HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

モデル賃金スプレッドシート

他社、他人に期待していても、日本のサラリーマンの給与は上がらない。そして、日本のサラリーマンの給与があがらないと経済も、人々の幸福度もあがらない。

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なにより、大企業で勤務している人々よりも、数で言えば中小企業で働く人の方が多いだろう。そして、案外中小企業は体系的な給与体系となっていない。モデル賃金が存在しない会社もあるのではないだろうか?体系的な給与の一番基本は基本給を職能給にすることだ。そこで、自分の仕事で作ったモデル賃金スプレッドシートをアップしたい。中小企業で体系的な昇給、モデル賃金作成に携わる方の一助となれば幸いだ。

model income

https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vTiGnwKtpvfENrQiWpmYOIlCopa7XSYtZyyGuey41AJHBIo7ACWfjh8yQQgjmIs6akmOF15IRCUw5X5/pubhtml

場合によって問題が生じた場合はこのエントリーでの公開はやめる場合があることをご承知置きいただきたい。また、このスプレッドシートを利用して生じた事象についても責任は負えないことを宣言しておく。

さて、このスプレッドシートでなにをやっているかをひとつひとつ説明するには、一冊二冊の本がかけるほど。もともとは国家公務員の給与体系を作った方が考案した「弥富式」
という考え方を使っている。

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正しい賃金の決め方

正しい賃金の決め方

社長の賃金経営学

社長の賃金経営学

上記のウェブでの公開では数字、関数をいじれないのでよくは伝わらないだろう。実際のスプレッドシート、エクセルの公開は限定としたい。もし、興味を持つ方がいたら捨てアカでいいので、Googleドックスにアクセスできるようにした上でコメント欄等でリクエストしてほしい。

ざっと解説。

  1. 弥富式のすぐれたところは、毎回の業績考課でSABCをきちんと評価しつづければ、その反映としての総原資を決めた上での賞与支給、その累積としての基本給の昇級が行われるようになっているところ。口の悪い人が「Sはスーパースター、めったいにない目を見張る業績を上げた人。Aは会社になくてはならない人。Bはいてもらいたい人。Cはいてもいなくてもいい人。Dはどちらかというと会社にいなくていい人」と言っていた。*1
  2. ベースは「基本給テーブル」。このテーブルでは、1等級から9等級まで、各等級1号から50号まで、金額ベースでは基本給125,000円から1,505,750円までを定義している。額でも、率でも昇級できるようにしてあるので、各社向けにカスタマイズできるだろう。各等級の1号は元々は25%ずつ差がつくようにしてあった。若干等級があがった方が高い比率に調整してある。ここも調整可能。基本、1等級1号の賃金額、各等級毎の上昇比率を決めればすべて生成させるようになっている。
  3. 次に標語テーブル。これは二段階で昇級考課のS、AからDまでの標語を号の昇級に対応させる。基本、B標準で3号あがる。しかし、後述するように職位昇進をしないで同じ等級に留まっている場合は、会社年齢に応じて調整がかかるようになっている。例えば、2等級で29才以上になると1号分調整となる。Bでも2号しかあがらない。以下、37才、43才と調整が「重く」なる。ここがモデル賃金カーブを描いたときに絶妙に聞いてくる。弥富さんの非常に細かい工夫を感じる。つまりにはその年までには、係長、課長と昇進していろという前提なのだ。自社のモデル賃金に合わせて、調整を重くすることも、軽くすることもできる。
  4. 職位テーブルは、役職毎の管理職手当を定義している。会社への貢献が業績考課で毎回評価され、その読み替えで昇級の標語が決まるように運用している。職能給の考えで言えば、基本的な貢献の蓄積、その人自身の能力の評価、生活資金の確保という意味で基本給が存在し、その「役席」に応じた責任と権限によって職位に応じた管理職手当がある。これも各社の考え方。基本給を抑えて役職手当の比率をあげる傾向にあると想う。
  5. ちなみに、昇格(職位昇進)に応じて等級をあげる運営が、弥富式のもう一つの側面である業績考課から賞与額の決定とあわせたとき威力を発揮する。等級があがると賞与の配布ポイントが大幅にあがる仕組みになっている。一方、昇格しないで昇給だけで50号まで行ってしまえば、つぎの等級に移行するという運営が普通。しかし、上記の例の国家公務員行政職の号棒給表を見ると、等級によってかなり号数を足している。昇格、昇進の滞留しているのだろう。
  6. これらの道具立てを基礎としてモデル賃金照合テーブルが成立する。22才入社で約20万円の月給スタートと仮定している。当初2年は業績考課、昇級考課をC運用とし、その後は標準標語Bをとり続けた場合のテーブルとなっている。当初は年次毎に差をつけすぎるのはよくないという発想がある。これも各社の運用に応じてスタートする等級と号を設定すればよい。例として、このモデル賃金で30才で残業20時間、基本的な資格取得済み、主任昇進済みで、仮に賞与が基本給の春夏1ヶ月分と仮定すると年収435万円。賞与年間2ヶ月は最低すぎる仮定と言われるかもしれない。まあ、標準ではないだろうか。50才の基本給38万円も安いようだが、部長昇進していれば年収730万円となる。賞与4ヶ月とれば810万円。大企業とはくらべものにはならないだろうが、中小企業だと標準的くらいではないだろうか。この辺も、等級の昇進をあげて50才までに6等級、7等級までのモデルとすれば、年収1千万超の年収のモデルも作れる。そこは各社に応じた話し。
  7. 現在の給与体系からこの号棒給の移行には、現在の社員の基本給を年齢別に並べて、モデル賃金の各年齢と比べることから始まる。B標準の仮定は変えずに基本給テーブルを設計してみるのがよいように想う。年齢によるばらつきは、過去の成績トレンドを仮定して近似させていけばその年齢でA連続なら一番多い人、C連続なら一番低い人となるようにチェックしてみればよい。

いずれにせよ、弥富式に準じたこのスプレッドシートを使えば、中小企業の「社長の一声」賞与決定、年収決定から決別できる。人間であるので、人の評価はどうしてもぶれる。しかし、弥富式では誠実に評価する態度で続ければ、会社の人財と人材と人在と人罪が自然にふるいにかけられるようになっている。おためしあれ。ほんの少しでも中小企業の賃上げに貢献できれば幸い。


■参照

hpo.hatenablog.com

*1:人財にはAを、人材にはBを、人在(あるだけの人)にはCを、人罪(いることが罪)にはDをとも言える。

*2:あとで、業績考課のスプレッドシートの公開も予定。