急速な円高が進む中、村上龍の「希望の国のエクソダス」の通過をめぐる息もつかせぬ駆け引きのクライマックス部分を読み進めるのはなかなか臨場感があった。
円ドル相場はここ数日で円高・ドル安が加速していた。米連邦公開市場委員会(FOMC)が24日発表した議事要旨で「秩序だったドル安」とドル安を容認する姿勢をにじませたのをきっかけに、ドルの先安観が強まり、円が買われた。
日本経済新聞
考えてみれば、麻生前総理の10兆円のIMF拠出も、「アジア通貨基金」創設と符丁が合う。これから半年以内に円の大暴落が起これば、ほんとうに本書の予測通り。
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/05
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しかし、まさか、ここでフラクタルが出てくるとは思わなかった。
男のキャスターが、リスクの特定って言ったけどきちんと理論づけて考えているの?と余計だと思われる突っ込みを入れた。すると青のジャケットの子はすかさずカオス理論を展開した。ポジティブフィードバック、非線形システムの自己相似現象、ファイゲンバウム・ツリー、不動点アトラクター、バタフライ効果、ノア効果などの難解な言葉を多用しながら、カオス理論はちょっと古いけどリスク特定には使えると思います、と最期にそう付け加えた。
ただし、ここに出てくる単語ってみんな「極端なリスクは線形論理では予測できない」ということを説明するための用語だ。いまのところ「リスクの特定」には、カオス理論は使えない。
だから、ましてここの前のこのせりふとはつながらない。
(日本という国では)要するに2、3パーセント程度の確率で起こる中小規模のアクシデントやクライシスに対するリスクの特定はできているんだけど、0.000001パーセントの確率で起こる超大規模アクシデントやクライシスに対しては最初からのリスクの算出はやらなくてもいいということになっているんです。
これも、「0.000001パーセントの確率」の危機には事前には対応のしようがないというのが、フラクタル理論やブラック・スワンから導かれる結論だ。というか、「2、3パーセント程度の確率で起こる中小規模のアクシデントやクライシス」を甘んじて受け入れることのが、「超大規模アクシデントやクライシス」への最大のリスク管理だと私は思う。
つまりは、この部分だけをとらまえればまったく逆のことを言っている。
ちなみに、ファイゲンバウム・ツリーってこれだそうだ。知らなかった。
wikipediaによると、ロジスティック式の係数によってXnの値が収束していくところを示しているという。
横軸はaを、縦軸はXn収束する値を表している。a=3で2値の振動へと分岐し、更に分岐を繰り返していくことが分かる。
カオス理論 - Wikipedia
これをどうリスク管理に使うのだろうか?かなり疑問。
■霧のように広がるリスク
朝になって改めて考えてみた。まぁ、ロジスティック式で示されるカオスの部分、上のファイゲンバウムでいえば、右側の霧のように広がっている値の部分が、通常のリスク管理では考慮しないくらい極端な値であることは確かだ。ブラックスワンの飛び立つ場所ではある。この濃淡を極端なリスクの管理に使えるかと言えば、対処にかかわる費用の方が削減できるリスク費用よりも大きくなるのは自明であろう。
ま、つまりはこの「青のジャケットの子」は大人をけむにまきたかっただけなわけだ。