終身保証という制度は文字どうり過保護なゆりかごなわけだ。この辺の行き着く先はサイエンスフィクションという分野でいやというほど繰り返しシミュレーションされている。
- 作者: 萩尾望都
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 1992/11
- メディア: コミック
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この完璧に設計された社会で、内罰的な規制すら埋め込まれてしまった若年層たちにできることはなにもしないということだ。反抗することすら社会に取り込まれてしまうこの世の中では、なにもしないことだけが違和感ばかりがつのるこの社会を崩壊させることだ。
セックスをしなければ、子どもという未来に対して責任を持つことすら必要がない。未来を築く原動力である子どもやパートナーに対する愛すら感じる必要がない。
だから、「ゲド戦記」のテナーは永遠の命のグロテスクさを訴えるのだろう。
実は、小説版の4巻と映画版とで一番大きな差は性の取り扱いだろう。テナーが竜になることで隠喩されている男女の関係はあるが、もっとおだやかなセックスが語られる。これは最初の3巻までとの大きなル=グインの変化だ。もっとも、異性人とのセックスとかレイプとかまで小説に書いた老境のル=グインにこの映画が暴力的だと批判する資格はないだろうと思うのは私だけだろうか?