本当に本書を読んでいる間は悪夢の中をさまよっているような気がした。ちょうどクライマックスの文化大革命のあたりの家族構成がいまの私に近いのだ。「お母さん」が38歳で「下放」されたときの様子を「50代以上に見えた」と書かれていたのが胸が痛んだ。
それでも、これだけの激動をこの家族が生き抜いてきたのは、意思の力と家庭の教育力の力なのだと思う。王愚(愚に徹する)という名前の通り、父親は子どもに信念を見せたのだと思う。また、書籍の読み解きを通して、古典を含む生きた学問の形を子どもに見事に伝えた。
一方、本書で語れる文化大革命に代表される政治の苛烈さがあまりに印象的だ。歴史を通して民族性は変わらないのかもしれないと数冊の中国関連の本を読んで感じていた。現在表面に見えてきている中国の特性というのものはかなり文化大革命以後に形成されたものであるのだと知った。いや、本書によれば民主主義と大改革を志向した中国において、毛沢東が皇帝への先祖帰りを起こしたというべきなのだろうか?「ナウシカ」の皇弟を思い出す。
それにしても歴史なのだ。フィクションでない歴史をまなぶことは、今を理解することになる。ここで述べられた真実は、現在の日本にもそのままあてはなる。中国の歴史に何度か見られた政治への民衆の参加という問題は、日本においてもこのまま政治への無関心が続けばかならず変質を起こすであろう。日本における民主主義と権威主義政治が問われる日は近いのではないかと感じた。
- 作者: ユンチアン,土屋京子
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