「大富裕化」の続き。
「進化は万能」から引用。
進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マットリドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之,吉田三知世
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/06/05
- メディア: 文庫
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世界の人口が20億だったときには飢饉が定期的に襲ってきていたが、人口70億になった現代の世界ではほとんど例がない。リカードの言う1000年前に耕されていたイギリスの畑から得られる小麦の収量でさえ、化学肥料や殺虫剤や品種改良のおかげで、20世紀後半に急増しはじめた。21世紀初めには、産業化が地球上のほとんど隅々まで高い生活水準を広げており、それが永久に欧米の特権のままだろうという大方の悲観的な不安とは正反対の状況になっている。中国は何世紀にもわたって貧困にはまり、何十年ものあいだ恐怖のどん底にあった国だが、突然活気づいて、10億超の国民が世界最大の市場を形成することになった。
まさにここが社会主義/共産主義的歴史観を持つ人々と自由主義的な考えを持つ人との差になると私には思われてならない。資源や収穫が人口ほど伸びていかないのだとすれば、共産主義思想に裏打ちされた静的な世界観の中で社会的資源や富を全体主義的に分配せざるを得ないとなる。
一方、自由主義者つまりは自らの努力、社会の進化により収穫逓増になると信じる者たちは、全体主義的な統制に対して嫌悪感を覚えるだろう。福祉とは究極的には社会的停滞につながりかねず最低限に抑えるべきであり、貪欲に技術開発や、マーケティングに力を注ぐであろう。
まあ、本書の指摘の通り、たまたまこの二世紀ばかりが幸運だったと未来の人間は思い知ることになるのかもしれない。それでも、私は全体主義よりも自由主義者でいたい。