たまたま人から進められて映画「マネーショート(現代 The Big Short)」を見た。背景がわからないまま見ると、これは単に金融関係者が怒鳴り合っているだけのドラマに見えたのではないだろうか?映画の中で一番鍵となるCDSとCDO等の説明もほとんどなかった。ので、原作を読んだ。
https://www.netflix.com/watch/80075560?
ここのところ、読んでいる本をツイッターで固定表示にしておいて自分で途中途中でメモ代わりについっとして読み進むことを習慣としている。多くの本は、ブログ何本か分の分量のメモとなる。しかし、本書はあまりに面白くて4月9日に読み始めて昨日までなんのメモツイットもせずに読了してしまった。
映画、「マネー・ショート」を見て面白かったので原作を読み始めました。
— ひでき (@hidekih) 2022年4月9日
世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫) https://t.co/0B4qIwkrgz
2007年から2008年に至るいわゆるリーマン・ショックは私にとってリアルタイムの体験でもあり、曲がりなりにも米国でMBAをファイナンスメジャーで取得した私にとって本書は興味を持たざるを得ないテーマだった。93年から94年にかけてのコア・カリキュラムのファイナンス、経済学の授業で「派生商品」について教えてもらった。
「金融派生商品のほとんどは基本的には住宅モーゲージだ。モーゲージ販売業者は消費者にモーゲージを売る(貸し付ける)とそれをウォール街(の投資銀行等)に販売してしまう。ウォール街ではそれを元本、金利(エクイティ、メザニン)等に切り分けて金融業者等に販売する。チキン一羽そのものを売るより、部位別に分けて売るほうが利益が高いことと同じだ」
授業で習うまで金融派生商品とは、株式や国債をベースに開発されいるのだと信じ込んでいた。以前にも、本書の反対側に負けに負けまくった人々を描いた「ザ・クオンツ」は読んだ。この時に疑問に思ったことがあった。
07年夏以降のヘッジファンドの混乱は不可解な部分がある。いくらレバレッジをかけていたとはいえ、存在したことのあるお金の投資であれば手じまいをして、あらたなファンドの組成などにより再出発する方法はあったのではないかと思える。
「コール!」 - HPO機密日誌
「存在したことのあるお金の投資」ではなかったことが本書を読んでよくわかった。投資銀行などでも以前花形であった株式等から、債券から派生した取引に私が米国にいた90年代から2000年代前半までで完全にシフトしてしまっていたのだと。サブプライムローンの審査の甘さ、目先で儲かればよしとするモラルハザードによって過大な与信、派生商品が生まれていたのだと理解した。そこにはひとかけらの「存在したことのあるお金」もなかったのだと。
本書の大きな主張はそうしたモラルハザード、日常性バイアスによって大儲けさいた金融関係者が罰せられることもなく、収入だけは得た上で天文学的な政府からの支援(といことは納税者のポケットから)によって金融構造が生き延びたのだと。
まあ、私は昔もいまも無知でナイーブなのだと改めて思う。
ちなみに、高橋洋一さんが映画の解説で「金融において無知は罪」と明確におっしゃっている。とほほ。
ちなみに、ここで高橋さんがおっしゃっている「下がると100%帰ってくる保険」が本書の主題のCDS、Credit Default Swapであり、「安い保険料で引き受けた」がのAIGなどであったと明かされている。