門外漢なので「楽しく」とまではいかなかったがしばらく前に読んだ。SIRモデルも、ゴンペルツ曲線も出てこないいまから見れば平和な「疫学」の世界かなと。

- 作者:中村 好一
- 発売日: 2020/08/03
- メディア: 単行本
細菌学でも、ウイルス学でもないので、本書にはDNAもRNAも免疫もマイクロファージも、NK細胞もでてこない。疫病をいかに調査するかについて書かれている。
読んでいてすっと入ってきたのは、私が学んだ80年代の実験心理学系統がそうであったような記述するための統計学にかなりページを割いて解説されていたからかなと。感覚知覚心理学においては「錯視」に関する実験とそれに伴う諸条件の知見が相当に80年代までに蓄積されていた。しかし、それらを統合的に「マッピング」し、「大統一理論」化することはできていなかった。
私は「ヒトの目、驚異の進化」のこの一枚の表に打たれた。ほぼすべての錯視が人間とその先祖の生態における感覚知覚で整理すると統合されてしまうことが示されていたからだ。
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ここに至るには実験系心理学膨大なコンピューターパワーとAI研究が進むことが逆に人間への回帰を生み出していたように想う。医学等で人間の視覚については膨大な分析が行われていたとはいえ、それらの相互作用、全体としての機能という発想がなければ生きている環境、生態の中での人間の感覚知覚という視点は生まれ得なかった。
同様にして、疫学についても最近、ウイルス単体の研究は膨大に積み重なっていても、それらが「疫病」として人間社会においてどのような挙動を示すのかの大きなギャップがあることを本書を読んで感じた。