倉山満氏の「保守の心得」を読了した。英国の法格言だという「憲法は骨、習律は筋肉」は全く同感。
- 作者: 倉山満
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2014/03/01
- メディア: 新書
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多くの日本人は、憲法というと日本国憲法の前文と百三条(の条文)を思い浮かべると想います。しかし、文字で書かれた憲法典が、憲法のすべてではありません。憲法典は、肉体に例えるなら骨です。骨を動かす筋肉が、憲法習律なのです。イギリスにはそのまま「憲法は骨、習律は筋肉」という法格言まであるほどです。
以前、山本七平を読んで「憲法は骨」であることを実感した。昭和天皇ご自身がこのことを身をもってお示し下さっている。
日本の社会は日本国憲法だけで成り立っているのではないと主張したい。憲法制定にいたる歴史と精神があって、いまの時代がある。成文憲法である日本国憲法がすべてではない。昭和天皇の立憲君主制への精神を広く学ばなければならない。
日本の憲法とは不文憲法だ - HPO機密日誌
本書の結論は、憲法の改正の議論の前に政治家と国民の間で「憲法観の形成、憲法習律、憲法付属法」が必要だということになる。習律とはなにか?ぐぐってみると、倉山氏自身の論文が出てきた。
Yoshino idealized british constitutional government, and demanded the practice and the convention in Japan.
CiNii 論文 - 吉野作造における憲法習律
試訳させていただけば、「吉野(作蔵)は、英国の立憲政府(政治)を理想とし、日本においても(憲法)習立の実行を要望した」という意味かと受け止める。本書を完全に理解しようとすれば、吉野作造を読む必要があるのかもしれない。いずれにせよ、未来の日本において憲法を改正するなら、日本国憲法ではなく帝国憲法をベースに改正を加えた方がはるかに英国流の不成文憲法、憲法習律の実行に近づけるのだとは私も想う。
人口減少の今こそ、未来を見据えて国の形とはなにかを議論し、憲法観の合意とやらを形成すべきときだと想う。そもそも、近代日本が伸びたのは、明治維新で守旧派の老人を斬り捨てて若者が世に出た時と、太平洋戦争でこれまた守旧派の体制が崩れ若者が活躍せざるを得ない時であった。保守である私は本来認めたくない事実だが、老人こそ若者の捕食動物なのだと実感せざるを得ない。
日本の人口動態予測に捕食動物項を導入してみる - HPO機密日誌
ここひとつをもっても、尊厳死を認めるのか、年寄りへの福祉とはどの程度までが妥当なのかを真剣に議論し、憲法観として国民の間で合意が形成されないと真剣に日本は滅びる。移民を認めるとか小手先の問題ではないと私は想う。
まあ、とにもかくにも考えて、行動し続けたい。自分自身が老人になってしまう前に。