HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

セックスは前段取り

某所で若い女性と話した。彼女曰く、「セックスってたくさんされると『この男は身体目当てなんだ』って思うし、少ないと『他に女がいるんだ』って思う。女にとってセックスは『男女が最高に分かり合える瞬間』ではない」のだそうだ。男と女は残酷なまで考えていることが違うという体験しかしてこなかった私は、せめてセックスの瞬間は男と女が最高に分かり合えているのだと信じて来た。幻想が打ち砕かれた瞬間であった。では、女性はどういう時に分かり合えたと感じるか聞いてみた。「やっぱり、大事にしてもらった時かな。私だけを愛しているんだって感じられる時。」なるほど。そうか、女性にセックスしてもいいと感じてもらえる前段取りが大事なのだと。

なんでこんな下世話な話しをしているかというと、マット・リドレー先生のお説そのものだから。リドレー先生によれば、マンモスが絶滅したのはセックスの前段取りのためなのだと。かの若い女性の明言は、実にその通りなのだと。

徳の起源―他人をおもいやる遺伝子

徳の起源―他人をおもいやる遺伝子

そもそも狩猟は人の集団にとって大して必要な「労働」ではなかった。人が元々生息していたアフリカなどの豊かな地域では、採集で十分であったらしい。実際、槍投げ機が発明されるまでマンモス狩りは命を賭けるにはあまりに危険であった。どう考えても、狩りにしたところで成功率や、獲物の数からいって、弓や、罠で小動物を捕まえた方が効率がいい。少なくとも自分の命を危険にさらすことはない。

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伝説の武器・マンモスキラー|川崎悟司 オフィシャルブログ 古世界の住人 Powered by Ameba

それでも、マンモスやら、鹿やら、場合によっては虎などの大型の動物に挑んだのは、リドレー先生曰く、集団の中でセックスをする機会を増やすためであったと。男が狩りをして、気前よく肉を集団の中で分けてやることは、その男の集団内での地位を向上させることなのだと。女をして、「この男とならセックスしてもいい」と思わせるからなのだと。だによって、マンモスは人間のセックスの前段取りのために人間に絶滅させられたと。あまりに哀れだ。

まだ読んでないけど、「赤の女王」にはこの辺の事情がもっと詳しく考察されているらしい。

赤の女王―性とヒトの進化 (翔泳選書)

赤の女王―性とヒトの進化 (翔泳選書)

ちなみに、それでも有史前の人間集団は、十万年あまり人間は大型動物と共存してきたじゃないかと、環境にやさしい生活をして来たじゃないかと言いたくなる。しかし、環境保護の思想を高く掲げていたと「高貴なる野人」仮説をいだくのは間違っているとリドレーは主張している。これはまた別のエントリーで論じたい。