HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「COVID-19の死亡率および関連する健康転帰に対する政府の行動、国の準備および社会経済的要因の影響を測定する国レベルの分析」(個人的メモ、要約)

大変、興味深い論文を教えていただいて読んだ。

R. Chaudhry et al., A country level analysis measuring the impact of government actions, country preparedness and socioeconomic factors on COVID-19 mortality and related health outcomes, EClinicalMedicine (2020), https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2020.100464

https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(20)30208-X/fulltext?s=09

機械翻訳に頼りながら、ポイントをいくつか抜き出しておきたい。今後の多くの国のCovid-19対策に関わるのではないだろうか?

この研究は、症例数の上位50位の国から収集された政府の行動、国家対策のレベル、社会経済的要因を分析している。各独立変数(因子)と感染者数、回復者(退院者)数、重篤症例数、死亡者数の4つとの関係性を、多変数の負の二項分布を用いて分析しているという。私の拙い理解では重回帰分析ではないと読めた。各変数が感染者数などの変数と1対1で分析しているのか、重回帰のように複数の因子の重み付けを相対的に分析しているのか、私の拙い理解力では読み取れなかった。Covid19に関するデータは5月1日現在、人口、社会経済的データは概ね4月1日現在だと。

アブストラクトを翻訳する。平文で書かれたものをわかりやすい(私には思える)形に変形している。

COVID-19の症例数の増加は、
・肥満度(調整率比率[RR] = 1.06; 95%CI:1.01 1.11)、
・人口年齢の中央値(RR = 1.10; 95%CI:1.05 1.15)
・最初に報告された症例発症から国境閉鎖までの期間(RR = 1.04; 95%CI:1.01 1.08)
の高さ(長さ)と関係していた。

100万人あたりの死亡率の増加は、
・より高い肥満有病率(RR = 1.12; 95%CI:1.06 1.19)
・一人当たりのGDP(RR = 1.03; 95%CI:1.00 1.06)
と有意に関連していた。

より小さい所得分散は、
・死亡率(RR = 0.88; 95%CI:0.83 0.93)
重篤症例の数(RR = 0.92; 95%CI:0.87 0.97)
をより小さくしている。

100万人あたりのCOVID-19死亡率と、国境の急速な閉鎖、完全な封鎖、および広範囲にわたる検査は、関連していませんでした。

しかし、
・完全なロックダウン(RR = 2.47:95%CI:1.08 5.64)
・生物に対する国の脆弱性と脅威の減少(すなわち、リスク環境のグローバルヘルスセキュリティスケール*1の高いスコア)(RR = 1.55; 95%CI:1.13 2.12)
は、患者の回復率の増加と有意に関連している。

「広範囲に渡る検査」が人口当たり死亡者数とは関連していないというのは驚きであった。

統計手法として使われている「負の二項回帰」の説明。ちょいと難しい。「負の二項分布は、λ がガンマ分布に従うようなポアソン分布だと思えばだいたい OK」と書いてあったので、相関ではなくガンマ分布を使って分析していると把握しておきたい。

hoxo-m.hatenablog.com

この結果この2つの表に端的に表されている。百万人当の感染者数、回復者(recovered、退院)数、重篤者数、死亡者数と各国のパラメーターとの「負の二項回帰」がまとめられている。各段階でほぼ挙げられているのが肥満。これは反省するところが大。いわゆる感染拡大、陽性者数との関連で言えば政策的な変数、ロックダウンまでの日数、国境封鎖までの日数、検査数、年齢中央値等が高い関係性(rate ratio)を示している。先の段階に行くに従ってその国のもとからの素地、経済的な要素が増えてくるように見える。致死率に関して言えば、肥満、喫煙、看護師数、所得の分散(差)の小ささ、一人当たりGDPとなっている。

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@J_Satoさんご要望の「セクシーな解説」を目指せば、「Covid-19の感染防止は政策的な対策が重要。重篤化、死亡を防ぐには医療リソースの確保から経済的な側面まで総合的な国力が必要」であると。これ以上は私の手にあまるようだ。

*1:多分、このスケールかと。www.ghsindex.org

みんなでお医者様と医療従事者さん達を守ろう!(個人的メモ)

以下、曖昧な議論しかできない自分が悔しい。新型コロナウイルス関連疾病よりも、新型コロナウイルス関連社会的抹殺の方が恐いという話しをしたい。そして、その一番の犠牲者がお医者様と医療従事者さん達なのだと。

お医者様、医療関係者の方々に「日本は月に10万人以上、年間130万人以上死ぬ死亡大国なのに、なぜまだ千人程度の死亡者しか出していない新型コロナウィルスで医療崩壊するんですか?」と聞くと、高い確率で「医療従事者に伝染するから」という答えが返ってくる。ついさきほども、NHKが某総合病院の院内感染について報道していた。いわく、ほんの数件の院内感染が出ただけで、緊急手術以外の全てが止まると。

医療従事者の方々の平均年齢は比較的「若い」ので感染自体が恐いはずがない。同じく医療関係者から「新型頃は基本風邪。なにが恐いかわらかない」という言葉も聞いている。実際は「院内で感染者がでると社会的圧力がひどすぎて病院の持てるリソースを全て注ぎ込まないといけない。風評被害が深刻すぎる」という意味ではないだろうか?実際、私が実際に見聞きする各病院もとにかくコロナ恐くて受診しない患者さんばかりのようで、ひまで仕方ないように見える。患者が減りすぎて、病院の赤字の幅も一般企業なら年内に確実に倒産する巨額に達している。

この方のお話しが実に情弱一般民の「社会的圧力」感触を表している。「死んでもコロナにはかかりたくない」という意識の方が一般には多いのだ。

すでに世界的にも新型コロナウイルスは特効薬が存在する前提の結核とAIDS程度の危険性であることは明らか。

app.flourish.studio

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しかし、結核やAIDSでロックダウンはしない。どの程度の対策がコスト/ベネフィットのバランスが取れていて、どれだけのリスクがあるか社会的合意ができているからだ。結核も、AIDSも感染者に対する差別は以前は激しかったがいまではなくなっている。

視点を変えて言えば、日本は資源のない国なので、遅かれ早かれ再開国しないと生きていけない。また、現下の感染状況からも、新型コロナウイルスを日本から撲滅することはできないことは明か。もはや、私達はウィズコロナ、アンダーコロナで生きていくしかない。*1

となれば、お医者様から医療従事者さん達を全力で国民が必死で守るしか医療も経済も再興できる未来はない!言うまでもなくお医者様も、医療従事者の方々も現場で必死に努力されている。その結果、たまたま院内感染したからと言って社会的に圧力を加え、差別することは、前述の通り医療崩壊をもたらす。絶望からお医者様、医療従事者の離職を増やし、私達の大切な未来の医療リソースの減少にしかつながらない。院内感染を責めていいのは、過去にお医者様のお世話になったことがない人だけだ。

医療でも、経済でも明るい未来を夢視るためには、お医者さまと医療従事者を守ることだ。日本のどの階層の人でも新型コロナウイルス関連疾病を発症しても差別してはいけない。ましてや無症状でPCR検査陽性になっても、お医者様も、医療従事者も、陽性者本人も責めてはいけない。マスコミも新型コロナウイルス関連疾病等を報道するなら、熱中症から始まって肺炎で死ぬ人、AIDS、結核の患者と同等に扱わなければならない。それらの疾病と平行に扱うことを義務づけるべきだ。国民に対するリスクでは言えば等価なのだから当たり前だ。新型コロナウイルス関連疾病患者を差別する発言は法律で禁じるべきだとすら思える。

だからお願いだから、院内感染から市中感染までPCR陽性でただけで鬼の首をとったようなものの言い方、クレーム電話、村八分以上の仕打ちをしないで欲しい。

だからだから、私達の健康を支えて入れている、コロナと必死で現場で戦っているお医者様と医療従事者さん達をのために、

#コロナを指定感染症から外して

#お医者様と医療従事者さん達を守ろう

私の現場からは以上です。

*1:国と自治体の医療リソースを守る政策と、ヒステリックな撲滅運動との間の政策のブレについては別途書きたい。

空母いぶき Great Game

地球温暖化により北極海が空白地帯となっていることは全く認識していなかった。

まさに、21世紀最大の空白地帯が突然浮上してきたと。

このゲームは、世界の一体化が進行するなか、帝国主義時代の空白域となっていた中央アジアに対し、先鞭をつけて緩衝国化することが英露双方の重大な関心事となったことで始まり、その舞台はコーカサスからチベットにおよぶ広大な地域におよんだ[1]。一般的には、1800年代初頭に始まり、1907年の英露協商協定をもって終結したとされる[1]。

グレート・ゲーム - Wikipedia

とはいえ、物語としては私にとっては限りなく「スタータイドライジング」に近い。偶然なのだろうが。

スタータイド・ライジン
Startide Rising(1983年)/ 1985年10月、ISBN 4150106363(上)、ISBN 4150106371(下)
ファースト・コンタクトから二百数十年後、知性化されたイルカをメインクルーとする外宇宙船〈ストリーカー〉が銀河辺境を訓練航行中、一隻が月ほどもある巨大宇宙船団の遺跡を発見する。その古さ(数十億年前)と規模から伝説の〈始祖〉の船団であろうと推測されるそれらの情報を、軽率なクルーが地球に向けて送信したために、その内容が列強諸属によって傍受されてしまった。
〈始祖〉への接近は種属間のヘゲモニーに計り知れない影響を与えるため、列強諸属は〈ストリーカー〉を拿捕して情報を独占すべく、艦隊を出動させた。追われる〈ストリーカー〉は逃走中にダメージを受け、海洋惑星キスラップの海底に潜伏した。キスラップ宙域には列強諸属が殺到し、互いに戦端が開かれる。一方、〈ストリーカー〉のイルカたちにはキスラップの過酷な自然の犠牲となる者や、ストレスから先祖返りの兆候を示す者が続出し、反乱を企てる者まで現れる。混沌とする情勢のなか、残ったクルーたちは墜落した宇宙戦艦を利用して船を偽装し、強力な列強艦隊から逃れようとする。

知性化シリーズ - Wikipedia

企図しない「発見」によって始まる列強の戦端という意味では、地球人とイルカたちが日本とアルゼンチン調査船になぞらえられる。今後が楽しみだ。

ちなみに、なんで「Great Game」であって「The Great Game」ではないのか?大変、違和感を感じているのだが私だけだろうか?

「移動」(mobility)と感染 その2 (個人的メモ)

前回も同じテーマでエントリーを起こした。しかし、発症日ベースに人数を変換できず中途半端な結論になってしまった。

hpo.hatenablog.com

昨日、@ma_pressさんのすばらしいグラフを拝見して、もうちょっとがんばってみようと再トライした。ご指導をいただいたわけでなく、勝手に私が感銘を受けて猿マネをしているだけなので、以下の記述の一切の責任は私にある。

感染報告日と発症日のデータは全く公開されていないのかと想っていたら、ジャグジャパンさんのcsvデータから東京以外で両方が分かるのデータが拾えることを教えていただいた。発症日と報告日の日数間隔を集計し、グラフ化してみた。

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@Calico_Kater さんのツイットを拝見して発症日と感染報告日は、ガンマ分布するのだと理解した。発症が生じて、報告日までのある意味で待ち行列なのでガンマ分布なのだと理解すればよいのか?

確率論および統計学において、ガンマ分布 (ガンマぶんぷ、英: gamma distribution) は連続確率分布の一種である。その性質は形状母数 k、尺度母数 θ の2つの母数で特徴づけられる。主に信頼性工学における電子部品の寿命分布や通信工学におけるトラフィックの待ち時間分布に応用される。また所得分布にも応用される。

ガンマ分布 - Wikipedia

これにより近似といえるレベルではないが、実データの間隔日数とガンマ分布をフィットさせることができた。

docs.google.com

さらに、これを発症推定日から報告日ベースのPCR陽性者数に逆にかけることで陽性者の感染日を推定した。報告日ベースの陽性者(棒グラフ)と発症日ベースの推測数(折れ線)の比較のグラフを作った。

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https://docs.google.com/spreadsheets/d/17WX_aFKVSCNQrHjwWN6LDT7ID_WkLT0FvIP2TeeoFQk/edit?usp=sharing

これらの下準備により、これらデータを使ってGoogle Mobility Reportの全国版と発症日ベースの陽性者数との比較グラフを作った。

MobilityとRtとの相関はかなり高い。まだt検定はしていない。

対象期間 相関係数
2/15-6/18 0.81
5/1 - 6/18 0.87

時系列としてではなく、MobilityとRtとの散布図を作り相関を取った。実データから最大26日程度の発症ー報告日間隔なので、フィットできたのは6月半ばまでのデータ。当然、ほかにも季節要因や、後に述べる空港検疫、報道などほかの要因がRtには影響しているはず。しかし、これらの結果から移動量はかなり説明力が高いとは言える。

グラフを再掲しておく。

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この近似式、Rt=2.39 x Mobility - .768、によりRtをMobilityから推測できるようになった。更に一ヶ月先までの当日新規感染者の推測を行った。ma_pressさんの推測と比べるとかなり確度は低い可能性が高いが、何もしなければ8月半ばまでに全国で一日千人の陽性者がでる可能性がある。これには検査数の変動を考慮していない。検査数と陽性者数の関連性は今後考察したい。更に、単純なSIRモデル等から指数関数的に陽性者が増えていく場合の予想線も入れた。実は、ゴンペルツ曲線による推測もトライしているのだが、前提がどんどん変わっているようで、フィットしない。しかし、この指数関数的増加にはならないように推測される。

更に、現在2月と比べると-20%から-25%程度で推移しているMobilityを-30%から-35%に減速させるか、Mobilityと1回の接触当たりの感染確率の積を-10%できればRt=1前後になると推測される。

なお、私はまだ空港検疫のデータにまでたどり着けていないのだが、@Calico_Katerさんの「気持ち悪さ」は共有しておきたい。3月の感染拡大と空港検疫の感染者見逃しは確実に関係していた。

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https://hpo.hatenablog.com/entry/2020/06/16/222911

さらに、今後、ドイツ、イスラエルスウェーデンの状況はよくよく注視したい。経済再開、移動量と感染の制御のお手本になるのではないかと期待している。これもまだ調査中なので私の当て推量であることは注記しておく。

www.worldometers.info

www.worldometers.info

www.worldometers.info

いまの状況から考えるに、新型コロナウイルスは日本にといて根絶はかなり難しいと考える。ウィズコロナ、アンダーコロナでどう経済再開を果たすのか?中国のように発祥国でありながら、すでに感染制御をし、なおかつ戦狼外交と言われる東西南北に対抗しつづけ、領土拡大を模索する政策を取り続けている国との関係性も新型コロナウイルスは影響してくる。今年4月の@HironoriFunabi1さんの一連ツイートは今も有効であると考える。

新型コロナウイルスによる被害の比較はほかにエントリーを起こしているのでここでは繰り返さない。


■追記

三毛猫(@Calico_Kater)さんのご指導で、エントリー、スプレッドシートの中で感染日と発症日が混乱していたので、4日程度ガンマ分布のピークを後ろに送り発症日ベースにただした。詳しくはエントリーをあとで修正する。とりあえずのグラフはこちら。

最近のPCR陽性者数から死亡者数を推測する(個人的メモ)

当初書いた以下の内容にスプレッドシートモデル作成上の大きな間違いが見つかった。人の死という非常にセンシティブな内容であるため、14日時点でのデータ、スプレッドシート等に置き換えた。以前のものは反省を込めて追記に回したい。

@kenmomd さんの年齢年代別の分析を拝見した。素人考えだが、各年代別に入院する率、あるいは死亡する率を掛けたら今後の必要病床数の予測や、被害の予測に役立つだろうと考えた。

データは、最近ようやく主ページの「左斜め上」に配置されたcsvファイルに気づいたジャグ・ジャパンさんのサイトと、厚労省のオープンデータ、そして厚労省の日本の致死率データからいただいてきた。4月に手入力していたころと比べると格段の進歩!

gis.jag-japan.com

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https://twitter.com/kenmomd/status/1276516135458897922

www.mhlw.go.jp

またとめシートはこちら。

docs.google.com

まず、3月1日以降の全国の報告日ベースの年代別感染者のグラフ。

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結果できたグラフ。報告日から14日の「間隔」を取っている。感染から発症で平均4,5日、発症から報告日まで一週間前後とすると、感染日からは三週間程度の「間隔」となる。不明者の部分を全体平均の5.4%ではなく、若い方が多いことを考慮し半分の2.7%にした以外は全く出たまま。3月14日から7月初旬までの累計死亡者数の実データと予測データの時系列での相関係数は0.9979。実データと予測データの単日死亡者数別に相関を取ると相関係数0.7007。統計的な有意の検定はしていないが、かなり高いだろうことは予想される。この予測からすると、これから二週間程度で30名程度の死亡者が出る可能性がある。私の間違いか、「コロナで死ににくくなっている」か、軽症化していて私の「予測」が外れることを祈る気持ちだ。

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スプレッドシートの7月1日以降の部分。黄色をつけた実データの11日時点での死亡者数と二週間予測の24日時点での差が今後発生するかもしれない死者数となる。

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ここから言えることは、

①本来一定の分布となる発症日、確定日、死亡日を推測すべきところだが、簡便に確定日から14日の経過で亡くなると仮定したにも関わらず相関が高くなった。

②一般的な致死率を掛けても、これだけグラフがフィットするということは現在のPCR陽性検査による感染者補足率は高い可能性がある。

③感染者は、7月以降に6月前半までの傾向を越えた感染者が出ているのでいくら若者が多いとは言え、これまでの傾向以上の死者がこれから出る可能性がある。

素人の推計なのでなんの役にも立たないが、確かに感染を抑制しないと死亡者は減らない。それでも、経済活動は再開されなければより多くの死亡者が出るだろうとしか思えないし、経済苦で一番苦しめられるのは子供達だと信じる。

hpo.hatenablog.com


■追記

ちょっとまだおかしいが、とりあえず。


■追記 その2

いろいろ間違いが見つかり、現在の予測。


■追記 その3 修正部分

以下は、修正する前の内容。反省を込めて記録しておく。

当初間違った内容を含むスプレッドシート
docs.google.com

6/1以降感染者グラフ
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「不明」に10歳以下の感染者が入っていた。

「不明」については、全体平均の5.4%と、若い方が多いという仮定から1%としたグラフを描いた。2つのグラフで縦軸の最大値が動いてしまっていることにご留意を。

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統計についてのコメント。相関はぐっと高くなった。相関のt検定はまだこれから勉強。

実データの死亡数累計と予測された死亡数累計の相関係数を計算するとR^2=0.93と高い相関となった。ところが、当日毎(新規感染者)ベースでの相関ではほとんど無相関だった。6月20日公表の17人が攪乱しているかもしれないと考え、ここを除外したが0.3程度の相関。時系列データの相関係数の判定は統計的に私の手には余る。今後相関係数のt検定くらいはできるようになりたい。
bellcurve.jp

移動量とCovid-19感染のデカップリング(個人的メモ)

東京での感染拡大の報道を受けて、人々の移動量と感染の統計について、自分で少しは調べなければと想っていたら、@ma_pressさんが全面的にやっていらした。

また、経済と感染のバランスを取るための方策もデータの根拠まで示されている。

私も若干Google Mobility Reportを使って、Rtとの関係を調べた。@birdtakaさんのお陰!

hpo.hatenablog.com

この時点では移動、MobilityとRtの関係を自分で再現できなかったが、7月頭にやってみた。現在の東京のPCR陽性者数の推移、Rtは二週間前の移動を見ればよいと理解した。繰り返すが、7月4日の百人前後のPCR陽性者の報道があった時点で、翌週(5日から10日)には300人程度の感染者が出ててもおかしくない予想をした。来週には更に増えるであろう。*1

そこで、移動量と経済再開と新型コロナウィルス感染症の問題。単純に移動を制限するのではなく、ドイツのように移動量と感染の相関を断ち切るべきだというのが@ma_pressさんのご主張だと理解している。そして、そのためには検査を徹底すべきだと。当然、接触確認アプリ利用を感染リスクが高いと想われる地域の人々には義務化するとか、リモートワークを増やすなどの方策は考えられるだろう。経済クラスターはすでに新しい生活様式ガイドラインを業別に作成してる。ここがあまり知られていないのが不思議。これらのガイドラインこそNHK当たりが特集組んででも広く紹介、徹底すべきではないか?

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https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline.pdf

留意すべきは日本が「ゆるい」から再感染拡大がはじまったという認識より、ドイツを例外とした世界的な傾向だと捉えるべき。戦時体制にあると言えるイスラエルですら感染者は広がっている。経済再開すれば当然の動きなのだ。また、「新型」とは言えコロナウイルスコロナウイルス。夏風邪を引く一定人数は珍しいことではない。

一旦、押さえ込んだと思われている国のその後の感染状況についてはFinancial Timesのグラフ機能でも確かめた。ドイツの「次の波」対策のなにが特徴かは調べている。プール検査なども活用しているのだろうか?

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もっとさらに大前提から言えば、日本は世界一の人口自然減少大国。年間40万人以上年間130万人以上が亡くなっている。千人単位の死亡は珍しいことではないように見える*2。医療の方に教えていただきたいのは、例年数十万人の死に日常的に対応しているのに、なぜ千人単位の死で医療崩壊してしまうのだろうか?指定感染症だからか?社会的パニック状態だからか?院内感染が社会的に非難されるからか?*3

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https://docs.google.com/spreadsheets/d/18i55DFTVPFxiqM2JToLdrtzdHEtJYoqy3GZ8xScyMx4/edit?usp=sharing

一般の方々ももっと恐れるべき死亡原因があることを認識すべきだと私には思える。コロナの最中であるが突然の死を迎えた若い知人もいるし、長寿を全うした方々の訃報も毎日のように来る。久しぶりに会った知人が癌の手術を受けたと聞いて衝撃も受けた。日本の死因の1位から5位を厚労省が公開している。ちなみに、死亡率とは人口十万人当たりの死者数。新型コロナウィルスよりもはるかに死は一般的だ。

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https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html

※ 本ブログにおいて整理した

以前年代別のCovid19死と従来の死の比較をした。驚くべきことにほぼ同じ分布であった。米国のデータだが平均年齢も計算してみた。2年程度の差でしかなかった。

スウェーデンの状況をまとめたエントリーでも、かなり詳細にCovid19死と従来の死の比較を行い、大きな変化ではないことを証明しているように私には読める。

Guest Blogger @HaraldofW – All you ever wanted to know about Corona Swedensoftwaredevelopmentperestroika.wordpress.com

不謹慎だと想ってずっとエントリーには書かなかったが少数の例外を除いて、高齢者の余命をほんの数年、しかも既往症等に悩まされている人々が多い100%のQoLではない余命を伸ばすために、多くの若者の職場や、学びの機会、職業訓練、あるいは子供を産み育てる機会を奪っていいのだろうか?長期の休校により精神的にダメージを受け、学校に通えなくなった子供達も存在する。更には、「自粛」により筋力が衰え、健康を失い、痴呆、介護度が進んだ高齢者もいる。一体なんのための自粛なのか?

最悪なことに、私の見える景色からすると経済における企業の大量死時代が足跡をたてて近づいてきている。リーマンショック以上の大量倒産、大量失業がそこまで来ている。ニュースで出てきているのは氷山の一角ですらない。経済を建て直さなければ、多くの人が死ぬ。経済苦で死ぬ。子供は教育の機会を失う。最悪親の道連れで殺される。貧困も広がるだろう。政府はこれ以上対策を打つ財政的余裕はない。私が財務省であっても二百兆円の対策予算を立てて半年以内でまた百兆円の追加予算は組まない。移動量と感染のデカップリング以外道はないだろう。

2020年7月10日16時現在、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産(法的整理または事業停止、負債1000万円未満・個人事業者含む)は、全国に332件<法的整理256件(破産227件、民事再生法29件)、事業停止76件>確認されている(原則として事業停止の事業者は自己破産申請の準備に入っている)。

 負債総額は、2173億2200万円(調査中を除く325件の合計)で、5億円未満が255件(構成比78.5%)を占め、中小零細事業者が中心。一方、100億円以上の大型倒産は3件(同0.9%)にとどまっている。

「新型コロナウイルス関連倒産」は332件 ~福岡県で10件に達する~(帝国データバンク) - Yahoo!ニュース

更に企業の大量死に医療機関が加わってくるだろうというのが笑えない現実。医療機関の赤字幅は想像を超える金額。新型コロナウィルスを怖がるがあまり、経済的な要因で医療崩壊が起こるのでは本末転倒以外のなにものでもない。更に言えば、マスコミ等が新型コロナウィルスの恐怖を煽るがあまり現実に目の前の死につながりかねない病気の診療を受けずに死ぬという誠にばかげた超過死が生じているのが現実ではないだろうか?

コロナを正しく恐れる、経済活動の再開と感染リスクのリンクを断ち切る、ここにぜひ政府から多くの死のリスクを抱えた方々は注力すべきでは?また、感染予防、デカップリングの努力から新たな産業が生まれることを期待したい。


■追記

医療クラスターは、医療に対する政府の無能さ、リソースの配分に大変お怒りなので、優先して対策すべきではないだろうか?医療業界の方々には「ここまでやったらRtを減らせる。ここまでだったら経済再開と医療的な配慮の両立ができる」というガイドラインをぜひお示しいただきたい。前述の通り、産業界的にはガイドラインを示している。これが不満であるなら、どこをどうすべきなのか逆に示していただきたい。経済がまわらなければ、健康保険も払えない。ほとんどの健康保険は産業別組合からだとご存じのはず。まして、大方の病院が患者を怖がらせ過ぎて大赤字となり、来年の存続すら危ぶまれている今、どうしたら新型コロナウィルスと病院経営が両立すべきか具体的に提言しないとご自身の職場がなくなるとよくおわかりだと想うのだが・・・。

もう私は神経をやられてしまったのかも知れない。妄想しか浮かばない。

*1:なお、断続的に東京都の年代別構成比を見ているが若年人口がほとんどとの傾向は変わっていない。陽性者の数を東京都が公開するなら症状の有無や、もっと言えば現在の他の感染症の状況についても同時に公表すべきだと私は想っている。

*2:なにを血迷ったか、人口の減少数と死亡数を混同していた。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/index.html:embedef:id:hihi01:20200715055118p:plain

*3:ツイッターでご指摘をいただいている。

マルチレベル選択とジェイン・ジェイコブズ

池田先生と先日社会進化論(Social Darwinism)について議論させていただいた。先日の自民党の「進化論」をめぐる話しからだあった。

リベラルな方々が主張の正当性を求める社会科学は進化論のかなりの軸足を置いているように私には思えた。社会科学系統の方々と話しをすると「進歩と進化は違う。前者には意思があり、後者は集団レベルの自然選択だ」と。マット・リドレーも「スカイフック」という常に更なる高みを想定する「進歩」と進化の違いを詳しく論じていた。

hpo.hatenablog.com

素直に池田先生に勧められた本を読んでみることにした。

半分くらい読み進んで「マルチレベル選択」の話しが出てきた。Wikipediaから引用する。

マルチレベル選択
哲学者エリオット・ソーバーと生物学者デイビッド・スローン・ウィルソンは群選択説を再評価し、それを拡張したマルチレベル選択説(多レベル淘汰)を提唱した。彼らはある形質に注目したとき、その形質が影響を及ぼす個体群を形質集団(Trait Groups)と定義した。(中略)形質集団は地域個体群全てを含む場合もあるし、家族などの小集団の場合もある。一つの個体が複数の形質集団に含まれていると考えられる。つまり、形質集団選択によれば、自然選択は遺伝子や個体だけでなく、家族のような集団といった様々なレベルで働いていると解釈できる。彼らによれば血縁選択集団や互恵的利他行動を行う集団は形質集団であり、マルチレベル選択の一種に過ぎない。

群選択 - Wikipedia

マルチレベル選択による利他行動、道徳的行動を以下にように説明している。

私は世界各地で行ってきた講演で、小学生から進学者や哲学教授に至るまで、専門知識のレベルが異なるさまざまな人々を相手にこの(道徳的な人間の特質の連想)ゲームをしてきた。それに対する答えは非常に一貫していた(以下略)

ここで上げられた言葉を表にする。

道徳的に完全な人間 正反対の人間
愛情深い 貪欲
誠実 残忍
勇敢 利己的
寛大 人を騙そうとする
自己本位でない 人を操る
忠実 思いやりに欠ける

これらのリストはジェイン・ジェイコブズの「統治の倫理、市場の倫理」を私に思い起こさせる。

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統治の倫理 市場の倫理
・取引を避けよ ・暴力をしめだせ
・勇敢であれ ・自発的に合意せよ
・規律遵守 ・正直たれ
・伝統堅持 ・他人や外国人とも気やすく協力せよ
・位階尊重 ・競争せよ
・忠実たれ ・契約尊重
・復讐せよ ・創意工夫の発揮
・目的のためには欺け ・新奇・発明を取り入れよ
・余暇を豊かに使え ・効率を高めよ
・見栄を張れ ・快適と便利さの向上
・気前よく施せ ・目的のために異説を唱えよ
・排他的であれ ・生産的目的に投資せよ
・剛毅たれ ・勤勉なれ
・運命甘受 ・節倹たれ
・名誉を尊べ ・楽観せよ

マルチレベル選択説的に言えば、「市場の倫理」とは「形質集団」であり、集団を結束させ全体として力を発揮させるための規範であると位置づけられる。そして、集団内を越えて群と群とで淘汰圧と常に「闘い」続けなければならない「レベル」では、「統治の倫理」となると。まさに、一般的に理解される「(群としての)生存競争」となると。

更に言えば、ジェイコブズが「市場の倫理」と「統治の倫理」の混同、混合が生じるところに「腐敗」が生まれるという指摘は、「進化」、「マルチレベル選択」と同様違うレベル、レイヤーでは行動原理が全く異なることになることを予見している。群間の「生存競争」において血縁集団内の「道徳」を適用すれば忽ち絶滅してしまうだろう。生物学的原理を社会、政治に応用するというのがウィルソンの主張かと思われるがどうなのだろうか?

まだ、半分なので最後まで読んで見直したい。