HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

働くということ

東大卒の電通女子社員さんが自殺されたことが記事になっていた。亡くなられた方の魂がやすらかであらんことを祈りたい。

www.sankei.com

ここにコメントした。

なんで自殺を選んだんだろ。つーか、それぐらいの残業は割と若い頃普通だったけどな。

[B! 労働] 24歳東大卒女性社員が過労死 電通勤務「1日2時間しか寝れない」 クリスマスに投身自殺 労基署が認定(1/2ページ) - 産経ニュース

以下、前に書いた気がすごくするのだが、過去エントリーが見つからない。ダブってしまうかもしれないが、敢えて書く。

バブル世代、新人類と言われた私達の年代だが、仕事には前のめりだった。どれだけ難易度の高い仕事をしているか、どれだけ働いているかを競い合う風があった。そもそも、会社にいて仕事をしているから残業なのではない。残業の命令を上司から出されてその命令に従って、命令通りの仕事をして、始めて残業だ。上司から仕事を命じられるのを待っていては、通り一遍の仕事、いや、作業しかできない。自らを成長させ、やりがいを感じるよりよい仕事はできない。自ら求めて仕事をした。どれだけ時間をかけてでも、手応えの感じられる仕事がしたかった。お陰様で、当時の会社には社員寮があったのでドアツードアで30分くらいという恵まれた環境にあったが、「お前は○○(当時の職場の場所)単身赴任だな」と言われるくらいは会社にいて仕事をしていた。実際にはほぼ毎日寮には帰れていたし、月に数度はフルの休みもあった。

ああ、かなわないな、私など甘い方だと想ったのは、中央官庁に入った同級生から仕事ぶりを聞いたときだった。自分より二段階、三段階上の大学を出て、「超」がつくほど優秀なのに毎日深夜の二時、三時まで仕事をするのは当たり前。私の当時の会社は九時半はじまりだったが、彼は毎日八時には職場で仕事を始めていると言っていた。同様にして、医者のたまごになった連中もよく働いていた。これはいまもあまり変わらないとは想うのだが、最高に難しい入学試験に打ち勝ち、大学在学中も死ぬほど勉強をして国家試験に受かったのに、研修医の仕事に加え、様々な「バイト」と呼ばれる代診、後輩の指導、研究室の手伝いなど、文字通り奴隷のように働いていた。いやあ、自分などは凡庸な受験で、凡庸に大学生活をすごし、一生懸命働いているつもりでも、優秀なやつには働いている時間数すらかなわないと脱帽した。日本の国はより優秀なやつほどより働くシステムでできているのだとしみじみ実感した。

自殺された女子社員の残業時間数のどこまで上司の命令によるもので、どこまでが自主的な仕事であったかわからない。それでも、電通ほどの会社になれば、さまざまな形のバックアップがあったはずだ。インタビューもあれば、メンタルヘルスのチェックもあったろう。残業時間のチェック、ケアだってあったものだと私は想像する。電通の職場の雰囲気まではわからないが、自分の能力を超える仕事を命令された時点で、受命しない自由はあったと私は想う。というか、逃げられないメンタルの状況になられていたのかもしれない。本当に残念でならない。

私の世代の体験は現代には当てはらないのだろう。ただ、ブラック企業だの、デスマーチだのの単語に踊らされて、逆にごく一般的な職場環境多くの若者が職業訓練の貴重な機会を逃してしまうこともあるのではないかと心配にはなる。


■追記

id:PYU224 さんからブクマで質問をいただいた。あくまで当時の私の職場環境について聞かれているものだと解釈する。

1.セクハラ・パワハラの類はどれほどあったのか

今の基準で言えば、もう日常的にころがっていたかと想います。前述の通り、それらをどう受け入れ、どう受け流し、あるいはどう拒絶するかも、ビジネスパーソンの基本だとみんな想っていました。中高生の頃の教師から、あるいは先輩からの体罰が当たり前の世代なので、会社に入ったからセクハラ、パワハラが特に激しくなったという感じは全くしませんでした。

2.辞職者・自殺者はいたのかが気になりました。

私の前の職場での入社年次の少ない世代での辞職率はきわめて少なかったです。ある程度力量を得てからは、少なからぬ人数が自分の力を生かした転職等をしていきました。先日、元の会社を知る方から、私の前後の世代で転職、独立で社長になった人財がたくさんいるので有名だと聞きました。

ああ、ただ、突然死は近くで見ました。まだ20代でばりばりやっていた方が、朝出社されずどうしたのかと上司がその方の住まいにいったら冷たくなっていたと。もう20年以上前の話ですが。

年間7万人が突然死ということで言えば、それなりに人数がいた会社であったので仕事、残業、パワハラの類いが突然死を招いたとは想えません。

こういう話しをやりとりをしなければならないということは、確実に世代間の隔絶が私の下から始まっているのだと実感します。