HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

誰にも保証なんてできない

今回の金融情勢の異常さは、実は安心、安全を求めたがために起こった。

CDSの話は背筋があまりに寒い。今回の事態の推移をみると、その内容はとてもデフォルトが起こったときのための「保険」であったとは思えない。

想定元本の推移
* 2001年6月末 6315億$
* 2001年末 9189億$
* 2002年末 2.2兆$
* 2003年末 3.8兆$
* 2004年末 8.4兆$
* 2005年末 17.1兆$
* 2006年末 34.5兆$
* 2007年6月末 45.5兆$
* 2007年末 62.2兆$[1]
* 2008年6月末 54兆$ 史上初の減少

クレジット・デフォルト・スワップ - Wikipedia

5000兆円なんて想像も及ばない金額だ。誰がそれだけの金額を保証できると考えたのだろうか?たぶん、100の住宅ローンを集めて一つの金融商品、その金融商品をあつめてファンドファンドを集めたファンドという具合にピラミッドを積み上げるように、次から次へと保証残高を積み上げていった総体がこの数字なのだろう。

支払えないときの保証であるわけなので、連鎖的に積み増ししなければならないことは想像に難くない。逆に言えば、礎石の住宅ローンの債務者が集団でこけた時には、この保証のピラミッドはがらがらと音をたてて崩れていく。

伝統的には、ローンが焦げ付いた(デフォルト)の時の保証をするのは、Fannie MaeやFreddie Macの専門分野であり、これらの会社が連邦政府支配下の会社のような顔をしているので、安心して各銀行はローンを組むことができた。少なくとも10数年前に米国にいたときはそうだった。

ファイナンスの授業で習ったのは、これらの保証が付いているのでローンをさまざまに切り分けるなどして、派生商品を作って売ることができるのだということだ。つまりは、高度な金融工学といえども連邦政府の暗黙の保証があるという前提で初めて商品設計を行い、売ることができた。契約を履行することの保証を人に預けているわけだ。

いつからこうした保証をAIGなどの会社がおこなうようになったのか知らないが、まさに自殺行為であったといえる。

あまりの金融変動が激しいために、あまりニュースになっていないが日本でも賃貸の保証会社が破たんした。J-REITのニューシティーが破たんした一因でもあった。

さすがにここに転載することはできないが、各ファンドに対するリプラスによって生じた保証の損失のリストがある。結構な金額だ。

各金融機関、各事業社、各REITも、他人に安心を求めた。それは、過去の市場の動きや経済変動で非常な苦労をしてきたために、安心安全がいかに大切かを想い知り、システム的にどうその苦労を回避するかの工夫の蓄積であったのだろう。しかし、その熱烈な努力の結果が今回の混乱であるように思えてならない。危機はブラックスワンとして、べき乗則的に現れるのだから。

責任を取るとは、やはり自分自身で行うしかないのだと改めて覚悟をした。

■池田先生に聞いてみよう!

どうもこの辺のCDSの残高の問題と、不良債権の処理に必要な金額との間の懸隔が理解できません!池田先生ぜひ教えてください。

■それにしても

「ブラッディマンディ」なんでタイムリーな名前のドラマだこと。それにしても「日本以外全部沈没」なんて筒井康隆な世界を生きているうちに見るとは思わなかった。

書き落としたけど外資に頼って資金調達、資本政策してきた会社っていきなりFAX一枚でシャットダウンなんてケースも出て来ているらしい。

混乱は続くし、淘汰もすすむのだろうが、やはり日本が周回遅れもいいところでトップに立っている状況を生かすべきだ。

■ということは

この数日いろいろなブログなどを拝見して、対策はきちんと明確になっているのだな、なぜAIGを救って、リーマンを救わなかったのかとか理由があるのだなとわかった。

CDSは対象企業が破たんしなければ発動しないため、このまま市場が安定化に向かえば「80兆ドル」は「支払わねばならなかったかもしれないね」で終わる可能性もある。

日本企業のCDS値を見ながらCDSについて考えてみる - ガベージニュース(旧:過去ログ版)

この方もおっしゃっているように、これから信頼を失い倒産のあらしになれば8000兆円のCDS契約の残高がそのまま負債となり、不良債権になるかもしれない。ちなみに、いま起こっているのはどちらかというと国レベルでの信頼感だと思うので、ここの企業のCDS統計を見てどうのというのはあまり意味がないように思う。空売り、プット売り(でしたっけ?id:swmemoさん?)するとかでないかぎりはね。

当たり前のことだがCDSは低いほうが経済社会全体にとって望ましい。ところがCDSが実需を離れて投機的に売買されたり投信に組み込まれたりすると、CDSの買い手はCDS価格が上昇すればするほど、つまり破産リスクが大きくなればなるほど利益が出る、ということになる。

CDSとCO2排出権取引: An Investor's Eye

ということで、ここにつながる。個々人の利益を考えれば、下がっても設ける方法がいま現にある。数日前、私のところに投資顧問会社から電話があり、「市場がこんなでもパフォーマンスをあげているヘッジファンドがありますよ」と告げた。ちょっとショックだった。繰り返すが、国クラスターベースでの危機なので、軽挙妄動、リスクを増やす方で利益をあげたい方は、最後の最後で沈むときにはみんな沈むのだと理解してやってほしい。

同計画が機密扱いであることを理由に同関係者が匿名で語ったところによると、ファニーとフレディは先週から債券トレーダーに対し、両社がそれぞれ月 200億ドルずつ住宅ローン関連証券を購入する必要があると伝え始めた。購入の対象はサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)証券、オルトA証券、不履行に陥ったプライムローン証券。この買い入れは、米財務省の7000億ドルの不良資産買い入れ策とは別になるという。

米ファニーメイとフレディマック:不良資産を月400億ドル購入開始へ - Bloomberg

信頼の礎石であるのは、個々人の住宅ローンであることは間違いない。ここが崩れているので、ローン会社、ローンを保証する会社、事業会社系の融資に対する保証まで築き上げた巨大信頼ピラミッドがゆらいでいるわけだ。誰も住む場所、家族を守る器を失いたくはない。ここに立ち返って、守ることがとても大切である。米国の実施を見たい。繰り返すが、もともとFannie Mae、Freddie Macは、米国の実質全体のリスクを集めるために作られた会社なのだから。

要するに円建てのアメリカ国債を日本向けに発行する。欧州向けにユーロ建てのアメリカ国債を発行する。

怪しいニューヨーク - 債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら

私は金融のプロではないので、確信はないがこれは正解だと思う。円建ての米国債とあわせて、日本の国債の利払いも今後つくであろうプレミアムによってかなり軽減する方法が存在するはずだ。かつ、日本が米国を支える姿を明確に見せることになる。よい方法だと私は思う。

■お返事いただきありがとうございました。

ちょっとぼけぼけしてまして、御礼が遅くなり失礼しました。

CDSのプレミアムはふつう数%で、実際に決済するのはその差額だけなので、平均2%とすると、55*0.02=1.1兆ドルしか資金は動いていない。これしか払っていないということは、理論的には債務不履行の際の支払いもこの範囲に収まるはずなので、帳尻は合っています。

指定されたページがみつかりませんでした - goo ブログ

ここまで読んで、なるほどと。

しかし今のようなtail eventが起こると、この範囲を超えて債務不履行が起こる確率が高い。そうするとCDOなど他の派生証券も含めて、3〜4兆ドルまで損失が拡大する可能性は十分あります。

日本円でと300兆円から400兆円という想像を絶する金額ではあっても、株式時価総額を超えるような債務不履行ではないと。つまりは、ピラミッド大崩壊は起こりえないということになるのでしょうか?

ああ、これでわかった。

「実際にはこれらの額のうち2%(8000億円程度)が現金などの形で支払われることになる(once all positive and negative positions are "netted" out, about 2% of that money will actually change hands)」

リーマン・ブラザーズのCDS清算価値は8.625%に決定 - ガベージニュース(旧:過去ログ版)