同性〉からは、1.判断力の低下による起きていながらの〈入眠幻覚〉と、2.村落共同体から離れたものは、恐ろしい目に合い不幸になるという〈出離〉の心の体験を、抽出することが出来るという。吉本は〈禁制〉が生み出される条件は、〈入眠幻覚〉と、〈出離〉の心の体験を生み出す弱小な生活圏(村落共同体)の2つであり、現実と理念との区別が失われた心の状態でたやすく「共同的な禁制」を生み出すことが出来るとし、その生み手は貧弱な共同社会そのものであるとした。
- 作者: 吉本隆明
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
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意識されない「錯覚資産」としての共同体内の「禁制」こそ個人の集まりをして共同体たらしめていると。では、こうした「錯覚資産」はどうして生まれてくるのか?一つは「性」の問題につながると私は考えている。
マット・リドレーは性の多様な形の探求を通して、最終的に性は人間による人間自身の家畜化の手段であったと結論づけているように思う。
「赤の女王」が人類を自己家畜化 - HPO機密日誌
赤の女王 性とヒトの進化 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マット・リドレー,長谷川眞理子
- 出版社/メーカー: 早川書房
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進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マットリドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之,吉田三知世
- 出版社/メーカー: 早川書房
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人類は、マット・リドレーを待つまでもなく、吉本隆明も指摘するように「性」に関する禁忌が存在の基本にある。人類は、性に関する禁忌を定めることを起点として「社会」という「柵」を自ら作り、自らその中で「家畜化」された。逆に言えば、野生の動物には幻想もなければ、錯覚資産もない。「社会」という錯覚資産の集合体という家畜小屋に私達は住んでいるのだ。「性」から離れてしまえば、死滅するしかない私達は、「錯覚資産」の内側でしか生きていけない家畜なのだ。そう、英語で言えば家畜とは「livestock」、「生きている資産」なのだから。
「家畜」は言いすぎだと言う方には、「錯覚資産」とはネットワーク効果であることを指摘しておきたい。
これめちゃ面白い。ふろむださんの本の裏側のメカニズムだとも言える。https://t.co/FLEuZHnSJ4
— ひでき (@hidekih) 2018年8月13日
共同体の中でいきるしかない人間は、個々人のネットワークの形によって大きくその判断を変える。「人は人が欲しがるものを欲しがる」のだ。ふろむだ本にたくさんの例が示されているように、合理的(アルゴリズム)に志向すれば正解にいたることが可能な状況でも、周囲(ネットワーク)からの影響によりあやまった判断をくだす。この恐ろしさは、↑の大変すぐれたネットワーク論解説の副題にあるように「群衆の英知もしくは狂気」につながるのだ。これもまた錯覚資産であることは、現代においても大虐殺が繰り返されていることがなによりの証左だと私は思う。
人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動
- 作者: マークブキャナン,Mark Buchanan,阪本芳久
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歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: マーク・ブキャナン,Mark Buchanan,水谷淳
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しかし、こうした考え方はふろむださん自身がそうであるように、使い方によって明るい未来は開ける。ちなみに、ハラリにしろ、リドレーにしろ、公文先生が指摘するように幻想、妄想、禁忌によって家畜化された人類でもあっても、最終的には合理的楽観主義に至っている。ここにふろむだ本の大切さがある。「錯覚資産」をいかに自覚的に使うかどうかは、ビジネスマンとして成功できるか否かだけではなく、大虐殺、大戦争、大不況のディストピアに至るのではなく、明るい人類の未来をいかに作っていくかという問題につながる。
ハラリによれば、人類は、20世紀に、これまで人類を悩ませてきた三つの業苦、飢餓、疫病、戦争を基本的に克服した。そこで21世紀の主要な課題は、不老(不死)と幸福の追求ということになる。
— Shumpei Kumon (@kshumpei) 2017年4月17日
S.ブランド、M.リドレー、S.ジョンソンらに続く、もう一人の「合理的楽観主義者」の出現だ。
現在、「ブラック・スワン」で有名になったタレブの「反脆弱性」を読んでいる。この中で、膝をうちたくなった訳語があった。
「反脆弱性」で「経験則(ヒューリスティック)」とあった。ヒューリスティックを認知心理学のテキストで知って以来三十年、初めて適切な日本語訳だと思った。アルゴリズムの適切な日本語訳とはなんだろう?
— ひでき (@hidekih) 2018年8月21日
「反脆弱性」において、ヒューリスティック、表面的な一貫性、自分の内心の合理性を優先するがために、多くの(資産ですらない)「錯覚」を生み、自分の記憶すらも書き換えてしまうかが、現在の「頑健さ」のみを求め、過剰な情報保護や、過保護な法体系に至ってしまったのかが書かれている。そして、まさにふろむだ本にかかれているような「錯覚資産」という人類に固有な性質を逆にいかし、頑健ではなく、脆弱でもなく、「反脆弱」(antifragile)な生き方を選ぶかが書かれている・・・、はず。まだ読み始めなので、読みながらここについては考えていきたい。
- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生
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