HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」のその後

何度読んでも名著だ。社長、組織のトップになる道が見事に描かれている。

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫

内容はもういろいろな方に語り尽くされている。

sasakitsuneo.jp

しいて言えば、今度改めて読んでみて、以前読んだ時には多角化M&Aのことについて書いてある部分にあまり注意が行っていなかった。企業グループを安定させるための多角化の企業戦略についてとても大事なメッセージがたくさん含まれている。

ただし、多少フィクショナルな部分があるのではないかと以前から思っていた。まずは、キングスレイ・ウォード氏の会社がどうなかった調べてみた。

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キングスレイ・ウォード氏

https://www.vrgcapital.com/bio.php?G.-Kingsley-Ward-1

1932年生まれということで一致する。

1932年カナダ生れ。会計事務所勤務の後、製薬関係を中心に企業経営の道に進む。そのユニークな最初の著書、『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』はミリオン・セラーとなった。姉妹編に『ビジネスマンの父より娘への25通の手紙』がある。

キングスレイ・ウォード | 著者プロフィール | 新潮社

このVRGキャピタルは、現在も営々と経営されているように見える。素晴らしいとしか言いようがない。

www.vrgcapital.com

ただし、年齢があわない。佐々木氏はこう書いていらっしゃる。

キングスレイ・ウォードは化学事業を興し成功した人だが、ビジネスマンとしての働き盛りのときに2度にわたる心臓の大手術を受け、死に直面した彼は、生きているうちに自分の様々な経験を息子に伝えたいと切実に願うようになり、息子が17歳のときから20年にわたり30通の手紙を書いた。

本書の原著の出版は1985年だと思われる。

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ビジネスマンの父より息子への30通の手紙

ということは、1932年生まれのキングスレイ・ウォード氏は、当時53歳。息子さんの年齢から逆に計算すると1985 - 20 -17 - 1932 = 16歳で父親になったということになりあまりに早い。なおかつ本書のオリジナルはそこから数年以上前にかかれていたはず。つまり、年齢の設定と、書き終えたタイミングについて多少フィクショナルな部分を含むように思える。息子氏は1948年の生まれとなるので、現在71歳となるが、調べてみるとたぶん50代半ば。1960年代半ばの生まれのはず。

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J.R. Kngsley Ward

逆に言えば、1985年マイナスアルファ時点ではまだ17歳だったのではないだろうか?心臓の手術により命の危険を感じたキングスレイ・ウォード氏は、一気に30通の手紙を書いたのではないだろうか。20年に渡って書かれたにしては文体が一貫しすぎているとは以前から思っていた。四半世紀ぶりに謎がとけて嬉しい。つまりは本書は実は半自伝的な書物ではないだろうか?若き日の自分に宛てた手紙なのだと。だからこそ、現在の会社のホームページに一言も本書に関する記述がないのだと。

この事実は、しかし、本書のビジネス書、人生物語としての価値を下げるものでは一切ない。更に言えば、「息子」のJ.R.キングスレイ・ウォード氏はいまも営々とビジネスマンをされていることは、もう本当に素晴らしいとしか言いようがない。

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