ドラッカーの「傍観者の時代」を読了した。フロイトや、ポラニー兄弟、あるいは、間接的にはヒットラーなど、20世紀を決定づけた人々との直接、間接のやりとりから、くっきりと20世紀の輪郭を際立たせた好著であった。

ドラッカー名著集12 傍観者の時代 (ドラッカー名著集 12)
- 作者: ピーター・F・ドラッカー,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/05/16
- メディア: 単行本
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最終章の、米国に渡ってからの大恐慌時代などのかきっぷりが、栗本慎一郎が「パンツをはいたサル」の冒頭に書いた戦後の日本の状況と私の中では重なった。

- 作者: 栗本慎一郎
- 出版社/メーカー: 現代書館
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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大恐慌の中でも、戦争で大空襲を受けたあとでも、無名の人たちの間に信頼と勢いがあったということだ。これからの日本は元気がなくなることばかりであろうが、それでも地域の信頼と、無名のひとたちを応援する心意気だけは持っていたいとつくづく想った。
逆に言えば、民主主義が産声をあげたヨーロッパであるにもかかわらず、20世紀に入ってからの「大悪」というものはどれだけ根が深かったか、背筋がさむい。
GMの企業年金生成から「労働者が社会的資本家」になる過程にあらためて感銘を受けた。スローンの「GMとともに」とドラッカーの「企業とはなにか」の差が、企業の責任と権限にあるとの指摘は、あらためてマネジメントの究極的な目的とはなんだるかを示している。ドラッカーのヨーロッパの暗闇を経験したあとの、マネジメントの発明を通して、社会的な正義を実現しようとした偉大な業績にただただ感動する。
その末席の末席に連なり、自分の責任と権限の範囲で、関わらせていただいている方々すべての幸せを実現することが、自分の使命であると、ドラッカーに背中を押されたようだ。