「人間ども集まれ!」の雑誌収録版を読んで、性の無い人造人間が人間を支配するという構図は、「アポロの歌」の「女王シグマ」と同じだと気づいた。
- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 1999/02
- メディア: 単行本
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- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 手塚プロダクション
- 発売日: 2014/04/25
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以下、ネタバレを含む。
「アポロの歌」の方が構図としてわかりやすい。人間を支配するに至った性をもたない「合成人」が人を支配すると。そして、そのリーダーが性に目覚め、自ら性を手術により獲得すると。性と愛を扱った「アポロ」において「性の無い状態」とはいかなるものかを展開することにより、逆に性と愛の必然が描かれる。
「人間ども集まれ!」と「アポロ」の登場人物を比べれば、リーダーである「女王シグマ」に当たるのが無性人間のリーダー、「未来(みき)」となる。単行本掲載時には、無性人間が人間を支配する場面で終わる。父親である天下太平が、未来の愛を拒絶するラストシーンは、大変印象に残った。ところが、「人間ども集まれ!」の雑誌掲載版ではここで終わらない。なんと、「未来」自身が性を獲得し、愛に目覚める。そして、無性人間すべてが性を獲得し、またもとの世界へ戻っていく。
「人間ども」の雑誌掲載が1967年から68年。「アポロ」が1970年から。そして、「人間ども」の今確認できる一番古い単行本が73年。正直、雑誌掲載版の性の獲得はかなり唐突な印象を受ける。無性の人造人間が性を獲得する展開を「アポロ」できちんと語り終えた手塚治虫にとって、このラストは単行本では削るべきだと判断したのだろう。
- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 虫プロ
- 発売日: 1973
- メディア: コミック
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■余談
「アポロ」の「女王シグマ」=「渡ひろみ」(!)と、メルモは同一人物だったと・・・。びっくり。
キャンディーを食べると大人になったり赤ちゃんに戻ったり、あるいはほかの動物に変身したりする、というメタモルフォーゼを得意とした少女キャラクターですが、彼女も長じてからは「いたいけな女性」をメインに演じました。とはいえ、『アポロの歌』ではメルモ同様に「人間の愛と性」というテーマの中でさまざまな女性の人生を演じ分けて見せるほどの演技力を見せつけました。
女王シグマ:キャラクター名鑑:TezukaOsamu.net(JP) 手塚治虫 公式サイト
あ、逆だと。渡ひろみがいて、メルモになったと。
初出時期のCOM誌上の作者コラムによれば、本作のアニメ化企画があったようで、これが転じて「ふしぎなメルモ」のアニメ化に繋がったようである。
アポロの歌 - Wikipedia
「性教育漫画」として注目された。「ふしぎなメルモ」のアニメ化の際のパイロットフィルムは「アポロの歌」のタイトルで創られたが本作とは別物。
アポロの歌(The song of Apollo)