HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「最新認知心理学への招待」

一気読みした。曲がりなりにも認知心理学を学部で勉強した。非常にわかりやすく明快にかかれていた。おかげで、卒業して30年余りになるのに、よく理解できた。数十年で進化した知見もアップデートできたように想う。なにより、改めて、認知心理学が現代のAI研究の今後に非常に重要な役割を果たすのだと確信した。

最新認知心理学への招待―心の働きとしくみを探る (新心理学ライブラリ)

最新認知心理学への招待―心の働きとしくみを探る (新心理学ライブラリ)

視覚、注意、記憶、判断からコネクショニズムに至るまで、認知心理学が積み重ねてきた人間のメカニズムを探る実際の実験に基づく知見が見事に整理されている。外形的な実験を工夫し、ここまで内部メカニズムを解明できていたのかと改めて感激した。この実験、観察に関わる知見は、そのままAIに応用可能だろう。AIの開発する側は高度なハードウェア、ソフトウェア技術で進むが、高度化すればするほどブラックボックス化してしまう内的なメカニズムをいかにホワイトボックス化することは、今後法的責任能力などの議論が進む中で必須となる。

また、現在の人工知能は基本的にニューラルネットワークの発展型であるので、何がどのように学習されているのかは、人間にはわからない。Google社のAlpha GOが人間の棋士を打ち負かしたとは言え、Alpha GOの知能ネットワークのどこにその知見が蓄積されているのか分析できていない。人間、いや生物の自然なニューラルネットワークすら、完全には知能のサイドから分析できているわけではないので、当たり前ではあるのだが、これもまたブラックボックスのままとなってしまう。

演繹と帰納、あるいは人工知能はヒューマンエラーの夢を見れるか? - HPO機密日誌

今後が楽しみ。