以前、経済学の比較優位の原則から突出して付加価値を稼いでいる突出した製造業があるため、日本の産業全体の平均賃金が上昇したのだと、ブログ界隈で議論があった。
- http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/cd4e52fd7cca96ac71d0841c5da0cb75
- 生産性の話の基礎 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
- 2007-02-20 - 分裂勘違い君劇場
この議論で「平均賃金」は、ある経済圏内の労働力の分配によって決まるとされている。経済圏内でどう労働力が分配されるか?経済学の「比較優位の原則」から、他の貿易相手国より少しでも生産性が高い産業に労働力が集中することが、その経済圏の貿易収支を最も高めることになる。日本の貿易収支から見た生産性が最も高い製造業、つまりは自動車産業に労働力は集中するべきだとなる。
しかし、実際「経済圏」は自動車産業だけではなりたたない。その労働力たる人々の住居も必要、食事も必要、食事の原料を作る農業も必要、工場を立地させるためのファイナンスサービスも必要となる。また、自動車産業が一番生産性が高いということは自動車産業が一番賃金も稼げることになる。しかし、自動車産業にだけ労働力が集中してしまえば、他の産業に回り労働力が少なくなってしまう。労働力とその価格である賃金との需要と供給のバランスでその経済圏内の賃金は自動車産業に「引きずられ」て上昇する。id:wlj-Friday=山形さんや、id:fromdusktildawnさんのおっしゃる「平均賃金」を高めることになると理解している。まあ、移転可能な自由市場ではすみやかに行われるはずの労働力移転がなかなか日本では進まないのが問題点ではある。
ECの試みは、実はこの経済圏、労働市場の拡大にその目的があったのではないだろうか?ドイツ、フランスという突出して生産性の高い国と通貨や、労働力の移動まで統一されるとは、日本国内から「平均賃金」が上昇して貧困が減っていった過程が、欧州市場全体に広がってもおかしくはなかった。
まず、この自動車産業を頂点とする経済圏の形態が日本から日中韓の三国に拡大したのが平成に入ってからぐらい。そして、この10年あまりの間で国際分業が拡大し、この労働力圏/経済圏がが、マネジメント層を含む労働力の移動という形で、より拡大して「チャイナ+1」という言葉に象徴されるように、ASEAN諸国と日中韓の三国、10+3経済圏となり圏内の「平均賃金」が押し上げられたと。
私の言葉でいえば、「距離、時間、そして統治と戦争」で暑かった「瞬間の降臨」がアジア圏内において一気に実現していく様子を私たちは目撃しているのだと。
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って、まあ、自分であたまの整理に書いてみた。
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