HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

地域も建設業も生態系なのだ

つまり崩れる時は一気に崩れる。

建設業界でいま起こっていることをここで書くことは少々勇気がいるのだが、あえて書きたい。

いま確実に現場で手を動かしてくれる人が減っている。その他、原油や原材料の価格の上昇とあいあまって、建設業界の連中は口をそろえて「インフレだ」と言っている。ま、それはいいとしよう。

また、いろいろな統計によると開発型の経済から脱却しつつある日本は、これから官民合わせても昭和50年代前半のレベルまで工事の着工数が落ち込むという予測があり、十万社単位で建設、土木関連の会社も減っていくのだという。これも、しようがないかもしれない。

建設業は好むと好まざるとにかかわらず、製造業などと違い*1垂直統合が進んでいない。大手ゼネコンでも、ハウスメーカーでも、町場の工務店でも、仕事をする地域の専門業者にその仕事のかなりの部分を負っている。大工さんとか、設備業者とか、内装業者などさまざまな業種が必要なのだが、その行動半径は広いようで狭い*2。つまりは、どこに仕事を依頼しようと現場で仕事をしている人は案外いっしょだったりする。

下請けばかりが強調されるが、逆の上請けも存在する。地方の業者が受けた仕事を大手業者が受けることもある。あるいは、設備業者などで盛んだと聞くがお互いに仕事を下請けしあうことにより、仕事の量の調整をしていたりする。ネットワークの中で柔軟性を確保していたりするわけだ。

逆にいえば、1社独占、あるいは数社の寡占にならないことで、好不況の波に耐えてきた。

抽象化した言い方をしてしまえば、建設業界は生態系的なネットワークにより支えられている。この中では、協力したり競争したり、いわば食べたり食べられたり、しながら日本国内で生じる建築需要を支えている。このネットワークはいままでは、どちらかというと膨張しつづけてきた。これは業者数の変化を調べてもらえばすぐわかることだ。しかし、先に書いたとおりこれからは縮小していく。

生態系が膨張していく時と、縮小していく時の差で、一番恐ろしいのは、生態系、ネットワークとしての建設業界自体が環境の変化に対応できずに消滅してしまう恐れがあるということだ。ネットっワークをつなぐ大小のハブの役割を果たしてきた業者がいなくなれば、そのハブにつながるネットワークはかなりの危機に直面する。あるいは、数は少ないが特定かつ不可欠な役割を果たしてきた業種もある。たとえば、鉄骨業者などは一旦廃業してしまうと再建するのが難しいし、多種多様な特殊な部品を作っていたりする。これらの業種が一気に数を減らした時、関連するネットワーク自体が一気に破滅を迎える可能性が高まってきている。家畜を過剰に飼ったり、焼畑農業をすることで、生態系の砂漠化が進んでいるとも聞くが、これは建設業界の砂漠化だ。

同様にして、地域というのもさまざまな業種、さまざまな人間関係があってできあがっている。そもそも、人が生きるのに一通りの役割を持つ人々のセットがなければ生きていけない。の学校(教育)、秩序維持(警察、消防)、健康(医療)などの人が生活するためにどうしても必要な機能は国や地方自治体が提供してくるとはいえ、職がなければ生きていけないし、食の確保、金融機能、通信、放送、生活環境維持など、民間業者がいなければ維持できない生活に必要な機能はあまりに多い。私は専門家ではないが、地域社会が縮小していくときにどこかに必ず生活を維持するための限界があるはずだ。「限界集落」とももちさんがおっしゃっていた気がする。

限界集落(げんかいしゅうらく)とは、過疎化などで人口の50%が65歳以上の高齢者になり、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になった集落のことを指す。

限界集落 - Wikipedia

まさにこの状態だ。砂漠化というよりも「限界業界ネット」状態というのだろうか?

国土庁が1999年に行った調査においては、やがて消え去る集落の数は日本全体で約2,000集落以上であるとしていた。近年、下記の二つの調査結果が発表されている。

限界集落 - Wikipedia

[強調はHPO]

逆に、建設業界で自動車や電機などの製造業のように寡占が進んだときのことを考えてみたい。ちょうど火の鳥の「メガロポリス?ヤマト」状態になった時ともいえる。(ただいま思考中)

未来編
初出:『COM』(1967年12月号〜1968年9月号)
西暦3404年。地球は滅亡の淵にあり、地上に人間はおろか生物はほとんど住めなくなっていた。人間たちは地下都市“永遠の都”ことメガロポリスでコンピュータに自らの支配を委ねた。メガロポリス・ヤマトと「レングード」の対立に端を発した戦争勃発で、あらゆる生物が死に絶える。

火の鳥 (漫画) - Wikipedia

[強調はHPO]


教えていただいてやっとわかった。

製造業に関しては、建設のそれとは比べものにならないほど、多数の深い下請けがいると思う。

生態系としていうなら、あの三角形が高く急な(とがった)のが製造業、なだらかで底辺が広いのが建設業かなと。

製造業と建設業 - tangkai-hatiの日記

これを図にしてみた。非常に納得した。


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「製造業と建設業比較」(PDF)

「製造業と建設業比較」(PPT)


■なるほど

http://d.hatena.ne.jp/Gelsy/20091005/1254670703

*1:部分メーカー、モジュールメーカーなどもあるわけなので、実は製造業も一社ですべてを独占しているわけではなのだろうが、表面的には建設請負業とはかなり違うように思われる。またこの辺は考える。

*2:微妙な言い方しかできなにのだが、業者さんによってはかなり遠方に「出稼ぎ」に行ってしまうものもいる。それでも、必ず本拠地、特定の出先は存在するように思われる。