HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「留用された日本人」

読み始めた。城野先生の記述と驚くほど一致している。まあ、近現代史だからあたりまえだが。

「留用」された日本人―私たちは中国建国を支えた NHKスペシャルセレクション

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祖国復興に戦った男たち―終戦後四年間も中国で戦った日本人の記録

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やはり、本書でも、当初圧倒的戦力であった国民党軍が負けた理由は、人民解放軍の規律正しさと、小作人への土地解放にあると記述されている。

しかし、見事に山西残留組については無視されている。空軍創設に協力した日本兵と、太原の日本兵は日本人同士で戦ったのではなかろうか?


■「拉致」と呼ぶべき「留用」と通化事件

林航空隊がやけに簡単に空軍創設に死命をかけて取り組むことを了承したことに違和感があった。NHKのこの本が隠している事実があった。

通化事件(つうかじけん)とは1946年2月3日に中国共産党に占領されたかつての満州国通化省通化市で中華民国政府の要請に呼応した日本人の蜂起とその鎮圧後に行われた中国共産党軍と朝鮮人義勇軍南満支隊(李紅光支隊)による日本人及び中国人に対する虐殺事件。日本人3000人が虐殺されたとされている[1]。中国では二・三事件とも呼ばれる。

通化事件 - Wikipedia

本書にもあるとおり、この事件の時期に林航空隊は通化市にいた。

(1945年)12月下旬、通化への移動が始まった。時には吹雪が舞う悪天候の中、空路と陸路に分かれ、およそ二百キロメートル先の通化を目指した。


(中略)


三月、東北航校(林航空隊)は、またもや通化から牡丹江へ移転することになった。通化へ移って、わずか三ヶ月後のことだった。国民党の偵察機が上空を飛来するようになり、もはや通化も安全ではなくなっていたのである。


大きな地図で見る

Googleマップによると、通化市から牡丹江までは550kmほどだ。

1946年に国民党軍が通化を占領したのは事実。だが、通化事件の影響で移転したのではないだろうか?なにしろひどい。

同年2月に通化事件が起こると、隊員が数名事件に関係したことが明らかになり、中国共産党中央から林を銃殺するよう3度命令が出された。林は事件前日に蜂起の情報を政治委員の前田光繁に伝えていたため、政治委員の黄乃一が弁明を務めた結果処刑を免れたが、航空総隊の人事権は前田に移された[1]。3月1日に東北民主聯軍航空学校が発足すると飛行主任教官に任命され、中国共産軍の航空隊育成を行った。

林弥一郎 - Wikipedia

逆に通化にいた日本人側からみれば林のせいで虐殺されたといわれても仕方がない状況であったようだ。

2月2日、正午過ぎに林少佐は蜂起の情報を前田光繁に電話で伝えた。前田は中国人政治委員の黄乃一を通じて航空総隊隊長の朱瑞(zh)に報告した。

(中略)

2月3日、中国共産党便衣兵や日本人協力者などからすでに情報を集めており、重火器を装備して日本人の襲撃に備えた。

(中略)

3000人以上に上る拘束者は小銃で殴りつけられるなどして旧通運会社の社宅などの建物の各部屋に押し込んだ[20]。専員公署では8畳ほどの部屋に120人が強引に押し込められた[21]。拘束された日本人は、あまりの狭さに身動きが一切とれず、大小便垂れ流しのまま5日間立ったままの状態にされた。抑留中は酸欠で「口をパクパクしている人達」や、精神に異常をきたし声を出すものなどが続出したが、そのたびに窓から銃撃され、窓際の人間が殺害された。殺害された者は立ったままの姿勢で放置されるか、他の抑留者の足元で踏み板とされた。足元が血の海になったが死体を外に出すこともできなかった[22]。三日間に渡って山中の倉庫に収容された中西隆も同様の体験をしている。中西を始めとする90人余りの日本人は数日間に渡って立ったまますし詰め状態で監禁されたため、発狂者が出るにいたった[23]。朝鮮人兵士達は黙らせるよう怒鳴るとともに窓際の6人を射殺し[23]、「お前たちはそのうち銃殺だ。ぱっと散る同期の桜じゃないか。36年の恨みを晴らしてやろう」と述べている[23]。蜂起計画に関与しなかった一般市民を含めて、民間の2千人(数千人とも)近くが殺された[24]。また、数百人が凍傷に罹り不具者となった。

文中の「中西隆」は、林少佐と同じ航空隊の整備部門の長のことであると思われる。最初はある意味、別の意図で空軍設立に協力に同意したかもしれないが、目の前で同胞が三千人も殺されたのでは、死命を賭して「協力」するしかない。

本書の問題は、これだけ中国共産党の「空軍創設に協力した日本人」がかかわっている事件を全く無視している点だ。ほかにも、明らかに中国側に偏った記述が多い。