「おっ!ファイナンシャルタイム買って良かったじゃん!」と想わせる記事が日経に増えた。これは本当に良記事。
アベノミクス、核心は民間需要の不足 :日本経済新聞
前々から想っているたことだが、日本の失業率の低さは特筆すべきだと言ってくれている。日本の働いている人は胸を張っていい。失業率の低さは決して政策だけの問題ではない。各企業、働いている一人一人が仲間を大切にする働き方をしているから実現できたこと。
労働市場はすばらしい状態にある。失業率は3%台前半とどまっている。労働力が減っていることを考慮すれば、経済成長率も悪くはない。我々の分析によれば労働者1人当たりGDPの成長率は2000~10年の年率1.5%から10~15年の同2%に上昇している。どちらの数字も高所得国の最上位にある主要7カ国(G7)中の最高だ。
問題は働かない老人が増えていること。働かない高齢者は労働人口に対する捕食動物なのだ。まあ、それは別な議論。
企業部門の資金余剰はさらに大きい。そのGDP比は2001~13年の平均で7%、ピークの09年と10年には9%に及んだ。この企業の資金余剰は内部留保の強さによるもので、2000年代初頭以降の平均で国民所得の22%に達している。一方、企業の総投資は緩やかな下降線をたどり、同じ期間の平均でGDP比14%となっている。しかし、それでも投資率は他のG7諸国を大きく上回る。
以前から、「企業の内部留保がぁ!」という官庁からのリークっぽい記事を目にする度に違和感を持ってきた。そもそも、内部留保は利益の蓄積である。「内部留保を削れ?じゃあ、各企業に損失を出せと?」と反論したくなる。損失を出せば税金は減る。公開企業なら意図的に利益を出さない経営をすれば責任を問われない。利益を出して、内部留保を積み上げるのは企業の本能、当たり前。むしろ「欧米企業と比べて利益率が低い、付加価値が低い」と非難され続けて来た中でよくぞここまで積み上げたと誇りに思うべき。
もっとそもそも、内部留保とはBSの貸し方、右側の話し。借り方、左側のように工場だの、投資だの、株券などに変わっている。各企業でどれだけ将来の成長に結びつく資産内容になっているかを問題とすべき。正直、経済紙の記者と話をしていてもBSをわかっていない人間がいるほど。ましてやお役人に内部留保がどうとか言われたくはない。こうした状況の中で、ウルフ氏はきちんとBSの右と左を論じている。
なによりここの結論がすばらしい。
5つ目の選択肢は、民間部門の慢性的な貯蓄過剰に真正面から切り込むことだ。そのためにはまず、日本が貯蓄をしすぎていることを認識しなければならない。したがって、消費増税はなすべきことの真逆になる。日本企業の過剰な内部留保を賃金と税に移していくことが、最終的に構造的な貯蓄過剰の解消につながる。たとえば、減価償却引当金を大幅に減らすという方法がある。コーポレートガバナンス(企業統治)改革も企業収益の分配の拡大につながりうる。さらにもう1つの可能性として賃上げがある。
ということで私のバイアスがかかった安倍政権の目下の政策と比べてみると一目瞭然。
「賃上げの努力」以外は、ウルフ氏の五番目の提言の真逆をやっているのが現在の経済政策だと。株価が危険なほどさがっている。これは今後の日本の経済成長に対する失望を表している。明らかに中国は消費の力を失ってきている。石油、貴金属等の価格の下落、円高は、明らかに中国に起因する問題だ。
こうした環境下では、インフレ目標の力強い明示による人々の経済成長への期待を高めることと同時に公共投資、なかでも社会資本、次世代の教育に投資をするべき。資源が安くなっているなら、政府主導でも、政府系ファンドを作ってでもどんどん資源資産を買えばいいじゃないかと。やることはいくらでもある。前述のように日本の働いている人は名実ともに世界最高と誇れる仕事をしているのだ。失業率、労働者一人当たりの経済成長などの指標を見ても明らか。日本が作り出している製品のクオリティを見ても明らか。いまの経済環境の急変を見ると、相当に緊急に政策を変更しないとならない。日本こそが世界の需要を生み出す気構えにならないといけない。
安倍首相!期待申し上げておりますゾ!なにとぞこの小さな小さな祈りが届きますように。
■追記
タイトルを刺激的になるように変えた。なにより、補正予算が行われてはいるが、現下の株価急落に象徴される経済環境の変化に対応していない。
早急にアベノミクスの方針を見直すべきだと私には思える。方針を貫くのも勇気がいるが、柔軟に変化するのも勇気。