HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

コーポレートガバナンスは誰がために?

NHKの番組で、「東芝コーポレートガバナンスの優等生と言われていた」と話していた。当該のページを見てみた。

東芝のガバナンス体制について

当社は、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現し、もって株主、投資家をはじめ従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会等当社に係る全てのステークホルダーの利益に資することを、コーポレート・ガバナンスの基本的な目的としています。
取締役会は、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び仕組みを定めたコーポレートガバナンスガイドラインを制定しました。詳しくは当社ウェブサイトのこちらをご参照ください。

東芝 投資家情報(IR):ガバナンス体制と仕組み

詳しく定められた内容の全文がPDFでも掲載されている。

ここには、批判が相次いでいるようだ。現在の東芝の姿を考えれば、「そりゃ、そうだ」と。ガバナンスとは、結局、人の問題、経営者の姿勢の問題なのだから。

機関設計それ自体は道具にすぎません。
道具の使用方法によってはそのものは薬にも毒にもなります。
形骸化した機関設計を採用していること「だけ」を市場にアピールすることが
最終的には市場の信頼を大きく損ねる、
東芝は、そういうことを示してくれた気がします。
法務部門に所属している私としては、
自己のこととして考えなければならない事例です。


道具をうまく使うか、形骸化するかは、結局、それを使う「人」によるのでしょう。

【株式投資】東芝の事件からコーポレートガバナンスをみる - 不労所得をつくってみようーサラリーマンの挑戦記ー

いまだに「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ」ということを東芝の経営陣は理解していない。コーポレートガバナンス関係の制度設計をした方々も理解していない。*1

b.hatena.ne.jp

この方のコメントの通り。

id:ssig33 コーポレートガバナンス改革 なんてことをできるのは経営者だけだし、年収 550 万で募集とかナメてるとしか思えないし確実に東芝はこのまま倒産するんだなと今分かった

http://b.hatena.ne.jp/entry/322296157/comment/ssig33

私が聞きたかったのは、まさに経営者の覚悟のこもったこういう話し。

Q 半年間、シャープを観察し、業績不振の原因はどこにあったと分析するか。


戴社長 昨年の2月24日に発覚した3600億円の偶発債務問題が象徴的だが、ガバナンスが効いていなかった。中国で乱発したリベートなどが原因だが、きちんとガバナンスが効いていればあんなことは起きない。


太陽光パネル事業ではものすごく高い値段で材料の購入を決めていた。150億円の投資に専務のサイン一つで実行できた。喩えて言えば昔のシャープは社長が液晶パネルの工場を建て、副社長が太陽光パネルの向上を建てる。社長と副社長は仲が悪いから、(配電や排水処理など)ユーティリティーを共用しない。液晶パネルと太陽光パネルは工程が似ているから、多くのユーティリティーを共有できるにもかかわらずだ。


今のシャープでこういうことは起きない。300万円から社長の私が決済しているからだ。この半年で2000件の決済をした。業績が悪く、部門間の横展開がなかったため(部品、装置、材料メーカーなどの)ベンダーとの間で不平等な契約を結ばされているケースもあった。ホンハイの購買力を使えばもっと有利な契約に変えられる。


コスト意識も低かったと言わざるを得ない。この工場(堺工場)の中では社員がエスカレーターに乗っている。まるで、いま日本に来ているサウジアラビアの王様のようだ。

鴻海から来た新社長が吠える!「シャープにはガバナンスがなかった」(大西 康之) | 現代ビジネス | 講談社(1/2)

この覚悟をもった経営者がいるか、いないかで企業の盛衰は決まる。コーポーレートガバナンスは箸のあげおろしにまで口を出すことではない。会社全体を見渡して、ベストプラクティス、最良の改善、売れる商品提案を常にするように社風を変えることだ。稟議とはまさにそのためにある。まず、稟議とは必要な情報を覚悟をもった経営者に集中させるためにあることがまず第一。当たり前だが、成果につながらない稟議があがってくれば、「それは違うだろう」とトップが勇気をもって言う。自分が「聞いてない」など見苦しい面子で発言すれば、あっというまに稟議という意思決定システムは死ぬ。社風を変えるためには、稟議を停め、支払いを止めてでも担当者が自分で解決させる。稟議というとはこがいっぱい押される古くさいイメージがあるかもしれないが、ITを使えば全員同時に情報共有させられる。誰が稟議を停めたかも一発でわかる。担当者への指示、コメントも直接伝えられる。階層がシンプルな経営を行うには、現在のITはすばらしい経営資源、武器となる。

信賞必罰とは、経営幹部にこそ当てはまる。課長、部長クラスではなく、役員社長クラスが失敗をしたら責任を取る。経営幹部の使命の本質は、自分が自分の会社と枕をともにする、命がけで経営するかどうかだ。この期に及んで、コーポレートガバナンス担当者を外部から招くなど笑止千万。戴社長を見習えと。

盛和塾ではこういうエピソードが語られている。盛和塾には、「稲盛経営12ヵ条」というのがある。この中に「誰にも負けない努力をする」という条がある。ある塾生が塾長に、「毎日社員に経営12ヶ条を読ませているのですが、社員がなかなか『誰にも負けない努力をする』を実行してくれません」と質問した。塾長は即座に、「馬鹿者!誰にも負けない努力はお前がするんだ」と叱り飛ばしたという。


■余談

ちなみに、戴社長のIoTの話し。

ITの使い方において、日本はすでに先進国とは言えない。2020年にはIoTで一番遅れた国になっているかもしれない。

鴻海から来た新社長が吠える!「シャープにはガバナンスがなかった」(大西 康之) | 現代ビジネス | 講談社(2/2)

これは本当だ。ホテル業においてもそう。日本で一番ホテル業のIoT化が進んでいるこの素晴らしい「変なホテル」はそのままでは全国展開できない。

hpo.hatenablog.com

世界一のホテルチェーン、SPGのIoT、スマフォを使ってキーレスチェックインが日本ではいまだに認められない。サービスが一番遅れている国になっている。

SPG Keyless

Starwood Prefered Guest

キーレスが採用されている全世界のホテルのリストに日本のホテルはひとつもない。

不思議でしょうがないのは、旅館業法、ホテル関連法規のどこにもスマフォでチェックインしてはならないとは書いていない。しかし、現実のホテル、旅館関係業界では誰に聞いても、無人チェックインはできないと言う。

旅館業法

過去の風営法との関連からなのだろうか?不思議の国日本だ。

*1:ちなみに、ガバナンスの問題を案外わかりやすく「マイ・インターン」という映画が語ってくれていた。