HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

空中都市008の自動運転

最近、どっちを見ても自動運転の話しばかり。あるタクシー会社の社長と話していたら、今度無人のロボットタクシーのサービスが米国で実用化されるらしいという話しを聴いて危機感を募らせているとおっしゃってた。

米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)はスマートフォンを利用した米国の配車サービス会社「リフト」と組み、GMの新型電気自動車(EV)を使った自動運転タクシーの公道実験を1年以内に始める。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が5日、リフト幹部の話として報じた。

自動運転タクシーが公道を走る? 米GMが1年内に実験へ - 産経ニュース

この社長さんも指摘していたが、ロボットタクシー、無人トラックが威力を発揮するのは、すべての車が自動運転化された時。それまでは、外部経済性というのだろうか、人が運転する車がリスクとなる。

ちなみに、自動運転の車が完全に普及してもコンピューターのリスクがあると、半世紀前に小松左京は「空中都市008」で描いている。

空中都市008 アオゾラ市のものがたり (講談社青い鳥文庫)

空中都市008 アオゾラ市のものがたり (講談社青い鳥文庫)

ジニーちゃんは、ちょっとかたをすくめてしたを出すと、エアカーの運転台にある誘導ボタンをおしました。このごろの乗り物には、みんな自動操縦装置がついています。そして、数字とアルファベット(ABC[エービーシー]のこと)のついたボタンをいきたい場所の番号にあわせておし、スイッチをいれてやれば、あとは乗り物の中に組みこまれた電子脳が、交通管制局から出ている電波をうけて、自動的にいちばんすいている道路をえらんで、乗り物を運転していきます。
乗り物のまえには、レーダーがついていて、人や、ほかの乗り物にぶつからないようになっています。--つまりこのごろの乗り物は、よほどのことがないかぎり、人が自分で運転しなくてもいいようになっています。あぶない運転は、みんな機械がやってくれるのです。だから、子どもたちだけでのっても、ちっともあぶないことはありません。

NHKの人形劇にもなった。

cgi2.nhk.or.jp

この段の後に、突然コンピューターが故障し、自動車の中でジニーちゃん達と載っていたお父さんが自分で運転しなければならなくなる。幸いなことに、お父さんはまだ人間が運転していた頃の腕前があったから、大事故、大惨事にならずに済んだ。しかし、自動運転が当たり前のジニーちゃん世代になって突然コンピューターの自動運転ができなくなったらどうするのだろうか?

ここにも、ブラックスワンべき乗則的危機が隠れている。

生命現象も、時系列の事象がつぎつぎにつらなっていくことで生じている。DNAのレベルから、心臓の心拍、脳の思考、筋肉の動きなど、すべては長い長い歴史の中で織り込まれて出てきてた非線形現象であり、自己組織化現象である。だから、どのレベルにおいてもバタフライ効果の危険性は常に存在するといえる。だが、生命は数十億年も続いている。地球上のすべての生命がなんらかの形で親戚であることは広く知られている。ここが生命というシステムのロバスト性だ。生命というシステムは十分に「したたか」なのである。

複雑系とロバスト性 - HPO機密日誌