わざわざネタバレうんぬんをいわなくとも、ほとんどの人はこの映画を見ているのだと思う。間接的に伝わる是枝監督の主張に共感できず積極的に見るつもりもなかったが、出張の飛行機で見てしまった。
これは恐ろしい映画だと思う。一番の主張は社会保障や、社会倫理からぬけおちてしまった人々がどうたくましく生きるかを描いた映画だと解されるのだろう。しかし、これは「1984年」につながる、子供はいかようにも育てられるのだという恐ろしさを結果的に示している。
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
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親から虐待されていれば、それが愛情表現なのだと受け止め、「親」が犯罪の常習犯であれば犯罪が当たり前になる。いや、「しょうた」が示したのはその倫理の限界ではないか、矛盾を感じたからではないかと言うかもしれないが、彼の倫理観は相当世間のそれとは外れている。偽名で生きざるをえず、住民票すらロクにとれない環境でも、子供は適応する。この子供の可塑性に恐ろしさを感じたのは私だけだろうか。映画の中のこととは言え、親のあるべき姿の責任を強く感じた。