HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

Google Apps Script本

何冊か並行して読んでいる。

「サーバレス」本で「ああ、こういうことまでできちゃうんだ」と関心し、これだけではJava Scriptとしての構文、制御がまったくわからないので、「完全入門」を一から読んでる。Googleスプレッドシートなどの操作は、「スクリプティング」に詳しい感じ。

正直、完全にマスターして、会社向けの自動化、生産性向上につなげたいとは思っているのだが、業務の調整上で言えば人に任すか外注になるのかもしれない。フリーランスの募集サイトとか行けば、こういうことに長けた人財が見つかるのだろうか。

誰も管理職になんかなりたくない

前にモデル賃金のエクセルを公開した。賃金モデルをつくると、管理職に入りたくなくなる「壁」があることに気づく。

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このモデル賃金は本給だけしか扱っていない。そして、30代半ばでの管理職昇進を仮定している。この時点で、本給月額27万円とする。これでも、エントリーを見てもらえればわかるが、年収500万円弱となる。月の所定内労働時間を仮に、175時間とする。そうすると、27万円÷175時間✕1.25=1928円/時間となる。月30時間の残業で57,857円、40時間で77,120円となる。このレベルの残業が常態化していれば、管理職手当の係長と課長で6万から8万円程度差がなければならないことになる。係長手当が3〜4万だとすると、課長手当で約10〜12万円必要となる。なかなかこれだけの課長職の管理職手当をつけられない。現実には、係長クラスから課長になって月給の手取りが減る人は多いのではないだろうか?責任も増え、手取りも減るのだとすれば、誰も管理職にはなりたくなくなる。昔のように、「俺はこの会社の社長になってやる!」という殊勝な野望を描く若者がいなくなる理由はこんなところにもある。

政府の働き方改革裁量労働制だが、もう普通にいろいろな会社が取り組んでいて、それをどちらかというと労働者側の負担になりすぎないように規制をかけるのが今回の趣旨のように想うのだが違うのだろうか?高度な技能を要求される仕事ほど、時間よりも成果に焦点をあてて給与が決められるのは当たり前ではないかと想う。上記の係長までと課長クラスが違うのは、日給月給制と月給月給制だと私は聞いた。係長までは時間で給与が決まるが、課長クラス以上は成果に対して給与が払われるのだと。1日も会社に来なくても、部下をマネジメントして、会社の経営目標を達成しているのなら、会社はよろこんでその課長=マネージャーに給与を払うだろう。課長職が重要なのは、マネージャー、managementを実現する人になるからなのだと私は信じる。

中国の顔認証技術と9.11テロ

日本経済新聞の記事を読んでのけぞった。

 精度の高い顔認証アルゴリズムにはディープラーニングが使われているため、このシステムを学習させる大量のデータが必要になる。中国は17年、13億人の国民を数秒で特定できる巨大な顔認証データベースを構築した。90%の精度を達成するのが目標だ。

中国、顔認証技術大国の光と闇 13億人を特定 :日本経済新聞

なにが恐ろしいって、テクノロジーの恩恵が民主主義社会だけでなく、独裁国家にももたらされること。これはまさに"Person of Interest"の現実化だ。"Person of Interest"は、9.11をきっかけにテロ対策のために米国においてすべてデータがひとつの「マシン」によって分析されるようになったという仮定にもとづいて作られている。このドラマをひとつのシミュレーションとして見れば、民主主義の国ですら全国民の顔認証とライブカメラ、そしてAIが組み合わさるとどれだけ恐ろしいことになるかをよくわからせてくれる。

hpo.hatenablog.com

顔認証テクノロジーは確かに恐ろしい。日本のある巨大施設の話しを聞いた。ニュースで、テロ対策で顔認証ライブカメラを実験導入したと聞いていたので、その後どうですかと関係者に聞いた。すると、顔認証があまりに正確すぎて、テロに関わる容疑者だけでなくすべての個人がその施設のどこにいるのか特定できてしまうのだと。あまりにすごすぎて、プライバシーに関わりかねないので発表できないのだと。

開発独裁はさすがにかげりが見え始めているが、テクノロジーによる独裁がどのような結果になるか、想像するだけで恐ろしい。中国に民主革命が起こってほしいと心から祈る気持ちだ。

プラチナ社会

ご講演のタイトルを見て一瞬、映画の話かと思った。

というのは冗談で、まじめに小宮山宏先生のご講演に触れた。

プラチナ社会
世界は、21世紀の持続可能な社会モデルを模索しています。今、関心の高いのは地球環境問題です。しかし、もう10年もすると、世界中で高齢化が進行し、超高齢社会の関心が高まるでしょう。高齢化が、人類の末路となるのか、進化となるのか、これからの数十年でその結論が出るわけです。「地球環境問題を解決した元気な超高齢社会」が21世紀の世界が必要としている社会モデルです。 環境問題や高齢社会というと、どうしても後ろ向きのイメージがあります。まず、それを払拭することが必要です。そこで、これら2つの課題を高いレベルで解決した社会を「プラチナ社会」と命名することを提案したいと思います。高齢というと一般にはシルバーという言葉が使われます。燻し銀と言うのも悪くはありませんが、燻しは錆び(酸化)ですから、活力あるいうイメージが出ません。また、シルバーは貴金属としてはゴールドより下です。プラチナであれば、金よりも高価ですが、品格を感じさせ、輝きの失せない元気なイメージが出ると思います。20世紀の経済大国の日本を「黄金の国JAPAN」に対比し、21世紀の日本を「プラチナの国NIPPON」と呼ぶのはどうでしょうか。

プラチナ構想 | プラチナ社会研究会

小宮山先生のお話しは切れる、切れる。世の人々が難問だと思っている課題が、先生にかかるとごく簡単に解けそうになる。小宮山先生のプラチナ社会構想にこそ、ライフシフトの解答があることを感じた。高齢化社会においても人々の若々しさ、クリエイティビティ、生産性を維持、革新し続けるためには、テクノロジーが大事だと。いまの日本のテクノロジーを用いれば、まさにライフ・シフトがおこる世界において、プラチナ社会を到来させうると。

つまりは、日本はポテンシャルの塊なのだと。しかし、認可、法律が追いついて来ていない。社会体制としても、年寄りが牛耳っている。権限を与えると年寄りはいばるだけで仕事をしない。日本で使える力は女性、学生、覚醒したシニアだと。

まずは、ご著書を読んでみようと。

新ビジョン2050 地球温暖化、少子高齢化は克服できる

新ビジョン2050 地球温暖化、少子高齢化は克服できる

AIの前提となる統計学とは?

AI技術者が足りないらしい。

www.nikkei.com

すごく、不思議でしょうがないのがこれだけ、AI、AIと言われるのに統計学の基礎の基礎が社会で徹底されていないこと。過ぎたことだが、ブラック=ショールズのオプション価格の式が正規分布を前提としていることがおかしいと誰も思わなかったから、リーマンショックは起こったといっても過言でないだろう。

ふと気になったのだが、いまの大学では統計学はきちんと教えられているのだろうか?ブラックショルズが実際のオプション価格にあてはまらないとか、教育現場における偏差値の誤用とか、結構統計をめぐる混乱は多い。すべての統計値を出す場合にまず母集団の分布を検証することがあたりまえだと思うのだが。

統計学と分布 - HPO機密日誌

ブラック=ショールズが正規分布を仮定して金融市場を分析し始めるはるか前から、金融市場はべき分布だと知られていた。

金融市場ではマンデルブロが60年代から提唱していたように、明日どれだけ極端なことがおこるか分からない。

「コール!」 - HPO機密日誌

となると、AIの技術者達は統計学の常識は当然持ち合わせていらっしゃるのだろうか?AIが学習してくれるとしても、学習するデータがどのような母集団なのか、分布はどうなっているのか?

まがりなりにも統計学を学んだ者として、ビッグデータに違和感を覚え続けてきた。ランダムサンプリングができれば、母集団(ビッグデータ)すべての要素を処理することは必要ないと。母集団の正規分布が保証されていれば、標本抽出のみをランダムに行えばいいと。

Big Data + AI x Deep Learning = The Future of Google - HPO機密日誌

タレブの言う1001日目の七面鳥が存在する確率、リスクは計算されているのだろうか?

「アンチフラジャイル(抗脆弱性)は、ブラック・スワンへの対抗策です。まずはブラック・スワンについて話をしたいと思います。ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象、それがブラック・スワンです。ブラック・スワンの話をする時に七面鳥の話をよく例にします」と言って、七面鳥に起こった1,001日目の悲劇を例にブラック・スワンを説明。1,000日間大切に育てられた七面鳥は、それが未来永劫続くと信じて疑わずに1,001日目に絞められてしまいます。

特別講演:Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO

どうもAIのパワーに圧倒されていて、AI処理に潜むリスクの算定が疎かになっている気がしてならない。

hpo.hatenablog.com

「五箇条の誓文で解く日本史」を読み始める

本屋が楽しい。ついつい行くたびに本を買い込んでしまう。そんな中でついつい積読になってしまう本もあるのだが、本書は一気に読んでしまいそう。

「五箇条の御誓文」によって明治から平成の終わりの今までを読み解こうとする。

一,広ク会議ヲ興シ,万機公論ニ決スヘシ。 ①
一,上下心ヲ一ニシテ,盛ニ経綸ヲ行フヘシ。 ②
一,官武一途庶民ニ至ル迄,各其志ヲ遂ケ,人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス。 ③
一,旧来ノ陋習ヲ破リ,天地ノ公道ニ基クヘシ。 ④
一,知識ヲ世界ニ求メ,大ニ皇基ヲ振起スヘシ。 ⑤

五箇条の御誓文(ごかじょうのごせいもん)とは - コトバンク

*1

「五箇条の御誓文」が明治維新以来の日本の形をつくってきたという認識は広く存在する。本書にも書かれているが、「五箇条」は明治憲法にはるかに先んじて慶応4年(1868年)に発布されているし、戦後も日本国憲法に先んじて出されたいわゆる昭和天皇の「人間宣言」にも引かれている。日本の現代史に欠くべからざる言葉だ。私などはこれをもって日本国憲法とは英国憲法のように長い歴史の中ですでに形作られている不文憲法だと主張したいくらい。

hpo.hatenablog.com

本書によれば、五箇条と現代日本の原則は一致している。

① デモクラシー
② 経済発展・殖産興業
③ 自由主義、国の発展と個人の立身出世の一致
④ 天皇制、国体護持
⑤ 和魂洋才、グローバリズム

明治の人には相当に「五箇条」というのはインパクトがあったのだと思う。明治生まれの曽祖父が書いた私のうちの家訓も五箇条だった。先日、ある教育学者の文章を読んでいてその大部の著作の原理原則は五箇条だと書いてらしたことを再発見した。あ、そういえばうちの会社の社是も五箇条だ。

「五箇条のご誓文」に水戸学という将軍家を超える日本の正統性、尊皇攘夷の影響を著者は見ている。この五つの要素のどれが重視されたかで、日本の歴史が暗転していくのだと。特に、大正から昭和にかけての政治的な変遷には、この五箇条の御誓文に秘められた尊皇攘夷思想が影響しているのだと。

とにも書くにも、読了してから再度感想をまとめる。片山杜秀氏の本はどれも面白い。

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*1:丸数字は本ブログ

大航海時代が複式簿記を作った・・・、わけでなかった

複式簿記の説明を人にするのに、コロンブスの話しをよく使う。旧大陸(東側、右側、貸方、Credit)で資金を調達し、新大陸(西側、左側、借方、Debit)に船や在庫(資産)を持って行ったと。こう覚えると、貸借対照表の右と左が理解しやすい。なおかつ、複式簿記について書かれた世界で初めての書籍の出版が1492年のコロンブスの新大陸発見と同時期であったことも大きい。


13世紀初頭~14世紀末 イタリア
 複式簿記は、地中海貿易で繁栄したイタリアの商業都市で、商業と銀行業の記録・計算の道具として実務のうちから誕生・発達し、15世紀に体系的組織を確立しました。
複式簿記を解説した世界最古の出版物

ルカ・パチオリ(Luca Pacioli) 「スムマ」 1494年刊 (ヴェニス)Eb-1902(reprint ed.)

「スムマ」以後、ヴェネチア式簿記は、各国語に翻訳されヨーロッパ諸国に広まっていきます。

複式簿記の誕生と発展

ということで、私は長いこと西欧の大航海時代が実現できたのは、複式簿記というすぐれた商売の状況把握、情報公開の手法が開発されたことと軌を一にしているのだと理解し、人にも話してきた。最近、よく本屋に足を運ぶのだが、そんな中で手に取ったのが、この本。

本書によれば、15世紀末の「スンマ」出版に先立つこと300年、13世紀始めのイタリアにすでに両替商の帳簿がなされたいたと。そして、14世紀には複式簿記としての形はできていたのだと。本書は、かなり専門の会計史というか、書史というか、本そのものに対する興味が先行して書かれている。大航海時代から産業革命に至る国家事業から民間事業への大きな変遷の中で複式簿記がどのようにしてIR、出資者、関係者への情報開示としての機能、そして、経営者のツールとして進化してきたかをあまねく伝えている。

Amazonのこのコメントが秀逸。

構成としては共同経営者との利益の分配に始まり、出資者への報告、さらに大西洋を挟んだ取引が貸借対照表から損益計算書への重心の移動を促し、そしてキャッシュフローへとつながる一連の歴史が簡潔明瞭に語られます。そして終章は会計の本質である損益の説明が未来会計によって揺らぐ現在の状況への不審感で締めくくられます。中世の冒険企業が船を仕立てる度に出資者を募り、無事帰って船荷を売却して口座を締切清算する時代から、都市間交易で商会間の取引がそれぞれの借り方貸方に記載され、大陸間での取引では費用化が進み、鉄道などの大資本集積のため出資者保護の仕組みが作れられ、同時期に利益の源泉の追究がはじまり、とんでエンロンなどに見られた仮想の利益で会計制度の信頼を損なう姿を嘆いているとも言えます。

Amazon 会計学の誕生-複式簿記が変えた世界 (岩波新書)