HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

石油はあれども石油はなし

「日本人はなぜ戦争をしたか」を読了。昨日書いたように、青春小説というか、教養小説のようだった。戦前の青年たちの熱さが伝わる。

本書の焦眉は、当時三十歳代の大日本帝国「ベスト&ブライティスト」を集めた「総力戦研究所」の1期生が、昭和16年夏の時点で、日本必敗を予測していたということ。その根拠として、南進して仮に石油を確保しても、それを運ぶ商船が足りなくなるであろうことを予測していたと。

逆に言えば、当時の政府は南進した場合の石油確保までは予測していても、船舶の量と撃沈数を無視して開戦を決意したと。企画院総裁、鈴木貞一氏のインタビューまでしてウラをとっている。しかし、戦争遂行決意としてはあまりに杜撰だ。

石油産出国であるインドネシア占領が、実は開戦の焦眉だったとは知らなかった。実際、500万バレルと、戦争遂行に必要な石油量を確保するが、インドネシアまでの制海権、制空権がにぎれず日本本土まで運べなかったと。大変残念。

文中、なんとはなしにその子孫の方と知り合いかもしれない人名が出てきていた。あとでよく調べてみたい。

東条英機の開戦前後の動きと東京裁判に関しては、「未完のファシズム」、「秘録 東京裁判」とかなり重なる。能吏として、天皇の忠実な臣下としての東条英機であり、そのために統帥権という明治憲法下の「しろしめす天皇」に翻弄されたのだと。

秘録 東京裁判 (中公文庫BIBLIO20世紀)

秘録 東京裁判 (中公文庫BIBLIO20世紀)