「ワイルド・ソウル」を読み続けている。これは最高のエンターテイメントだ。大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の三冠がうなづける。
- 作者: 垣根涼介
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背景にあるブラジルへのほとんど棄民政策といえる1950年代以降の移民の問題がある。Wikipediaでの記述には、20世紀の初めのころの移民はともかく、戦後の移民が過酷であったという記述はない。
1951年に日本とブラジルの国交が回復したことを受けて、ヴァルガス大統領は日本人移民の受け入れ再開を認め、1953年から移民の送り出しが再開された。さらに1954年には、外務省が移民送り出しのための機関として「日本海外協会連合会」を設立した他、1955年には日本人移民への開拓地の分譲促進を目的とした「日本海外移住振興会社」が設立された。これらの政府による施策が行われたこともありブラジルへの移民数が増加し、1959年に日本人移民は年間で7000人を超え、延べ移民総数は13万人に達した。
日系ブラジル人 - Wikipedia
やはり、取材日記も読んでみる必要があるかもしれない。どこまでが創作で、どこまでが現実の政策であったかを知りたい。
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誰もが知っているように、現在は少子高齢化、人口減少社会に日本は突入している。しかし、この小説が扱う「アマゾン棄民」のようについこの間まで、日本は人口の増加を大きな問題としてきた。ブラジルだけをとっても、19世紀の終わりにはその下地が作られ、1907年には正式に移民を開始している。
移民 - Wikipedia
満州事変すらも、増加する日本の人口への対応で起こったとも言われている。戦後のいわゆる「家族計画」の普及も、人口増加問題への対応であった。移民が約束の地を過大に広告したように、日本は人口の抑制が明るい未来へつながると政府は広報してきた。そうそう、「明るい家族計画」なんて言葉もあった。
■追記
本書の後半で暗示された本がいくつか見つかった。
- 作者: 新正卓
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- 作者: 若槻泰雄
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- メディア: 単行本
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