HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

革命ですらなかった農地の資産化

人を失望させるにもほどがある。

農協の大罪 (宝島社新書)

農協の大罪 (宝島社新書)

眠いのではしょるが、ようはぐだぐだの政策のあやまりによって「農地転用の巨額キャピタルゲイン」が生じたのだと。理念もへったくれも、戦前の皇道派将校と若手官僚の理想の実現もなにもなかった。なしくずしであったと。

「農協の大罪」で元農林官僚の山下一仁さんは、60年に制定された農業基本法の理念に基づき、零細農家から規模を拡大して「自立経営農家」を目指すはずが、さまざまな理由により破綻してしまっていることを指摘した上で、こう書いている。

不思議なことに、農地法は小作料(地代)は統制したが、農地価格(地価)は統制しなかった。農業の振興よりも、農家の資産増加を優先させてきたといわれてもしかたない。農地を農地として利用するからこそ農地改革が実施されたのだが、農地法は農地を農地として利用する責務を確立しなかった。高米価政策とともに農地制度も、農地の流動化による規模拡大、それにともなう零細農業構造の克服を困難にしてしまったのである。

実際になんども農地法の申請をしたことがある。農振地区の指定をはずす場面にも何度もたちあった。手間と時間はかかるが確実にいずれも宅地化することができた。山下さんが指摘するように戦後の農地改革でただで手に入れた農地を宅地化して、利益を得て居るというのは、地方では日常に行われている。

日本の都市計画、土地政策は実は欧米の厳しい線引きと比較にならないほどゆるゆるだ。自由主義を展開していても、街並みや農地の保存には信じられないくらい厳格で変更をゆるさないのが、欧米の土地政策だ。農地が農地でなければならないこそ、「自立経営農家」の規模をフランスなどは、大規模化することに成功したのだと言う。

理念すら存在する余地がなかったことに改めて失望した。


■追記

「農地の資産化」が驚くべき金額に達していることも書かれていた。

毎年の農地転用売却益は、ピークの90年ころには7兆円に達し、現在でも2兆円程度はる。この莫大な資金が農協に預金された。農協への貯金総額は、83兆円にものぼる。

あまりに巨額で検討がつかない。トップクラスのハウスメーカーが農協に張り付いていたとも聞く。さもありなんと。