長谷川三千子氏の「正義の喪失」を読んでいる。本書の「ボーダーレスエコノミー批判」によれば、自由主義経済学とマルクス経済学のそれぞれの祖であるアダム・スミスとカール・マルクスにおいて、分業=信頼による飛躍的な生産性向上と、暴力による圧倒的な民族浄化は、予言されていたと。つまりは、マット・リドレーの「繁栄」とジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」はひとつも新しくはないと。
「アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界」で展開されたアダム・スミスの主張を人類十万年の歴史の中で検証していったのが、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」とマット・リドリーの「繁栄」ではないだろうか。
アダム・スミス、ジャレド・ダイアモンド、マット・リドリー - HPO機密日誌
- 作者: 長谷川三千子
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マット・リドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: ジャレドダイアモンド
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2013/07/12
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (5件) を見る
マット・リドレーも、ジャレド・ダイアモンドも進化心理学、進化経済学の最新の成果だと信じていた私はあまりにナイーブだったようだ。
さすがに、アダム・スミスがどれだけ遠い射程で人の信頼、分業の大切さを語っていたかは気づいていた。
多くの利益を生み出すこの分業は、もともとは、それが生み出す一般的富裕を予見し意図するという人間の英知の結果ではない。それは、そのような広範な有用性を目指す訳ではない人間本性の一つの成功、すなわちある物を他の物と取引し、交換し、交易する性向の、きわめて緩慢で漸次的であるが、必然的な結果なのである。
アダム・スミスはフェアプレイの経済が発展することを「発見」した。 - HPO機密日誌
しかし、カール・マルクスにおいてどれだけ当時の民族的な偏見により白人世界のみを世界としていたかは別として、べき乗則といえるほどの突然で激しい暴力によって資本主義が破壊されるかを語っていたとは知らなかった。もう一度「資本論」にチャレンジする必要があるかもしれない。