HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「もうひとつの京都」の京都 2日目

連休を利用しての京都行き。二日目はアレックス・カー氏の著作を手がかりに、足の赴くままに。

お宿のお庭がとにもかくにもすばらしい。朝ご飯を食べながらも、庭を堪能できた。

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実はこのお庭は夜もすばらしかった。

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さて、カー氏の著作で触れられているお話しで今回特に興味を持っていたのが、お庭の「真行草」。本来の真行草は書道の言葉。

1 漢字の書体の、真書(楷書)・行書・草書のこと。
2 華道・茶道・庭園・俳諧・絵画などでの表現法の三体。「真」は正格、「草」はくずした風雅の体、「行」はその中間。

真行草(シンギョウソウ)とは - コトバンク

カー氏によれば、「真行草」とはいかに日本が中国から文化を取り入れ、日本流に消化していくかを示すという。いわば、中国が「真」、朝鮮が「行」、日本が「草」だと。床の間にかざる花さしでも、青銅器が「真」、磁器が「行」、楽焼きが「草」だと。建築でも、絵画でも、この「真行草」があてはまるという。カー氏は、大徳寺のお庭は「真」である本来のかっちりとした庭から、船の形、蓬莱山の仙人をとりこんだ「行」の庭に流れ、「草」である枯山水の海へ流れ込むと書いていらしたように記憶する。大徳寺は行けなかったが、南禅寺で同じようなお庭の「真行草」の流れを感じた。

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というか、改めて写真を見てみて愕然としている。真行草の庭は今回の京都のひとつの目玉であったはず。それだけ気合いを入れて写真を撮ってきたつもりなのに、全然これらのお庭の広がりや、つながりが取れていない。庭は体験なのだと実感する。

真行草の関連でふすま絵についてもカー氏は書いていた。どこにいってもお寺のふすま絵がすばらしかった。すでに京都のお寺は、伝統的なふすま絵を超えて、アートギャラリーとしての機能を果たしつつあるのだと想った。南禅寺でも、建仁寺でも、ふすま絵に感動した。

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ふすま絵を飛び出して、百畳敷きの天井画になったこの建仁寺の双龍図。これは現代の作家、小泉淳作さんの作品。

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ここのふすま絵はヴェトナムの風景だとおもう。鳥羽美花さんの作品だと。

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カー氏のいわんとする真行草の図案、絵画がここに脈々とある。

京都市美術館若冲の展覧会をやっていた。これはエントリーを改める。他にも、食事もすばらしかった。これも機会があれば触れたい。

「もうひとつの京都」の京都 1日目

レックス・カー氏の「もうひとつの京都」を新幹線の中で読了した、京都駅につく直前に。

もうひとつの京都

もうひとつの京都

例えば、「三門」。私は「山門」が正しいとばかり想っていた。確かに、カー氏のご指摘の通り、どの門も三つの出入り口から構成されている。例えば、東本願寺

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カー氏が絶賛していた渉成園の石垣も見れた。

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伏見稲荷ではなく、智積院の中の神社だが、連続する鳥居の列も見れた。

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豊国神社では洗練されたかやぶき屋根のあり様も見れた。

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ちょっと贅沢して、昔のお庭を利用したお宿にも泊まった。確かに、和風建築に南国風の建物の影響を感じる。オープンなポーチ、柱はりだけの構築物などは、南方から来た私達の先祖の建物へのオマージュがあるのかもしれない。

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いやいや、京都はいい。何度行っても新たな発見がある。

働くということ

東大卒の電通女子社員さんが自殺されたことが記事になっていた。亡くなられた方の魂がやすらかであらんことを祈りたい。

www.sankei.com

ここにコメントした。

なんで自殺を選んだんだろ。つーか、それぐらいの残業は割と若い頃普通だったけどな。

[B! 労働] 24歳東大卒女性社員が過労死 電通勤務「1日2時間しか寝れない」 クリスマスに投身自殺 労基署が認定(1/2ページ) - 産経ニュース

以下、前に書いた気がすごくするのだが、過去エントリーが見つからない。ダブってしまうかもしれないが、敢えて書く。

バブル世代、新人類と言われた私達の年代だが、仕事には前のめりだった。どれだけ難易度の高い仕事をしているか、どれだけ働いているかを競い合う風があった。そもそも、会社にいて仕事をしているから残業なのではない。残業の命令を上司から出されてその命令に従って、命令通りの仕事をして、始めて残業だ。上司から仕事を命じられるのを待っていては、通り一遍の仕事、いや、作業しかできない。自らを成長させ、やりがいを感じるよりよい仕事はできない。自ら求めて仕事をした。どれだけ時間をかけてでも、手応えの感じられる仕事がしたかった。お陰様で、当時の会社には社員寮があったのでドアツードアで30分くらいという恵まれた環境にあったが、「お前は○○(当時の職場の場所)単身赴任だな」と言われるくらいは会社にいて仕事をしていた。実際にはほぼ毎日寮には帰れていたし、月に数度はフルの休みもあった。

ああ、かなわないな、私など甘い方だと想ったのは、中央官庁に入った同級生から仕事ぶりを聞いたときだった。自分より二段階、三段階上の大学を出て、「超」がつくほど優秀なのに毎日深夜の二時、三時まで仕事をするのは当たり前。私の当時の会社は九時半はじまりだったが、彼は毎日八時には職場で仕事を始めていると言っていた。同様にして、医者のたまごになった連中もよく働いていた。これはいまもあまり変わらないとは想うのだが、最高に難しい入学試験に打ち勝ち、大学在学中も死ぬほど勉強をして国家試験に受かったのに、研修医の仕事に加え、様々な「バイト」と呼ばれる代診、後輩の指導、研究室の手伝いなど、文字通り奴隷のように働いていた。いやあ、自分などは凡庸な受験で、凡庸に大学生活をすごし、一生懸命働いているつもりでも、優秀なやつには働いている時間数すらかなわないと脱帽した。日本の国はより優秀なやつほどより働くシステムでできているのだとしみじみ実感した。

自殺された女子社員の残業時間数のどこまで上司の命令によるもので、どこまでが自主的な仕事であったかわからない。それでも、電通ほどの会社になれば、さまざまな形のバックアップがあったはずだ。インタビューもあれば、メンタルヘルスのチェックもあったろう。残業時間のチェック、ケアだってあったものだと私は想像する。電通の職場の雰囲気まではわからないが、自分の能力を超える仕事を命令された時点で、受命しない自由はあったと私は想う。というか、逃げられないメンタルの状況になられていたのかもしれない。本当に残念でならない。

私の世代の体験は現代には当てはらないのだろう。ただ、ブラック企業だの、デスマーチだのの単語に踊らされて、逆にごく一般的な職場環境多くの若者が職業訓練の貴重な機会を逃してしまうこともあるのではないかと心配にはなる。


■追記

id:PYU224 さんからブクマで質問をいただいた。あくまで当時の私の職場環境について聞かれているものだと解釈する。

1.セクハラ・パワハラの類はどれほどあったのか

今の基準で言えば、もう日常的にころがっていたかと想います。前述の通り、それらをどう受け入れ、どう受け流し、あるいはどう拒絶するかも、ビジネスパーソンの基本だとみんな想っていました。中高生の頃の教師から、あるいは先輩からの体罰が当たり前の世代なので、会社に入ったからセクハラ、パワハラが特に激しくなったという感じは全くしませんでした。

2.辞職者・自殺者はいたのかが気になりました。

私の前の職場での入社年次の少ない世代での辞職率はきわめて少なかったです。ある程度力量を得てからは、少なからぬ人数が自分の力を生かした転職等をしていきました。先日、元の会社を知る方から、私の前後の世代で転職、独立で社長になった人財がたくさんいるので有名だと聞きました。

ああ、ただ、突然死は近くで見ました。まだ20代でばりばりやっていた方が、朝出社されずどうしたのかと上司がその方の住まいにいったら冷たくなっていたと。もう20年以上前の話ですが。

年間7万人が突然死ということで言えば、それなりに人数がいた会社であったので仕事、残業、パワハラの類いが突然死を招いたとは想えません。

こういう話しをやりとりをしなければならないということは、確実に世代間の隔絶が私の下から始まっているのだと実感します。

「室町無頼」

垣根涼介の「室町無頼」530ページを一気読み。ここのところ、読書量の落ちている私としては驚異的。やはり、垣根氏の小説は読ませる!

室町無頼

室町無頼

垣根氏得意の悪漢小説というジャンルを室町時代に時代を移して、物語ってくれている。分厚いステーキのようにバイオレントに、いつものおいしい脂身のような垣根氏のエロティシズムは薄く留めて。歴史的に見ればとても重く陰惨な事件であるにもかかわらず、室町時代の終わりを早めた土一揆という男たちの生き方を爽快に描いた。世間の表舞台からぬけおちた「無頼」漢たちを詳細なリサーチを元に描いている。世の全てから見放されていても、餓死、慚死、獄死と紙一重の人生で、武士の一分を歴史に示した男たちの生き様のインパクトがとても強い。食い詰め抜いていた才蔵がここまで成長したのだと青春小説のような読後感すらある。

ちなみに、当時の職業名はどこかに解説を入れてくれるとより読みやすい。

以下、ネタバレ。自分のためのメモ。











本書は、以下の史実に基づいている。才蔵は実は作者の創作の人物。

寛正の土一揆(かんしょうのつちいっき)とは、日本の室町時代中期、寛正年間に起きた土一揆のこと。特に寛正の飢饉のピークであった寛正3年(1462年)の一揆を指す。
寛正の大飢饉による混乱の最中の寛正3年9月に京都において徳政令を求める土一揆が発生、浪人や在京大名の内者(被官)までが加わって、土倉などから財物を奪ったり、下京にて火を放つなどの行為に及んだ。10月になると今度は木津の馬借らが奈良で一揆を起こし、一旦は沈静化していた京都でも一揆が再発して京都七口を封鎖したため、室町幕府は諸大名に鎮圧を命じた。最終的には京都では諸大名の軍が、奈良では大和国の守護でもある興福寺の六方衆が一揆を鎮圧、参加者に対しては処刑も含めた過酷な報復が行われた。

寛正の土一揆 - Wikipedia

kotobank.jp

骨皮 道賢(ほねかわ どうけん、生年不詳 - 応仁2年3月21日(1468年4月13日))は、室町時代の傭兵、足軽大将。

骨皮道賢 - Wikipedia

この後、応仁の乱が発生し、戦国時代へと突入し、時代は中世から近世へと移っていく。まさに歴史の結節点を正面から捉えた歴史小説だ。日のあたることの少ない、室町時代の終わりに垣根涼介はよく切り込んだと想う。

相続税税務調査

こういうことも勉強しておくべきことがらだと。

税務署員の話は、雑談に見えても、一切の無駄がなく、申告漏れの財産があるのではないかという意図のもとで組み立てられています。

相続税の税務調査 | 弁護士たちばな総合法律事務所 大阪

仕事がら高年収の方々と話す機会が多いが、「法人税率下がっても、個人の税率変わらないから大変だよね。本当に税金を払うために働いている気がする」とおっしゃる方が多い。

税務調査の対象となりやすい申告書
(中略)

  • 申告書の遺産総額(純資産ではなく総資産です)が2億円以上

(中略)

  • 直近10年のうちに譲渡所得金額が5000万円以上ある

(中略)

  • 過去35年間で所得金額が2000万円以上であった年分が10回以上ある

その上、働けば働くほど、相続のハードルも厳しくなっていく。先日ある方から聞いたが、ベトナムでは一定預金があれば永住権がもらえ、その利子収入だけで十分王侯貴族の生活ができると。ベトナムって社会主義国だけど、日本は社会主義の国より社会主義自由主義の日本より社会主義ベトナムで生活した方が経済的にも、精神的にもはるかに安楽な人生が送れるという矛盾。

独裁国家連合、反グローバル、そして最後の人間

ウェルズの「タイムマシン」というSFは実に示唆に富んでいる。発達した科学により地上人と地下人に別れた未来世界。地上人は仕事もせず文字通り花畑で遊ぶしか能がない。戦う力も勇気もない。国、組織としてまとまることもできない。

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

最近、実に恐ろしげな世界情勢の記事に接する。中露が主導してトルコや、カザフスタン、そしてフィリピンと独裁国家間で協力関係が築かれつつあるという。当然、それらの国は反米で一致している。民主主義の潮流にも自分達の権力を浸食されるだけだと反発している。単純な力が「自由、平等、博愛」という思想にはるかに優るのだとデモンストレーションしているようだ。

米大統領選が十一月に迫る中で、中国とロシアが「反米同盟」を公然と主導し始めた。米国中心の国際秩序にことごとく反旗を翻し、自国に有利な国際環境を作り出す狙いで、中露周辺の独裁国家群を次々と自陣に抱き込・・・

中露主導「独裁国家連合」の増殖 | 【公式】三万人のための総合情報誌『選択』

www.afpbb.com

民主主義の旗手であり、守り手であったはずの米国もグローバル化を諦めているように見える。

グローバル化の機運が世界を覆っている。英国は欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決め、米国とEUとの環大西洋貿易投資協定(TTIP)の交渉は行き詰まり、米大統領候補は内向きを競う。2008年のリーマン・ショックを、貿易協定を武器に保護主義に背を向ける方法で乗り越えようとした雰囲気も今は昔。国をまたいだ貿易や投資を制限する保護主義は、世界経済の脅威だ。

反グローバル化と向き合うリスクマネー 編集委員 梶原誠 :日本経済新聞

これらの動きを俯瞰する時に、ウェルズの未来が来てしまったのではないかと想えてならない。

歴史の始点にいた奴隷は、本能的に臆病であったため、血なまぐさい戦いにみずからの生命を賭けることを辞退した。歴史の終点にいる最後の人間は、歴史が無目的な戦争に満ち、そのなかで人々がキリスト教徒とイスラム教徒の、プロテスタントカトリックの、あるいはドイツ人とフランス人のどちらかにつくのかをめぐって争ってきたことに気づいているため、ある大儀に生命を賭けるような愚かな振る舞いはしない。

米兵は「最後の人間」か?: HPO:個人的な意見 ココログ版

広い範囲で技術の理解が広がることにより生活レベルでの技術は定着するのであろうに、技術は高齢化を支持することによって世代交替のスピードを遅くし、生活レベルの向上により逆に「オメガマン」(最後の人間)となり技術の革新に理解をしない人間が増えて来る。

「もったいないからおもいやりへ」 - HPO機密日誌

なにができるという訳ではないが、多種多様な交通機関が世界の果てまでの安価で快適な移動手段を提供し、携帯電話とネットワークが世界の隅々まで連絡を取り合うことを可能にした現代において、退行としか想えない動きが連続してることに恐怖を感じる。

空き家対策私論

今朝、NHKを見てたら空き家の問題で地方行政がどれだけエネルギーを消耗しているかという報道をしていた。誰も住まなくなった空き家で、相続が放棄されたような場合、真の所有者を見つけること自体が簡単な話ではない。仕事がらもう十数年前になくなった方の名前のままの登記簿にはよく出くわす。番組では、一定の基準を満たせば所有権と利用権を切り離して、高齢者施設のサテライトに利用するケースなどが紹介されていた。昨年から空き家対策法が施行されている。自分の仕事にもかかわってくる重大な問題だ。

  • 措置1:解体の通告や強制対処が可能に
  • 措置2:固定資産税の特例対象からの除外
空き家対策特別措置法(空き家法)を分かりやすく解説

これに加えて、空き家対策法により土地建物の所有者を調査するために謄本だけでなく、固定資産税台帳、支払い状況の情報を利用できると番組では言っていた。ここは大事。

直感的には、固定資産税が払われていれば支払い義務者が処分に対しても権限を持てるようにすることがひとつの道を開く。なにを言っているかと想われるかもしれないが、全国に相続に相続が続き完全所有権をもっていないのに固定資産税が支払われているケースがたくさんある。この場合、該当の空き家と土地の真の所有者を同定するだけで莫大なコストと時間がかかる。ここを短縮するだけでも意味がある。真正の登記を確保することは手間暇かかっても、一定期間固定資産税を支払っていて、官報に所有権と利用権を切り離す旨の公告をだすなどして、異議がなければ建物の解体、もしくは再利用ができるようにすることは十分に可能だと想う。

それでも、固定資産税すら払われていない空き家への対応は更に難しくなる・・・、と番組で言っていたが、固定資産税を一定額以上滞納すれば行政側で差し押さえ、更には競売ができるのではないだろうか?解体が義務化されているので、解体費用も債権となる。もっとも、多くの空き家は競売にかけても処分の経費すら出てこないのかもしれない。

と、たまたま開いたDMにこんな情報が。税制上からも空き家対策が進められれば処分は進むかもしれない。