HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「地価上昇税」

一昨年に寿司屋で知り合ったオーストラリアの都市計画の専門家とひさしぶりにあった。

今回はデベロッパーをやっていたというパートナーさんを連れて三人で会った。会話が一段と弾んだ。特にシドニーのオペラハウスの話題は盛り上がった。例の設計者が構造的裏付けがないままデザインを起こしてコンペに勝ってしまったのだが、予算が当初の10倍以上もかかったという話しだ。

ベネロン・ポイントにあった電車車庫は1958年に取り壊され、1959年3月にオペラハウスの着工式が行われた。建設計画は三段階からなっていた。第一段階では台壁の建設が、第二段階では建物を覆うコンクリート・シェル構造の建設が、第三段階では内装の工事が予定されていた。工費は350万オーストラリアドル(700万米ドル)、完成は1963年を予定していた。

(中略)

工事の第二段階(1963年−1967年)では、建物の外壁および屋根となるシェルの建設が始まった。コンクリート・シェルは当初の案では大小の放物線の形が連続する予定になっていたが、構造設計家のオヴ・アラップ(Ove Arup)率いるオヴ・アラップ・アンド・パートナーズ社(Ove Arup and partners)はあらゆる補強方法による放物線案を試した末、この案を実際に建設する解決策はないと結論付けた。

(中略)

こうしてオペラハウスは1973年に完成した。州政府による当初の完成予定日は1963年1月26日であったため、10年遅れの完成であった。また総工費は1億200万ドルに達し、当初予定の700万ドルの14倍以上になった。工費は宝くじ資金などにより1975年に完済された。

シドニー・オペラハウス - Wikipedia

ちなみに、お会いした都市計画家はここに出てくるオヴ・アラップ・アンド・パートナーズ社で当時働いていたらしい。政府の短期的な観点が完成を送らせ、設計者を追い込んだのだと憤慨していた。ロンドンからとはいえ、リアルタイムで見ていた人の話しだから説得力がある。

都市計画家さん 「政府が当時非常にナイーブ(未経験)だったことが問題だわ。いま何百万人の観光客がオペラハウスを見に来るか分かる?ナイーブな政府には、長い期間の視点がないのが問題よ。」

デベロッパーさん 「コストはいくらかけてもいいというものじゃない。やはり、どんなプロジェクトでも利益(profit)は欠かせない。プロジェクトが維持発展して行くためにも必要だ。」

私 「そうですよね、1年の会計的利益(fiscal year profit)は当然生き残って行くのに必要だし、10年の利益は街の発展から得られるし、30年は世代交代をいかに成功させるか。100年はよくわからないけど、100年ながーい目で見た利益ってありますよね。」

都市計画家さん 「そんな長い期間だと公共的利益(benefit)というのよね。そう、「べてーみんとれゔぃーたっくす」って知っている?」

私 「何ですかそれは?」

よくよく聞いたら「Betterment Levy Tax」だった。「帰ってネットで調べて見なさい」という言葉に従って調べてみた。まだよくわからないが「地価上昇税」のことらしい。街の生命力が100年続いたら、確かに地価は上昇するだろうし、その上昇した地価を街の発展のために再投資することは必要なことだろう。

いくつか論文のようなものが見つかった。あとで読むかもしれない。

それよか、ぜひ来い、来たら連れてってあげると言われたこのレストランの方がいまは気になる。