HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密」(ネタバレあり)

ワンダーウーマン」の秘密を求めて、そのCreatorであるマーストン教授の物語を見た。私にとっては期待を裏切らない作品だった。

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「ポリアモリー」という3人の男女による愛のある共同生活。どんなものであったか、どのような「リビドー」に突き動かされたものであるかがよくわかった。まして、第二次世界大戦前の東海岸の伝統的な名門大学でこの選択をすることがどれだけ過激であり、どれだけの周囲の差別的な目で見られたか想像するにあまりある。

マーストン教授と妻のエリザベスがどれだけ知的な領域で仕事をしているかも伝わった。嘘発見器は夫妻の共同研究により開発され、ポリアモリーのパートナーであるオリーブの協力により完成したというのも一例。マーストン教授のDISC理論も大変説得力がある。なんと、現代の経営でも使われていると!

www.hrd-inc.co.jp

映画でも十分に語られているDISC理論。WIkipediaを引用、試訳する。

Marston was also a writer of essays in popular psychology. In 1928, he published Emotions of Normal People, which elaborated the DISC Theory. Marston viewed people behaving along two axes, with their attention being either passive or active, depending on the individual's perception of his or her environment as either favorable or antagonistic. By placing the axes at right angles, four quadrants form, with each describing a behavioral pattern:

  • Dominance produces activity in an antagonistic environment
  • Inducement produces activity in a favorable environment
  • Submission produces passivity in a favorable environment
  • Compliance produces passivity in an antagonistic environment.

Marston posited that there is a masculine notion of freedom that is inherently anarchic and violent and an opposing feminine notion based on "Love Allure" that leads to an ideal state of submission to loving authority.

https://en.wikipedia.org/wiki/William_Moulton_Marston

マーストンはまたポピュラー心理学のエッセイの作家でもあった。 1928年に、彼はDISC理論を詳しく述べた「普通の人々の感情」を出版した。マーストンは、個人の環境に対し優位と認識するか拮抗的だと認識するか、受動的または能動的に注意をむけるか、これら2つの軸に沿って人々は行動していると考えました。(環境認識が優位か、拮抗的か、注意の方向が能動的か、受動的かの)2つく軸を直角に配置すると、4つの象限が形成され、それぞれが行動パターンを表します。

  • 主導(優位性) 優位性は拮抗的環境における積極的活動を生み出す
  • 感化(誘導性) 誘導性は優位な環境における積極的活動を生み出す
  • 安定(服従性) 服従性は好ましい環境で受動性を生み出す
  • 慎重(妥協性) 妥協性は拮抗的な環境で受動性を生み出す

マーストンは、本質的に無秩序で暴力的な男性的な自由の概念と、愛のある権威への服従の理想的な状態を導く「Love Allure(愛の釣り針)」に基づく反対の女性的な概念があると主張した。

実際には、「環境 → 注意 → 選択」というダイナミズムがあるので、2軸での表現は不十分だが、これを図にしてみた。

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DISC Dominance Indection Submission Compliance

見れば見るほど能くできている。環境が自分にとって優位で、能動的に注意を向けていれば「誘導性」の行動となる。実際には、"DOMINANCE"という"DOMINA(神)"という言葉を含む大変強い外部表現となる。真逆で環境が自分に取って拮抗、もしくは不利であって、受動的な方向に注意(意思)を向ければ妥協的("Compliance")行動にならざるを得ない。逆に、環境が優位なで受動的であれば「服従」("Submission")になるのは、理解が容易だ。

多くのところで語られているように、「ワンダーウーマン」は真実を白状させる縄を持つ、女性という得てして「服従」、「妥協」を強いられる立場を性的な地位は保ったまま「主導」、「感化」に転じるキャラクターだ。縄は当然嘘発見器だ。他にもそれぞれ隠された意図が存在しているのだろう。

この映画の監督が雄弁に語ってくれている。

wired.jp

この映画のとてもセクシーな場面は大変楽しめた。監督の性的な嗜好があまねく発揮されていると私は想う。現代においてさえ位置づけが難しいこの映画の役柄をそれぞれの俳優が勇気をもって引き受けたことに限りなく拍手を送りたい。そしてまた、DCコミック版映画「ワンダーウーマン」の公開とほぼ同時にこの映画が公開されたことの意味は大きい。フロイドを引用するまでもなく、改めて性的な人間の根源的な力のすごさを感じた。「リビドー」とは実にうまい言葉であった。