「反脆弱性」をだらだらと読んでいる。多くの知恵に溢れた書物なのだが、いかんせん長い・・・。とはいえ、ファイナンスの実践と伝統的な家庭環境にはぐくまれた人生を生き抜くための知恵は深い。
タレブの話しでものの見方が変わったのは、物事にはアップサイドのあるものと、ダウンサイドのあるものがあるということだ。ファイナンスの考え方だと明白だ。定期預金は金利が固定なのでアップサイドははない。ただ、銀行が潰れて預金全部が潰れる可能性があるのでダウンサイドは投資額全部となる。株式は、アップサイドが大きい「場合」がある。ヴェンチャー企業の株を買って何倍、何千倍になるというやつだ。95年米国滞在当時にYahoo!の株を買っておけばと千回後悔した。株は紙切れになる可能性もあるのでダウンサイドもある。プット、コールといったオプション取引は更にアップサイド、ダウンサイドが明確に切り分けたものだと言える。人生におけるオプションも同様に、アップサイド、ダウンサイドがあるということをタレブは教えてくれた。*1
ここに凸関数という概念が絡んでくる。
凸関数 - Wikipedia
関数が凸が非凸かとは、脆弱性、反脆弱性に深く関わる考えだと機械学習についての素晴らしい資料を拝見して知った。機械学習において出した答えが最適解かどうかを判定するのが難しい。凸関数であれば最適解は一意に決まるが、非凸であれば「山」(もしくは「谷」)が複数存在する、あるいは分散して解が存在する場合などがそうだ。
http://ibis.t.u-tokyo.ac.jp/suzuki/lecture/2018/ML_Gairon/ML_Gairon_01.pdf
タレブは、「解けない」非凸関数的ふるまいをする出来事、オプション、意思決定であってもダウンサイド、アップサイドは予見可能だと主張している。私達は、ファイナンスの問題においてさえ、関数、グラフで表されないと案外アップサイドが大きいのか、ダウンサイドの方が大きいのか理解できていない。認知の歪みに間違いないのだが、ましてや日常の意思決定において非凸関数的挙動のものごとの「結果」のアップサイド、ダウンサイドを見越した行動ができない。もっとも機械学習においてさえ凸か非凸かが重要なわけだから、生身の人間の認知的行為においては更に難しい。ここが「カモ」になるかならないかの差となるとタレブは主張しているように私には思える。
- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生
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まだまだ学習が足りない・・・。
*1:もっともブログを始めた05年頃にリアル・オプションについて山口浩さんから教えてもらったことはある。
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