HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「あなたは完璧だと思ってた」 :錯覚資産が崩れる時

私のようなものが「書評」まがないことをしているとベストセラー作家まっしぐらのふろむださん*1の足をひっぱってしまうことを恐れるが、もうひとつだけ書きたい「お題」がある。

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以前、結婚していた。そして、離婚した。その遠因をたどれば、たぶん結婚式をめぐるごたごたの中で吐かれたこの一言につきる。

「あなたは完璧だと思ってた」

自分で言うと全く説得力がないが、そこそこの大学を出て、そこそこの会社にはいり、そこそこ人当たりもよく、そこそこ金払いもよい若き私はまあそこそこの「錯覚資産」をすでに築いていた。社会人になってまもなくおつきあいを始めて、そこそこ幸せな思いをし、そこそこのデートもし、そこそこのお泊りもし、そこそこの彼女に対する「錯覚資産」を育ていることに成功した。で、結婚しようということになり、家族を巻き込んで手続が始まると、失敗と失望の連続。自分がいかに幼いか、彼女との「実質資産」が築けていなかったが露呈してしまう。そこで、前述の彼女の言葉に至る。

それでも、なんとか結婚式をあげ、子供にも恵まれ、ン十年の結婚生活を維持することには成功した。しかし、二度と交際期間中のような「完璧な錯覚資産」を彼女との間で再取得することはできなかった。「錯覚資産」とは一般には「信頼」といっていいのかもしれない。この信頼は、築くのには相当な覚悟と普段の努力と磨きあげた資質と馬の目をぬく要領が必要なのだが、失うのは一瞬だ。繰り返すが、失ったら二度と取り戻せない。そして、相手方の「資産を失った」という失望感がいかに大きかったかは、このブログで愚痴っている私の結婚生活をめぐるエントリーを検索しても読めばわかる。

それこそ、「結婚生活など錯覚資産にすぎない。どうとても、操作可能だ」とふろむださんはおっしゃるかもしれない。私にはふろむださんのような覚悟も、努力も、資質も、要領もない。まあ、資産を失った人間なら失った人間らしい地味な人生を送ろうと、離婚したかなり時間が経ち、賞味期限も切れようとしている私は考えている。

*1:もう一冊ストックオプションについて「ふろむだ」名義の本を発見。たぶん、今後技術本はご本名、ビジネス本はふろむだ名で出されるのだろう。  www.amazon.co.jp