NHKスペシャルの「ヒューマン なぜ人間になれたのか 第一集」をオンデマンドで210円払って見た。国営放送がコンテンツにお金を払わせるのかという気持ちは残ったが、オンデマンドはなかなか便利なサービスだといわざるを得ない。
これは、マット・リドレーの「繁栄」の話だなと。
「繁栄」の中でネアンデルタール人は「分業」できなかったが、クロマニヨン人は「分業」できたという話しがあった。
争いを避けるために発生した「礼儀」が互いに尊重し合うことに発展し、「分業」を可能にしたのだと私は信じる。
「礼儀」の発生の時から、人の生産性の向上とは比較優位=分業以外にない。分業して、専門性を高める以外にどのような生産性向上の方法を人は発見できたか?冷静に考えてみると、ない。
「礼儀」という比較優位 - HPO:機密日誌
ネアンデルタール人が狩りに行くときは、男も女も子どももみんな集落から出てしまったという。狩りの成果の分配をうまく行えなかったから。分業できなかっったから。クロマニヨン人と同じ石器を作るだけの知能は持ち合わせていたのに。10万年も進歩させられれなかった石器が、分かち合い、分業ができるようになった途端に一気に進化した。様々なヴァリエーションへを生み、華麗なまでの道具の進歩につながった。マット・リドレーのここの描写は非常に説得力があった。

- 作者: マット・リドレー,Matt Ridley,柴田 裕之,大田 直子,鍛原 多惠子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/10/22
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ここからお金の誕生までどうNHKはつなげていくつもりなのか。これから順番に「ヒューマン」を見ていこうと思っている。そもそも、分かち合いの大切さを主張するなら、こういうすばらしいドキュメンタリーをオンデマンドで無料で分かち合うべきじゃないかとは思うが。
分かち合いの発展のヒントをid:sakamataさんからいただいた。sakamataさんは、「分かち合いをひろげる」ための「お金」という話しを某所でされていた。
分かち合いから、交換が生まれ、商品が生まれ、市場が生まれ、お金が生まれ、商人が生まれていく。sakamataさんのおっしゃるとおり、分かち合いのよろこびをより遠くへ、より未来へ広げていくための道具が本来のお金であったと信じたい。
ジェイコブズの「市場の倫理」の発生の根幹は、分かち合いであるかもしれない。そして、ジェイコブズが「市場の倫理」で取り上げたように、貪欲さの象徴となってしまったお金をもういちど本来の分かち合いのための道具とする試みが地域通貨やマイクロファイナンスなどの試みなのだと考える。

- 作者: ジェインジェイコブズ,Jane Jacobs,香西泰
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
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ちなみに、分かち合いからお金が発生する様子をシミュレーションで見事に再現したのが、安冨先生の「貨幣の複雑性」の論考だ。

- 作者: 安冨歩
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